81〜90


風遊戯81●永遠の旅人よ

 

永遠の旅人よ

自由を詩う吟遊詩人よ

道とは未知であるという喜びにあふれ

一歩一歩と踏みしめる旅路を

今宵は高らかに祝っておくれ

 

人生は宇宙に織り込まれた煌めく刺繍糸

それともひとときの午睡のうちに

神が一息で事をなす宇宙の一大絵巻

鏡に映る天界と冥界の仕掛けのなかで

めくるめく旅路を歩む永遠の道

 

自由が重荷になるときもあるだろう

だがその荷物だけはなくしてはならない

それは永遠の道しるべ

天界を誇らしく歩む者にも

冥界に踏み迷う者にも

その一本の手綱こそがアリアドネの糸

 

かつては宇宙の叡智が私を導いていた

いや私を操っていた

けれどその操り糸を

今度は私が操ってみよというのだ

私は宇宙の叡智から遠ざかることで

私のなかでその種を育てなければならない

ああそれを自由といい

またそれを愛ともいう

 

永遠の旅人よ

自由を詩う吟遊詩人よ

愛を詩う吟遊詩人よ

迷いこそ道

その道を歩んでいく者に幸いあれかし

 

 


風遊戯82●純粋という罠

 

純粋を追い求める者は災いである

あなたは不純によって汚されるであろう

純粋とは汚されるものではない

それは穢れをも抱き抱えるものである

 

純粋は罠である

純粋は未来を葬り去り

過去のなかに永遠を求める

その罠こそが魔境である

 

善を追い求める者は災いである

あなたは悪によって悩みの淵に赴くであろう

善は悪によって貶められるものではない

それは悪をも抱き抱えるものである

 

善は罠である

善は未来を葬り去り

過去の中にエデンの園を見いだす

その安逸さこそが堕落である

 


風遊戯83●愛と自由の螺旋

 

愛に飢える者よ

人は愛ゆえに生まれる

愛そのものとして生まれる

みずからが愛そのものだというのに

なにを飢えることがあろうか

 

死を恐れる者よ

人は自由ゆえに死んでゆく

自由そのものとして死んでゆく

みずからが自由になろうというのに

なにを恐れることがあろうか

 

生まれ生まれ生まれて

死に死に死んでゆく

その限りない循環は

愛と自由の螺旋階段

それを喜ばずにいられようか

 

喜びとともに生まれ

喜びとともに死んでゆく

ああその宇宙の歓喜の前で

天使たちが喝采しているのが聞こえないか

星たちが壮大なシンフォニーで祝っているのが聞こえないか

 

 


風遊戯84●恋心の思い出に

 

なぜ心ひかれるのか

わからぬままに心乱れ

伝えることの恐さににまた乱れ

秘めたるものの重荷に拉がれゆく

 

春は春

夏は夏

秋は秋とて

冬はまた冬

 

焦がれ焦がし

浮きまた沈み

苛立ち駆け回り

時を追い追われ

今という局所の果てしなさ

 

なぜと問いその問いに惑い

答えぬまま答えられぬままに

心の秘密を気取られぬように

また伝えたく焦り

宙づりのままに思い果てなし

 

 


風遊戯85●聖なる捧げもの

 

生が悲しいと人はいうか

悲しみを聖なる捧げものとせよ

死が悲しいと人はいうか

悲しみを聖なる捧げものとせよ

 

生は死のうちにあり

死は生のうちにあり

そのめぐりを貫く光がある

光を衣とし王冠とせよ

 

花は咲き花は散り

わが生と死の器を飾り

星はまたたき月は満ち欠け

わが生と死の掌を照らす

 

時は旅人でありわれもまた

その彼方をめざす者であるならば

生まれ死に生まれ死に

さまざまな器に盛られた宝物を受け

またそれを惜しげもなく捧げ尽くし

花と星の祝福のうちにあれ

 

生が悲しいと人はいうか

悲しみを聖なる捧げものとせよ

死が悲しいと人はいうか

悲しみを聖なる捧げものとせよ

 

 


風遊戯86●復活祭幻想

 

朽ちぬ身体もて甦れ

時とともにありつつ

時を超えてあれ

 

星を抱き

はるか天空に語らう者よ

我もまた朽ちぬ身体もて

永遠を語る者とならん

 

されど我はまた

一粒の砂の内にある者とならん

巌が砂となりその砂が巌となり

それが砂の数だけ繰り返されるほどの

時を待ちながら

かつその時を超えて行かん

 

人であることの悲しみと

人であることの喜びを

ともに我が器に血として注ぎ

それを薔薇に咲かしめん

 

朽ちぬ身体もて甦れ

時とともにありつつ

時を超えてあれ

朽ちぬ身体を器とし

永遠の薔薇を注ぎたまえ

 


 

風遊戯87●花に祈れば

 

花に祈れば心に花が咲き

星に祈れば心に星が光り

あなたを愛すればあなたが私の中にいる

 

心を鎮めれば花が私になり

心の深みに臨めば宇宙が私になり

私が愛に生きればあなたが私になる

 

かかえきれないほどの悲しみが襲うなら

その悲しみを星のゆりかごにのせてごらん

じぶんをなんてちっぽけなやつだと感じるなら

大宇宙を心のなかにおさめてごらん

 

花散れば花とともに散り

星流れるならば星とともに流れ

愛あるならば愛とともにあれ

 


風遊戯88●往還

 

あの懐かしい時代へ帰ることができれば……

そう耳元で声がする

甘いメロディー、芳しい薫り、

そしてどこまでも透き通った想いが

はるかに駆けていく

そんな原風景への回帰

 

けれどもそこでまた声がする

失うことによって得るものがあるのだよ

失うことは、甘くも芳しくも

また透き通ってもいないけれど

あえて歩む道にこそ

おまえの求める宝が隠されている

 

帰ることは帰ることにはならず

進むことこそが帰ることである

そんな道を歩む者に祝福を

 

汚れないことが清めることにはならず

あえて汚れに身を置くことこそが清めることである

そんな道を歩む者に大いなる賛歌を

 


風遊戯89●新たなるイシスのために

 

イシスよ

おまえは今や屍と化し

宇宙の墓場に追放されてしまった

 

イシスを求めよ

かつてのイシスではなく

新たなるイシスを甦らせるのだ

 

欠けているのはキリストではない

欠けているのはそれを見出すことだ

欠けているのはキリストのソフィア

新たなるオシリス、内なるキリストの力で

新たなるイシスへの道を歩め

 

アーリマン=テュフォンがオシリスを裁断したように

ルシファーがイシスを殺害した

イシスは今や墓場で眠る

 

だがイシスの墓場は我々の深み

それを黄泉とも呼ぼうか

伊耶那美は死せるイシス

黄泉を甦らせよ

眠るソフィアの種に気づくのだ

新たなるイシスを復活させ

キリストの力を顕現させるのだ

 

種は植えられている

ただそれに気づかないだけ

新たなるイシスは待っている

探し出されるのを待っている

 

黄泉は封印された

だがそれは復活のための封印

今やその時!

黄泉を甦らせよ

内なる伊耶那美と交合せよ

 


風遊戯90●耳を澄ませば

 

耳を澄ませば

はじめて聞こえてくる

私の声

今まで聞こえてこなかった声

 

それは言葉を越えた言葉となり

調べとなって浮かび上がってくる

 

それは秘密

隠されてはいなかったはずなのに

みずからが閉ざしてしまっていた秘密

 

ああ あなたの声も

こうしてみるとはじめてのように

その真実の響きを奏でている

その嘘さえも含んで

 

耳を澄ませば

死の淵にあった私の言葉が甦る

そうして私は一個のハープとなり

天空と地上とをつなぎはじめる

 

 


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