*** 2002年7月13日 Mt.Loser(オーストリア) ***

1.Dr.Krisper
別荘
2.別荘の裏山 3.紫の花1 4.ローザ山
稜線
5.紫の花2 6.bell flower1
(ナデシコ科)
7.キキョウ類1
8.キキョウ類2 9.ヤナギラン 10.ルピナス類1 11.ルピナス類2 12.ローザ山
山頂1
13.ナデシコ類 14.ローザ山
山頂2
15.ローザ山
山頂3
16.blue flower1
(ムラサキ科)
17.キンポウゲ類 18.雪渓上の
Dr.Krisper
19.Dr.Krisper2 20.悪魔の爪
(キク科
ヤグルマギク類)
21.マツムシソウ
22.ローザ山
山頂
23.bell flower
(キキョウ科)
24.purple flower
(シソ科
ウツボグサ類)
25.purple flower
(リンドウ科)
26.red lily 27.blue flower2 28.alpenrose1
29.トリカブト類 30.Loser山頂
キレット2
31.Loser山頂
キレット3
32.Loser山頂
断崖
33.Loser山頂
にて
34.Loser山
東部の断崖1
35.alpenrose2 36.カルスト
台地
37.Dr.Krisper
親子


 海外出張時の合間の休日(7月13日(土))に、オーストリアBad Aussee近郊の名峰Loser(1838m)に挑戦する。
今回はDr.G.Krisperの御好意で、金曜の深夜から月曜の早朝まで彼の別荘に3泊し、彼と共に標高約900mの登山口
から山頂を目指す。尚本別荘は約300年前の民家を改造した物であるが、内部は電化されおり快適な生活を送れる
様になっている。私は何室もある部屋の中から、"帝王の部屋"に宿泊させて頂く。
 別荘を9時半頃出発し、Altaussee湖を経て国定公園内の登山口まで車で向かう。ここに駐車し、樅の樹林帯を
ゆっくりとしたペースで登って行く。途中で中学生の団体に出会うが、彼らは"グーテンターグ"と挨拶を交わす。
一般的にオーストリア及びドイツ南部では"グルシュコット"と挨拶をするので、ドイツ中北部より来た事が判かる。
 Dr.Krisperは御歳65歳間近であるが、コンスタントなスピードで着実に高度を稼いでいく。休憩も取らずに、
2時間以上も登れるとは大した体力の持主である。樹林帯の切れた辺りから、Loser山から北西に続く長い稜線が
望める。この山腹や稜線が白くなっているが、これは雪ではなく露出した石灰岩である。この地域は何億年か前は
海底に在り、それが隆起して現在標高2000m程度の石灰岩質の山塊Death Mountainを構成している。従って、鍾乳洞
や、岩塩を採取する鉱山も近くに見られる。
 所で私が現在単身赴任している四国もかつて海底に有り、龍河洞なる鍾乳洞や、標高1000〜1500m程度の四国カル
ストが見られる事から、スケールや植生の違いこそあれ地形が似通っている。尚Bad Aussee西方約50kmにある映画
"サウンドオブミュージック"のロケ地となった"Salzkammergut(塩の交易場と言う意味)"や、クラシックの国際音楽
祭で有名な更に西方の古都"Salzburg(塩の村)"の"Salz"は、英語の"Salt"と同意語である。
 樹林帯を抜け、ケーブルの中間駅に向かうと、道の両脇に色鮮やかなルピナスやヤナギランが咲き乱れている。
風の止む瞬間を待って長々とカメラを構えている間に、Dr.Krisperはしきりに野苺を採取されている。一緒に色鮮
やかな苺を啄ばむが、日本の物とは異なり甘味が強く美味である。咽も渇いてきたので、湧水を飲む。手が切れる
様に冷たく美味である。ただこの時飲んだ水(カルシウム分の多い超硬水)が、その後ハンガリー,トルコを経て
帰国するまで、私の体に重大な変調をもたらす事となる。
 更に進むと、ローザ山山頂が眼前に迫る。沢には崩落防止用の大堰が設けられている。雪渓を過ぎ、花が咲き乱
れる小道をゆっくりしたペースで登っていると、Dr.Krisperから毒蛇に気を付ける様にと仰る。長さは50cm程度と
小形であるが、猛毒の持主で人間様が死ぬ場合も有るとの事である。ただ真偽の程は確かではないが、ステッキで
音を立てながら進めば、人間様に敬意を表して道を譲ってくれるそうである。
 山頂に近づくにつれ、ガスがかかり周りが全く見えなくなる。遥か遠くから微かな鈴の音が聞こえるが、何が発
しているか判からない。標高1700mを超える辺りから、有名なアルペンローズの群落が見られるようになる。ただ
名前の如くローズとは似ても似付かず、アルペンアザレアとでも言うべき姿をしている。またトリカブトも多く見
られるが、日本の物よりの花の色が濃く且つ厚ぼったく見える。オーストリアでも古来、毒矢に用いられたとの事
である。
 山頂手前でガスが晴れ、雄大な山頂が間近に迫る。西側は浸食されて深い溝になっており近づく事が出来ない。
また南側は約300m、北側は700m程の急峻な崖となっており、撮影の為に崖の直前まで近づくと、足がむずかゆく
なるような独特の恐怖感に駆られる。山頂付近の草地には羊が放牧されており、先程の鈴の音が"sheep bell"から
発せられた事が判かる。また"sheepshit"があちこちに見られ、この落し物に注意して進む。 
 山頂のモニュメントの周辺には、女性登山隊が既に絶好の場所をキープしている。Dr.Krisperが宴たけなわの
ところ無理を言って、我々の記念撮影をお願いする。そのお返しに、今度は私が女性登山隊を撮影する。暫くし
て、この登山隊からお手製のケーキを頂戴する。内外を問わず、山を愛する人に悪人がいない事を実感する。
ここから下りにかかる。Altaussee湖を挟んだ東側には、高さ800mにも及ぶ急峻な崖が眼前に迫る。御長男で医者
のDr.P.Krisperはこの崖を一日で征服されたそうである。ここから足場の悪いカルスト台地を更に下る。途中で
一寸したハプニングもあったが、何とか駐車場迄たどり着く。
 今回は出張時の合間にDr.Krisperと共に巨大な石灰岩の団塊Loser山に挑戦した。Dr.Krisperには、最後まで疲
れを見せない健脚ぶりを披露して頂き、登山時に自分のペースを守る大切さを改めて彼から学ぶ事ができた。
また正直な所、昨年I自動車を離れて以降、彼に会う機会は皆無と思っていたが、4年ぶりに再会できまた別荘にまで
招待して頂いた御厚情は終生忘れがたい。ここに改めて謝意を表すと共に、引退された暁は是非日本に御招待したい
と思っている。

総歩数:約20,000歩
登りの厳しさ:★★

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