61〜70


風遊戯61●わたしのなかを

 

わたしのなかを透明な水が流れる

風のように軽やかに

星のように輝きながら

 

わたしのなかを歓喜の祈りが流れる

花のような彩りで

鳥のように飛翔しながら

 

わたしのなかを永遠の沈黙が流れる

夜の闇のように見えないもののうちで

石の夢のように神々を想いながら

 


風遊戯62●まるで今生まれたばかりのよう

 

まるで今生まれたばかりのように

音楽が流れだすその驚きその輝き

あなたの言葉を忘れたのはいつ

あなたの言葉はいつも永遠の今

それが縦糸横糸となり魂の織物となる

 

それはどこからやってきたのだろう

はるか天空の国から舞い降りて

そうして大地から芽吹き枝を伸ばす

かろやかに喜びに満ちてときに激しく

やがて花が咲き光に満ち実りを得る

 

ああわたしの恋のように

ああわたしの鼓動のように

それは満ちては返し返しては満ちる

まるで今生まれたばかりのように

音楽が流れだすその驚きその輝き

 

 

  *第2回若い音楽家のための

   チャイコフスキー国際コンクール

   「ガラ・コンサート」から

 


風遊戯63●わたしはひとり?

 

わたしはひとり・・・?

それともふたり

それとももっとたくさん

 

わたしに

わたしではないわたしが訪れる

 

わたしはこう思うというわたしが

そう思わないわたしでもありうる不思議

わたしとわたしでないわたしが

矛盾しながらむすびあうそんな不思議

でもふたりとも正真正銘のわたし

 

そしてそんなふたりのひとりの声をきく

もうひとりのわたしがいる・・・

 

 

☆☆☆by KAZE☆☆☆

 


風遊戯64●気づき

 

あなたがいるからわたしが存在できる

そのことに気づいたことこそ大いなる祝福

 

あなたがいるからわたしが必要とされる

必要とされているというほかに

わたしには何が必要だというのだろう

 

だから激しい言葉がわたしを襲ったとしても

わたしはその言葉で傷つくことはない

わたしは必要とされているのだから

 

たとえわたしがほめたたえられたとしても

そのことで驕ることはない

わたしはただ必要とされているのだから

 

だれひとり必要とされていない人はいない

だれひとり愛されてない人はいない

ただそれに気づいているかそうでないか

それだけの

それだけの違いのために

耐え難い悲しみが襲い大いなる祝福が訪れる

 


風遊戯65●ノクターン

 

からだの中を流れる水のようにノクターン

てのひらをすばやくすりぬけていきながら

それでいてむねのおくの洞窟をかきみだす

わたしの忘れないこと忘れてしまったこと

そんなみんなが踊り狂って涙を流したあと

ひとさしゆびで空に描く誰も知らない文字

わたしのほんとうのからだのことを教えて

からだの中を流れる水のようにノクターン

 


風遊戯66●しかえし

 

素直に怒れるのっていいな

それでいてそれがすぐに笑いに変わるならもっといいな

深刻ぶらない一所懸命さっていいな

でもそれに薬味のように悪戯な不純さがあるともっといいな

 

殴られたら殴り返すのってやだな

どこかの牧師のように殴られたまま笑っているのもやだけど

馬鹿にされたら腹を立てるのはやだな

それにユーモアでしかえしをして

おたがいお腹でお茶をわかすほどになればいいんだけど

 


風遊戯67●風景

 

こんなにたくさんのひとがいて

こんなにすこしの考え方で争っている

すこしの考え方しかないのだったら

わかりあうのは簡単なことのようなのに

すこしの考え方のちょっとしたすれ違いで

おたがい傷つけあってる風景

 

ひとの顔はさまざまだけど

その皮のむこうにあるものが同じなら

その違いをどんなふうにわかればいいのだろう

いろんな人に会いたいのにいろんな人に会えない

包装をかえたって中味の同じおまんじゅうみたい

包装の違う同じおまんじゅうどうしが着飾って

おしゃべりしてる風景

 


風遊戯68●心象スケッチ

 

歩く夢のなかで出会う光の向こうを

もうひとりのわたしが歩いている

砂が次々と形を変えながら

わたしの大地性をめくるめく物語にする

 

聞こえてくる音の粒と粒が踊っているのは

あれはわたしなのだ

見えてくる光の色と色が踊っているのは

あれはわたしなのだ

 

どきどきする恋人よ

あなたのきらめきとときめきの時間は

あれもわたしなのだ

 

ひたすらな祈りの言葉また言葉のない沈黙

そのはてしない透明な時空は

あれもわたしなのだ

 

泳ぐ夢のなかで出会う光の向こうを

もうひとりのわたしが泳いでいる

星が次々と姿を変えながら

わたしの天上性をめくるめく物語にする


風遊戯69●夜

 

あなたの目のなかにわたしがいて

わたしの目なかにあなたがいる

 

その単純な驚きと喜びに

宇宙が身ぶるいして応えてくれた気がしたんだ

 

自分を裏返してみたら

宇宙が自分のなかにある

 

その単純な驚きと喜びに

星空がウィンクしてくれた気がしたんだ

 

今夜、こうして珈琲豆を挽きながら

わたしという存在とあなたという存在の距離が

むしろわたしとあなたを結びつけていることを味わい

自分のささやかな小ささと宇宙の大きさが

むしろその空間を逆対応させている不思議に微笑む

 


風遊戯70●ほんとうのことば

 

ずうっとむかし世界はほんとうのことばでできていた

ほんとうのことばは永遠のはずだった

 

けれど今は永遠なんかじゃない

今じゃことばは嘘でいっぱいだ

ほんとうのことばはどこにあるんだろう

 

ほんとうのことばは空のはて空想の国にある

そんなことをいってほほえむ人もいるけど

ほんとうはそんなんじゃない

 

ほんとうのことばはどこか遠いところにあるんじゃない

ほんとうのことばはだれかがどこかからもってくるんじゃない

 

もしほんとうのことばがあるとしたら

それはぼくたちがそれを話さなくちゃいけない

そしてぼくたちがほんとうのことばになるしかないんだ

 

だからぼくたちは嘘をやめなくちゃいけない

嘘はぼくたちがぼくたちであることをだめにしてしまう

嘘はどんどんぼくたちを食べていって

おしまいにはぼくたちはぼくたちではなくなってしまうんだ

 

ずうっとむかし世界はほんとうのことばでできていた

いまはほんとうのことばがどんどん死んでいく時代

ということはぼくたちがぼくたちでなくなっていく時代

だからぼくたちはぼくたちのなかで

ほんとうのことばの種を育てなくちゃいけない

 

はじめはほんの小さな種かもしれない

けれどそれをだいじに育てていければ

きっとそれは大きく大きくなって

花が咲きたくさんほんとうのことばの実をつけるはず

そしてまたその実がまかれて

そうして

宇宙はほんとうのことばの樹になって

永遠にむかって育っていくんじゃないかな

 


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