*** 2009年7月20日 尻別岳 ***

1.洞爺湖1
(壮瞥町付近)
2.洞爺湖2
(壮瞥町付近)
3.洞爺湖中島1
(壮瞥町付近)
4.洞爺湖中島2
(壮瞥町付近)
5.ニセコ方面
の山並
(壮瞥町付近)
6.有珠山
(壮瞥町付近)
7.馬鈴薯畑奥
の羊蹄山1
8.馬鈴薯畑奥
の羊蹄山2
9.馬鈴薯の花 10.尻別岳登山口 11.ダケカンバの林 12.ダケカンバと
エゾニュー
13.留寿都リゾート 14.橙色の
コウリンタンポポ1
15.橙色の
コウリンタンポポ2
16.黄色の
ミヤマコウゾリナ
17.アレチ
マツヨイグサ
18.チシマフウロ
の紅葉
19.チシマフウロ1 20.チシマフウロ2 21.尻別岳山頂 22.羊蹄山1
(尻別岳コル)
23.羊蹄山2
(尻別岳コル)
24.羊蹄山3
(尻別岳コル)
25.ウツボグサ1 26.ウツボグサ2 27.コハマギクか? 28.徳舜瞥 29.オロフレ山 30.シロバナニガナ
31.エゾカンゾウ1 32.エゾカンゾウ2 33.ノウゴウイチゴ1 34.ノウゴウイチゴ2 35.ノウゴウイチゴ3 36.シナノオトギリ1
37.シナノオトギリ2 38.エゾカワラ
ナデシコ1
39.エゾカワラ
ナデシコ2
40.エゾシオガマ1 41.エゾシオガマ2 42.チシマアザミ
43.最後の急登1 44.最後の急登2 45.最後の急登3 46.エゾカンゾウ3 47.エゾカンゾウ4 48.エゾカンゾウ5
49.ミヤマ
カラスアゲハ の雄
50.コヒオドシと
クガイソウ1
51.コヒオドシと
クガイソウ2
52.オオバギボウシ1 53.オオバギボウシ2 54.羊蹄山
(尻別岳山頂)
55.羊蹄山山頂
(尻別岳山頂)
56.ニセコアンヌプリ
(尻別岳山頂)
57.無意根山
(尻別岳山頂)
58.昆布岳
(尻別岳山頂)
59.昭和新山
(尻別岳山頂)
60.駒ヶ岳遠望
(尻別岳山頂)

 7月20日(月)、三連休の最終日、やっと好天に恵まれたので、尻別岳(標高1107.4m)に向かう。尻別岳は、羊蹄山の東南僅か10数キロに位置し、前者が"前方羊蹄山"に対し、後者は"後方羊蹄山"と呼ばれ、謂わば親子関係にある。標高からすれば、羊蹄山に比べるべくもないが、その北面には屏風のような壁が立ちふさがり、中々登山意欲を駆り立てる山容である。ガイドブックによれば、南側の留寿都コースは初級者向けとあり、これを信用して初挑戦することにする。
 既に11:30であるが、少し遠回りをして、オロフレ側から尻別岳を目指す。オロフレトンネルを抜け、葛篭織れの坂道を下って行くと、急に視界が開け、紺碧の洞爺湖が姿を現す。ここで暫し道草して、周辺の風景を撮影したのち、尻別岳山麓の留寿都村に向かう。約50分でこの村の手前まで来ると、馬鈴薯畑の奥に、尻別岳と羊蹄山が双子のように鎮座して見える。更に、留寿都村手前の信号を左折し、尻別岳を巻くように257号線を北上すると、尻別岳入口の標識が現れる。うっかりすると見落としそうなくらい、小さな看板である。ここで、水溜りを渡渉して、砂利道を5分程走ると、登山口に行き着く。先程とは異なり、此方には中々立派な看板が立っている。ただ、既に14:00を回っており、早々に身支度をして登山道に分け入る。花々を撮影しつつ、ダケカンバの林の中を20分程登ると、見晴らしの良い尾根道に出る。眼下には、ルスツリゾートが広がり、遥か遠くには、徳舜瞥とオロフレが優美な姿を露わにしている。更に尾根道を20分程進むと、尻別岳が眼前に迫る。北面同様、まるで屏風のような壁が、そそり立っている。左脇には、斜度30度程度もありそうな尾根道が、山頂へと続いている。ここで、自分の体力を考え、引き返そうかとも思ったが、山頂直下の斜面に黄色の花々が確認できる。多分、"エゾカンゾウ"であろうが、兎に角この花に出会うためにも、気合を入れ直して登ることにする。所が、登り始めた途端、循環器系に変調を来たす。そこで、撮影の合間に休憩を取りつつ、スローペースで登る。中間点までくると、ブッシュの切れ間から、ガレ場が望める。何か珍しい被写体はないかと、用心して渡ると、小石だらけの急斜面に、赤い実が目に留まる。近づくと、何と小型のイチゴである。WEB上で調べたところでは、果実の形からして、"ノウゴウイチゴ"の模様である。当然、人間様が食べても問題ないが、この山の女神に敬意を表して、手をつけないことにする。その奥には、金色の付け睫毛のような"シナノオトギリ"が開花している。日当たりが良いせいか、この辺りには、登山道脇とは別種の植物が繁茂している。
 それにしても、この登りは何ともきつい。しかも、前日まで雨天であったせいで、大変滑り易くなっている。改めて、いい加減なガイドブックに、怒がこみ上げてくる。ただ、余計なことを考えていたせいか、スリップして1m程ずり落ちる。怒りは禁物、命の次に大切なデジカメやレンズを壊しては、元も子もない。後日、No.45の写真から斜度を逆算してみると、30度を優に超えている。これが本当に初心者コースであろうか! 急坂の2/3辺りまで来て、ふと足元に目をやると、貝型のマカロニのような白花が目に留まる。何とも奇妙な格好をしているが、どうやら"エゾシオガマ"のようである。結局、1時間10分もかかって、この急坂を登りきる。尾根直下の南斜面には、"エゾカンゾウ"が咲き乱れ、叢の緑と見事なコントラストを見せている。
 16:18、何とか山頂に辿り着く。ここで、雄大なお釜が望めるかとも思ったが、山頂部は平坦で、笹薮に覆われている。考えてみれば当たり前で、火山活動は4万年も前に終了している。次に望遠レンズに交換し、周辺の山々を狙う。北東方向には、特異な山容の無意根山(標高1460.5m)が望める。Yahoo百科事典によると、この山は、分類上は楯状火山(アスピーテ型)に属し、ハワイ・マウナケア山同様、流動性の高い溶岩によって、形成されたとある。一方、フリー百科事典によると、嘗てアスピーテ型と言われた火山も、実はコニーデ型が侵食されたもので、日本にはアスピーテ型は皆無であるとしている。どちらが正解か、敢えて講釈しないが、単純に言って、道中で無意根山のみがアスピーテ型というのも、変な話である。南方に目を転じると、家型の"北海道駒ヶ岳"が、噴火湾越しに霞んで見える。一度はトライしてみたい山ではあるが、火山活動中のため、現在単独登山は禁止されている。以上のように、道内の名峰は殆どが火山であり、溶岩の質/量によって、様々な山容が形成されたと考えられる。ここから、元来た道を下る。
 先程の急坂手前まで来ると、見慣れない蝶が"クガイソウ"に留まっている。早速レンズを向けるが、そこかしこと動き回り、中々じっとしていない。改めて、数枚の写真をチェックしてみたが、羽根は静止しているのに、胴体は殆どぶれて写っている。どうやら身体を、高速で震動させているようである。何とも奇妙な蝶であるが、後日Aさんにメールで名前を確認すると、"コヒオドシ"とのことである。そうこうしていると、今度は大型の蝶が舞い降りてきて、目の前の"エゾカンゾウ"にさっと潜り込む。Aさんによれば、此方は"ミヤマカラスアゲハの雄"とのことである。私には、名前はおろか雌雄の判別も出来ないが、野山の動植物に滅法強いAさんの仰ることだから、間違いなかろう。いずれにしても、このHPはAさんと私で成り立っており、どちらかが欠けても存続不可能となる。ここで、カメラとレンズをザックに押し込み、恐怖の急坂を用心して下る。
 今回、7月三連休の最終日、尻別岳に初挑戦した。予想に反し、中々厳しい登りであったが、珍しい高山植物や蝶にも出会え、有意義な休日となった。これで、一応道南の名峰は踏破したので、これからは低山の無名峰に挑戦したい。

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