わたしという器に
盛られる
光の粒子たち
輝け
わたしという間に
ひろがる
名づけようのないものたち
歌え
わたしという弦を
ふるわせる
宇宙の星たち
踊れ
わたしという電灯を
点滅させる
因果の理法たち
なむあみだぶつ
I was born
生まれた
この受け身は受け身ではない
みずからがみずからを生みだす逆説なのだ
この大いなる逆説を通じて
人は人となる
逆説こそが人生なのだ
みずからを空しくせよとは
この逆説によって
生みだす自分を見出すことだ
さあ覚悟せよ
生みだされる自分を空とせよ
絶対矛盾的自己同一
そこに何が見えるか
さあ、答えよ
ほうい ほうい と呼び声がする
それがどこからくるのかはわからない
ひょっとするとそれは内からの声かもしれない
ほうい ほうい ほうい
それは確実に私に届けられてくる
私のなかの時間と空間
ときおりそれがまわりのそれとズレをつくりだす
私はいったい何者か
そんな疑問がそのズレなのかもしれないとも思う
疑問はときおりあまりに大きく肥大するので
私という領域がわからなくなることがある
いったいどこまでが私か
私の時間と空間が流出して
私そのものがからっぽになってしまうような
私に届けられる呼び声
ほうい ほうい ほうい
それは外から届けられるにもかかわらず
内なる私の呼び声でもある
なぜだかわからないが
それが私には深いところでわかるのだ
ぼくをわかって
ぼくの闇を聞いて
ぼくは小さな声しかだせないんだ
だから耳をすまして聞いて
声にはならないかもしれない
吹きすぎる風にしか聞こえないかもしれない
でも聞いてほしい
ぼくをわかってほしい
いつからこうしているんだろう
なぜこうして泣いているんだろう
わからない
わからない
じっとこうしていると
ぼくの闇が大きくなってくる
こわい
こわい
こわいからかすかな光がほしい
でも強い光だとぼくは死んじゃうかも
聞いて
ぼくの闇を聞いて
そうすれば
思い出せるかもしれない
ぼくがほんとうはだれで
なにをしようとしてるのかを
てのひらを見なさい
しなやかに世界をうけとめるてのひらを
両手ですくいとることのできる世界は
たとえば清らかな川のほんのひとすくいでしかないが
その透明なきらめきは
「わたし」という小さな宇宙を映している
その無限のときめきは
てのひらから舞い上がり
天と地のダンスをくりひろげる
ひとみを閉じなさい
あなたの見ている
にせものの世界から離れなさい
その暗闇のなかから
かずかにかすかに語りかける声に
耳をすませるのです
それはあなたのずっと奥で
静かにあなたの目覚めを待っていた声
あなたという宇宙の音楽
そうしてそうっと目をあけなさい
そこに広がる世界が
その本来の「言葉」で
あなたを誘うのがわかるはず
ほんの ひとすくいの 言葉が
たえきれない ほどの 思いを
そっと ささえてくれる ときも ある
わたしの 悲しい 腹を
やさしい てのひらが そっと なでる
そのことだけで 救われる ときも ある
ああ わたしの からっぽの のどが
ほんとうの すきとおった 水を ほしがる
ああ わたしの よどんだ ひとみが
ほんとうの かがやく 光を ほしがる
待つこと の よるべなさ
息を ひとつ する あいだ
今 が じっと うずくまる 重さ
青い そら の かなた
遠い 記憶 かすむ 夕べ
わたし は ひっそりと 待つ
わたし なんて いた?
あなた なんて いた?
こころ なんて あった?
からだ なんて あった?
息を しずめる 夜の 谷
待つこと の 闇 に 迷い
爪 を 切り
目 を 洗う
記憶 なんて 嘘さ
時 が よじれ 裂かれる
増殖する わたし
増殖する あなた
どこか で とけあう 場所
いつか そんな 時が くる?
私はひとつの仮説である
仮説には逆の仮説が必要であると言った人がいる
私の逆の仮説とは何であろうか
ひょっとしてそれはあなたかもしれないね
そういうとあなたは笑った
私はひとつの仮説である
仮説は論証されることもあるが
否定されることもある
私という仮説が否定されたとき
私は一個の無となるか
それもまた一興
私はひとつの仮説である
私という仮説を前提として
さまざまな仮説がまた生み出される
この世はなんと多くの仮説に満ちていることか
五十億以上の仮説がさらに多くの仮説を生む
世界もひとつの仮説である
私という仮説がその世界で戯れる
なんと愉しい遊びであることよ
ひひ わらふ をんな てまねき
ふふ ひみつ ひみつ てまねき
ここ だって あそこ だって
だめ だって そっち だって
そこ もっと あなた すきよ
あれ そっと きもち すきよ