41〜50


風遊戯41●白昼夢(間奏曲2)

 

青い空の隙間から突き出る顔

笑うでもなし 怒るでもなし

じっと 私を 見ている

 

物質的な言葉が向かってくる

受け取るでもなし 投げ返すでもなし

じっと それを 見ている

 

どうしようもない欲望が腹をくすぐる

踊りたくもあり 面倒くさくもあり

じっと くすぐられて 遊んでいる

 


風遊戯42●あいだ

 

ほんとう と うそ の あいだに

あなた と わたし が ひっそり

 

合わせ鏡のなかで無限時空を演じる心

 

ほんとう の あなた なんて いた?

うそ の わたし なんて いた?

 

湖に波紋が広がっていくような言葉

 

なに を さがして るの?

だれ に はなして るの?

 

口笛が夜の闇に響く街を散歩する気分

 

あなた は だれ?

もちろん わたし は あなた ふふ

 


風遊戯43●橋

 

あなたに伝えようとするなら

橋を渡らなければ

あなたへと架かる橋を

 

あいだを流れる川は深くて早い

しばしば濁流が橋を押し流す

橋は幾度も幾度も架けかえられる

 

ときにあなたは橋に背を向ける

ときにあなたは幾度も橋を渡る

どれもあなただ

 

橋を愛するときがある

橋を憎むときがある

それでも橋はわたしとあなたをつなぐ

 

橋は語らない

橋は語りそのものだ

橋はわたしとあなたの愛だ(あいだ^^;)

 


風遊戯44●悲しい恋のかぞえうた

 

ひとつひみつの恋の歌

ふたつふたりで夜の果て

みっつみじかい夢をみて

よっつよろこび花を買い

いつついくどもキスをして

むっつむずむず恥ずかしく

ななつなんでも語り合い

やっつやっぱり目が覚めた

ここのつここらで勘違い

とうでとことん憎み合う

 


風遊戯45●声の再生にむけて

 

ときおり失語症に近い状態になる

放とうとした言葉が胸と喉のあたりで鬱積し

摩擦音ばかりの状態になったり

放たれようとする言葉が

その燃料を失って失速したりする

 

言葉とはいったいなんだろう

話すとはいったいなんだろう

折口信夫は「うたう」とは「うったへる」であり

「かたる」とは「相手をば詞で征服するといふこと」であるというが

言葉は行動そのもの

だからそれは行動するかしないかのいずれかである

 

放てない言葉

届かない言葉

それはおそらく言葉にほんとうがないからだ

ほんとうでない言葉は生きてないからだ

 

ほんとうの言葉はどこ

うったえるうたはどこ

言葉は宙に浮きどこにもゆけないでいる

声は失われようとしている

 

わたしがほんとうに放つことのできる言葉を

わたしそのものがうたうことのできる声で

ああ いのちの気づきのために

声の甦りのために

 


風遊戯46●他者の訪れ

 

さて 他者が訪れた

わたしではない者

 

言葉がみつからない

だから言葉を探そう

 

さて わたしはいったいだれ

わたしとは第三者かもしれないと感じる

 

言葉を探すのはわたし

しかしわたしは第三者

 

わたしとあなたがいて

それをつなぐ言葉がみつからない

 

困るのはわたしだが

わたしは第三者的人格

 

言葉でわたしをワタシにつながなければ

ワタシ わたし 他者 をつなぐ言葉

 

世界が閉じている

世界を開かなくては

 

言葉が立ち上がらない

言葉を見つけなくては

 

真実の言葉よ あれ

そう祈るワタシ

 


風遊戯47●学ぶこと

 

学ぶことというのは壊すことだ

決まり切った思いこみを壊すことだ

相手のを壊すのは易しい

難しいのはじぶんのを壊すことだ

 

教えることなんてできない

できるのはともに学びあうことだけ

そして学ぶというのは

じぶんでじぶんを変えていくこと

だれかを変えてやろうとか変えられるとか思うな

 

だれかの痛みをわかちあう

それは相手のためではなくじぶんのため

わかちあったぶんだけじぶんはしあわせになり

相手もたぶんしあわせになれる

そのことで世界はふたりぶんしあわせになる

 

 


風遊戯48●風のギタンジャリ1

 

このてのひらですくいとる天の音楽

わたしは器となりそれをうけとめようと

目を閉じてその訪れを待つ

 

永遠

ことばにするにはあまりに尊いものが

常に新しい訪れとなって私を満たす

 

ほんとうのことばをさがして

どれほど時がすぎたことか

わたしの口から流れることばのうそが

幾度わたしを責めたことか

 

わたしの腹はねじれ

胸はしめつけられ

喉は渇きつづけた

そして額には痛みの矢が降り注いだ

 

こ・と・ば

この世にほんとうのことばはあるのか

わたしはそのことばで満たされることができるのか

 

生まれでたばかりの子どものように

ひとつずつことばを学ばなければ

うそのことばをことごとく捨て去って

ほんとうのことばだけを食べなければ

 

わたしはことばの器になろう

ことばの訪れる器になろう

そこに盛られることばでわたしの衣にしよう

 

わたしからそこにゆくことはできない

その訪れを待つことをいのちにするのだ

聖なる杯のように

そこに注がれる器となるのだ

 

 

*森本達雄氏の訳注によるタゴールの「ギタンジャリ」(第三文明社・レグルス文庫)

が新刊で発売されました。これは、その「ギタンジャリ」にちなんだものです。

 


風遊戯50●良寛幻想

 

独りで生まれ

独りで死に

独りで座り

独りで思う

 

世の中にまじらぬとにはあらねども

ひとり遊びぞわれは優れる

 

災難に逢時節には災難に逢がよく候

死ぬ時節には死ぬがよく候

是はこれ災難をのがるる妙法にて候

 

山みれば山もとふとし

里みれば里もゆたけし

 

そもそもの始め

それは知られぬ

いよいよの終り

それは知られぬ

 

うらを見せ

おもてをみせて

ちるもみじ

 

天 上

大 風

 

 


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