風日誌

プロセス/<遊>と<聖>/暁の円卓3


2004.09.21

 

・答えへのプロセスこそが重要
・<遊>と<聖>
・<遊>の自己相対化
・ラルフ・イーザウ『暁の円卓3』
 
森毅さんの本を引き続きいろいろ読んでいる。
20年ほどまえに出ている対談集
『世話噺数理巷談(さろんのわだいにすうがくはいかが)』(平凡社)もそのひとつ。
浅田彰が編集している。
 
これがでたころぼくはたしか宇和島にいた。
司馬遼太郎の愛した宇和島。
魚が蒲鉾が安くて美味しい宇和島。
あのころぼくはなにを考えていたのだろうと
またまた少し意識が過去に向かうが、
この本に書かれてあるのは、過去的なことではない。
森毅節が遺憾なく発揮された対談集。
 
ゲーテの自然学にも関係している岡田節人との対談もある。
これがまるで関西の漫才のように笑える対談になっている。
このなかでとくになるほどと思った森毅さんのアイデアがあった。
 
	(森)
	しかし、要約するという能力、これは、僕、教養で二十年近く学生を
	見ていると、年々減退してる。数学の演習で問題をやらせる時に、よ
	くできました、マル、ちゅうのはアホくさいし、黒板にかいたヤツに、
	要するにどういう事をしとるんやと言うたら、全然要約できない。ま
	ずどういう方針でするのん言うたら、xをコレコレとおきますと。イ
	yそれはわかってるけどさ、全体的な方向を言うてほしいんやと。い
	つか入試の問題をそういう格好でやろうかという話が出たことがある
	んです。問題に全部解答をつけちゃって、この解答を三行に要約せよ、
	この証明を三つの段落に分けよ、この解答の重要なポイントを記号で
	答えよ、とかね(笑)。
	(岡田)
	それやったらオモロイやろうなあ。いや、今の学生やったらあきまへ
	んやろな。
	(P89)
 
答えが目的ではなく、いかにプロセスそのものが重要かということ。
その意味では、テストとかいうのを全部そんな感じにしてみたら、
大混乱が起こっておもしろいだろうなあと思う。
これだと暗記ものとかはまるで役に立たないから、ぼくの世界かもしれない(^^)。
こういうのもおもしろいか。
「こんな答えがある。これが答えになる問いを三つ以上挙げよ」とか。
 
「遊び」をテーマに研究している井上俊との対談でも
「遊」と「聖」との違いについてなるほどという話があった。
 
	(森)
	しかし、<聖>と<遊>との違い、というふうにはっきりいえるか
	どうかは別として、僕の感じでは、自己批評ってのかな、「こんな
	アホなことをして」という意識、それが<遊>の特性だと。その行
	為自体の価値を否定して、バカバカしいと思いながらやっとる、そ
	れが遊びだという感じでね。
	(井上)
	僕も、まあ、遊びには意味があるとか何とか、あんまりいいたくは
	ないんだけど、意味があるとしたら、今いわれたような自己相対化
	といったものだと思いますね。それは<聖>からは出てこない。
	<聖>だと、目的合理的ではないけども一所懸命に身を捧げる。そ
	れは価値合理性の領域でしょう。<遊>のほうは、そりゃ面白くて
	一所懸命やるんだけども、やったって何にもならないということが
	どこかにいつもあって、それが遊びの世界に一種の二重性を与えて
	る。<聖>の世界ってのは一元的でしょ。<遊>のほうは……。
	(森)
	ときには、何でこんなアホなことせんならんのやろうと思いながら、
	何となく溺れたようになって、やる。
	(井上)
	うん、そのへんが遊びのいちばんいいとこですね。
	(P120)
 
いい話だと思う。
この「神秘学遊戯団」も、やはり<聖>じゃなくて<遊>なわけです。
やはり、「こんなアホなことをして」が出発点というか
ずっとそれがいつも自己批評的にある世界。
 
ぼくがなんだかクソまじめな人がどうしても苦手なのは、
そういう人は<遊>じゃなくて<聖>が好きだからなんだろうなという気がする。
だからシャレのわかる禅のようなもの以外の
宗教的なのがダメだというのもそういうことに他ならない。
 
ところで、ラルフ・イーザウの『暁の円卓3』が出た。
「暗黒の歳月」の前編ということで、後編の4巻目も10月にはでるらしい。
1900年から2000年の歴史とともに描かれるこの物語のなかで、
この巻は1929年後半から1930年前半である。
シュタイナーが死んでしばらくしたあたりの時代。
この時代は、飛行船から飛行機へと乗り物が変わってくる時代らしい。
だから、シュタイナーも講演には列車ででかけていた。
いまだったら、シュタイナーでも飛行機を使うだろうし、
ラジオのマイクに毒づいたシュタイナーも、
テレビとかインターネットとか否定はしないだろうなと思う。
そのまま手放しで肯定するわけはないけれど。
 
 

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