*** 2010年3月30日 天空の峰とアンズの里 ***

1.標高5000m級の
無名峰1
2.標高5000m級の
無名峰2
3.天空の峰ラカポシ 4.名峰ディラン
の氷壁1
5.名峰ディラン
の氷壁2
6.垣間見えた
ディラン山頂
7.アルチット村
の路地裏1
8.アルチット村
の路地裏2
9.アルチット村
の路地裏3
10.アルチット村
の集会場
11.アルチット村
の少年1
12.アルチット村
の少女
13.アルチット村
の少女達
14.アルチット村
の少年達
15.アンズの花1
(アルチット村)
16.アンズの花2
(アルチット村)
17.アンズの花3
(アルチット村)
18.アンズの花4
(アルチット村)
19.アンズの花5
(アルチット村)
20.アンズの花6
(アルチット村)
21.リンゴの花1
(アルチット村)
22.リンゴの花2
(アルチット村)
23.アルチット村
の兵士
24.アルチット村
の美女
25.アルチット村
の子供達
26.アルチット城1 27.アルチット城2 28.日本の美女
U&Sさん
29.フンザ川に
架かる橋
30.ナガール村へ
(フンザ川)
31.ゴールデン・
ピーク1
(ナガール村)
32.ゴールデン・
ピーク2
(ナガール村)
33.ナガール村の少女 34.アンズの花7
(ナガール村)
35.アンズの花8
(ナガール村)
36.アンズの花9
(ナガール村)
37.アンズの花10
(ナガール村)
38.ゴールデン・
ピーク3
(ナガール村)
39.ゴールデン・
ピーク4
(ナガール村)
40.ホーパル氷河1 41.ホーパル氷河2 42.ホーパル氷河3
43.ホーパル氷河4 44.ホーパル氷河5 45.ホーパル氷河6 46.ホーパル氷河湖 47.ディラン
の氷壁1
48.ディラン
の氷壁2
49.カラコルムの
谷間の村1
50.カラコルムの
谷間の村2
51.河岸段丘上
の木々
52.大断層&
褶曲地帯1
53.大断層&
褶曲地帯2
54.夕日に染まる
カラコルムの
無名峰1
55.夕日に染まる
カラコルムの
無名峰2
56.夕日に染まる
カラコルムの
無名峰3
57.夕日に染まる
カラコルムの
無名峰4
58.夕日に染まる
カラコルムの
無名峰5
59.夕日に染まる
カラコルムの
無名峰6
60.ギルギット
・セレナ
での晩餐

 3月30日(火)、本日は予定より1時間も早い4時半のモーニングコール、6時出発である。朝食時、添乗員N氏より、また長々と北部フンザに行けない理由説明が始まる。その中に、謝罪する様子は見られず、正に自己弁護に徹している。客にとって、出来ない理由を何度も聞かされては、たまったものではない。また、昨晩も、本日のスケジュールを説明する中で、午後ホテルに戻ってくるにも拘わらず、6:00の荷物出しを要求する始末である。要するに、客の都合より自分の利便性優先である。流石に、数人の客からクレームがつく。その場では、Hさんに相談するとお茶お濁し、その後しぶしぶ出発前の荷物出しをOKする。今風に言えば、"KY"或いは"ジコチュー"の典型である。鬱陶しい話はこれまでにして、本日の出来事について記す。
 愈々、フンザを離れる日である。ただ、この二日間、カラコルムの秀峰"ラカポシ(標高7788m)"は姿を見せず、このままでは何とも立ち去りがたい。そんなことを考えつつ、ホテルのベランダから、南西の空を眺めていると、突然雲が切れ真白な雪山が現れる。すわ"ラカポシ"かと、傍にいたHさんに伺うと、唯の5000m級の無名峰とか。そのうち、雲の切れ間から、ほんの一瞬白銀の峰が姿を現す。先程の無名峰より遥かに高く、まるで天空に浮かんでいるようである。今度こそ"ラカポシ"かと、H氏に再確認すると、それは"ラカポシ"の稜線で、頂はずっと左手の雲の中とか。まあそれでも、このような崇高な写真を物にでき、感無量である。
 次に、4台の4駆車に分乗して、周辺の村々を探訪する。まず近くのアルチット村を散策する。この村の中心部は、迷路のようになっており、嘗てこの地が軍事要塞として、フンザ川を挟んで、ナガール村と対峙していたことを伺わせる。村の集会場で写真を撮っていると、何処からともなく、子供達が集まってくる。カメラを向けると、緊張する様子もなく、ポーズを取ってくれる。目のパッチリした実に可愛い子供達である。曲がりくねった路地を抜けると、"アンズの園"に到着する。落花が一面を覆い、絵も言えぬ雰囲気を醸し出している。村の外に出ると、見張台とも言うべきアルチット城が望める。現在は無用の長物となったためか、荒廃が著しく、観光客には解放されていない。帰り際ふと見ると、一人の女の子が、友人と談笑しつつ、側溝の水を手で掬って飲んでいる。日本人の感覚からすると、不潔に見えるかも知れないが、氷河から流れ落ちる水は、ミネラル分豊かで、衛生上も問題ないのであろうか。
 その後、フンザ川を渡り、葛篭織れの道をナガール村へと向かう。アルチット村より標高があるせいか、丁度今がアンズの見頃である。村の外れからは、ゴールデンピーク(標高7027m)の雄姿が望める。雪をも寄せ付けない垂直の壁が、天空へと伸びている。更にホーパル村に向かっていると、左手に雄大なヒスパー氷河が白銀に輝いている。だが、残念ながら車は右に折れ、ホーパル氷河を目指す。ビューポイントからは、表面が少し黒ずんだ氷河が望める。始めて見る氷河であるが、中々迫力満点である。出来れは、近くに寄って、神秘的なグレーシャーブルーを、写真に収めたいところだが、残念ながら下るルートが見当たらない。氷河の奥には、巨大な氷壁がそそり立っている。山頂は望めないが、北杜夫の小説"白きたおやかな峰"の舞台となった"ディラン(標高7257m)"であろう。だが、"たおやか"どころが、正に削ぎ落としたような荒々しい山容である。ヨセミテのハーフドーム同様、氷河時代に大陸氷河が削った痕跡であろうか。いずれにしても、山自体は、方角によって様々な姿を見せるものである。駐車場に戻ってくると、外国人と思しき親子連れが、話し込んでいる。発音からすると、英国人であろうか。話しかけると、英国出身だが、イスラマバード住まいとか。中国の影響力が益々強くなる中、嘗ての宗主国からの移住者も、未だにいるようである。
 ここから、一度ホテルに戻り、KKHを一路ギルギットに向かう。途中、崖下の河岸段丘上に、へばり付くような村を通過する。絶壁の高さは、100m以上もあろうか。何とも凄まじい光景である。次に、2時間半程走った所で、トイレ休憩する。ふと対岸の断崖を眺めると、露となった地層が、略垂直方向に走っている。また一部の地層は、途中で断絶したり褶曲したり、夫々が複雑に絡み合っている。正に、地殻変動の激しさを物語る光景である。一方、崖の中央部には、嘗てのシルクロード(現地英語名:Silk Route)と思しき道が確認できる。だが、その先は崩落しており、玄奘三蔵の時代のカラコルム越えは、正に生と死が隣りあわせであったことが実感できる。茜色に染まるカラコルムを眺めつつ、ギルギットへと急ぐ。

戻る