青い空の隙間から突き出る顔
笑うでもなし 怒るでもなし
じっと 私を 見ている
物質的な言葉が向かってくる
受け取るでもなし 投げ返すでもなし
じっと それを 見ている
どうしようもない欲望が腹をくすぐる
踊りたくもあり 面倒くさくもあり
じっと くすぐられて 遊んでいる
ほんとう と うそ の あいだに
あなた と わたし が ひっそり
合わせ鏡のなかで無限時空を演じる心
ほんとう の あなた なんて いた?
うそ の わたし なんて いた?
湖に波紋が広がっていくような言葉
なに を さがして るの?
だれ に はなして るの?
口笛が夜の闇に響く街を散歩する気分
あなた は だれ?
もちろん わたし は あなた ふふ
あなたに伝えようとするなら
橋を渡らなければ
あなたへと架かる橋を
あいだを流れる川は深くて早い
しばしば濁流が橋を押し流す
橋は幾度も幾度も架けかえられる
ときにあなたは橋に背を向ける
ときにあなたは幾度も橋を渡る
どれもあなただ
橋を愛するときがある
橋を憎むときがある
それでも橋はわたしとあなたをつなぐ
橋は語らない
橋は語りそのものだ
橋はわたしとあなたの愛だ(あいだ^^;)
ひとつひみつの恋の歌
ふたつふたりで夜の果て
みっつみじかい夢をみて
よっつよろこび花を買い
いつついくどもキスをして
むっつむずむず恥ずかしく
ななつなんでも語り合い
やっつやっぱり目が覚めた
ここのつここらで勘違い
とうでとことん憎み合う
ときおり失語症に近い状態になる
放とうとした言葉が胸と喉のあたりで鬱積し
摩擦音ばかりの状態になったり
放たれようとする言葉が
その燃料を失って失速したりする
言葉とはいったいなんだろう
話すとはいったいなんだろう
折口信夫は「うたう」とは「うったへる」であり
「かたる」とは「相手をば詞で征服するといふこと」であるというが
言葉は行動そのもの
だからそれは行動するかしないかのいずれかである
放てない言葉
届かない言葉
それはおそらく言葉にほんとうがないからだ
ほんとうでない言葉は生きてないからだ
ほんとうの言葉はどこ
うったえるうたはどこ
言葉は宙に浮きどこにもゆけないでいる
声は失われようとしている
わたしがほんとうに放つことのできる言葉を
わたしそのものがうたうことのできる声で
ああ いのちの気づきのために
声の甦りのために
さて 他者が訪れた
わたしではない者
言葉がみつからない
だから言葉を探そう
さて わたしはいったいだれ
わたしとは第三者かもしれないと感じる
言葉を探すのはわたし
しかしわたしは第三者
わたしとあなたがいて
それをつなぐ言葉がみつからない
困るのはわたしだが
わたしは第三者的人格
言葉でわたしをワタシにつながなければ
ワタシ わたし 他者 をつなぐ言葉
世界が閉じている
世界を開かなくては
言葉が立ち上がらない
言葉を見つけなくては
真実の言葉よ あれ
そう祈るワタシ
学ぶことというのは壊すことだ
決まり切った思いこみを壊すことだ
相手のを壊すのは易しい
難しいのはじぶんのを壊すことだ
教えることなんてできない
できるのはともに学びあうことだけ
そして学ぶというのは
じぶんでじぶんを変えていくこと
だれかを変えてやろうとか変えられるとか思うな
だれかの痛みをわかちあう
それは相手のためではなくじぶんのため
わかちあったぶんだけじぶんはしあわせになり
相手もたぶんしあわせになれる
そのことで世界はふたりぶんしあわせになる
このてのひらですくいとる天の音楽
わたしは器となりそれをうけとめようと
目を閉じてその訪れを待つ
永遠
ことばにするにはあまりに尊いものが
常に新しい訪れとなって私を満たす
ほんとうのことばをさがして
どれほど時がすぎたことか
わたしの口から流れることばのうそが
幾度わたしを責めたことか
わたしの腹はねじれ
胸はしめつけられ
喉は渇きつづけた
そして額には痛みの矢が降り注いだ
こ・と・ば
この世にほんとうのことばはあるのか
わたしはそのことばで満たされることができるのか
生まれでたばかりの子どものように
ひとつずつことばを学ばなければ
うそのことばをことごとく捨て去って
ほんとうのことばだけを食べなければ
わたしはことばの器になろう
ことばの訪れる器になろう
そこに盛られることばでわたしの衣にしよう
わたしからそこにゆくことはできない
その訪れを待つことをいのちにするのだ
聖なる杯のように
そこに注がれる器となるのだ
*森本達雄氏の訳注によるタゴールの「ギタンジャリ」(第三文明社・レグルス文庫)
が新刊で発売されました。これは、その「ギタンジャリ」にちなんだものです。
独りで生まれ
独りで死に
独りで座り
独りで思う
世の中にまじらぬとにはあらねども
ひとり遊びぞわれは優れる
災難に逢時節には災難に逢がよく候
死ぬ時節には死ぬがよく候
是はこれ災難をのがるる妙法にて候
山みれば山もとふとし
里みれば里もゆたけし
そもそもの始め
それは知られぬ
いよいよの終り
それは知られぬ
うらを見せ
おもてをみせて
ちるもみじ
天 上
大 風