21〜30


風遊戯21●数の音楽

 

きみの音をきけ

みみをすますんだ

いやそれはもはや音ではない

響く数である

 

きみは数をきくんだ

いやきみは数となれ

数そのものとなって

きみを奏でよ

 

きみは数の弦だ

きみの数と僕の数

すてきなアンサンブルを楽しもう

 


風遊戯22●うんめい/やみをたべるひと

 

   うつろ のぞく ひと ことば なくす

   やみの むこう なにも みえず

   こわい こえ ぞぞぞ しみる

 

   なぜか しらない ずっと こわい

   うんめい なんて いうんだろうか

   わからない だから こわい こわい

 

   たいよう くろい ぎらぎら くろい

   もりが あかい ごうごう あかい

   どうしてなのか ちきゅうが もえる

 

   ぼくは うつろ なにも わからず

   ほしも はなも うみも からっぽ

   ぼくの なかで すべて からっぽ

 

   いいのかな いいのかな このままで

   いけない いけない このままでは

   どうする どうする うつろ こわい

 

   だれも おしえてくれない

   だれも すくってくれない

   だれも あいしてくれない

 

あ あ こ わ い

な ぜ な の か

だ れ か お し え て

な に も み え な い

 


風遊戯23●ほしのいのり

 

   ぽけっとに おほしさま

きらら はじける ぎんの ひかり

おいちに さんし あそんでる

るんるる るるっる うたってる

 

やみのくにって あるそうな

そこでは あいが うばいあい

かなしいね せつないね

 

ほしければ あたえればいいんだ

あいされたければ あいすればいいんだ

   そんなこと わからないのかなあ

 

ねえ おほしさま うたってよ

やみの ひとのために うたってよ

きらら はじけて おどってよ

 

   ぽけっとの おほしさま

きらら はじけて いのっている

だれも かなしくないように

だれも なかずにすむように

おいちに さんし いのってる

りりりり りりって いのってる

 


 

風遊戯24●運命が創造となる場所で

 

どれほどの思いを経て

この場所はつくりだされたのだろうか

かつてわたしは誓ったことがあるという

自由によって愛を勝ちとろうと

 

もちろんそうでない者たちは多く

自由であることの愚かさと危うさを諭す者も

声を荒げてわたしの無謀な試みを

とどめようとする長老たちもいた

 

「運命はきまっているから得るものが多いのだ」

そう諄諄と説く最長老に

わたしはこういったものだ

「そう、運命はきまっているのだろう

 だが、ご老人、それはみずからがつくりだし

 そうして運命ということを創造に変えてこそ

 ほんとうに得るものがあるといえるのではないか」と

 

どれほどの思いがこの地に

わたしをふたたび生み出し

どれほどの思いがこの地へと

流れ込んできていることか

 

ああ、時間がわたしに流れ込む

かつて争ったことも

すべては意味深いことだったのだ

いま、わたしはそれを知り

さまざまな思いに身をゆだねる

 

さあ、思い出のわたしよ

その思い出が新たな礎となるように意志せよ

わたしという存在はそこで運命となるのだ

そして運命はそこで創造そのものとなる

 

 


風遊戯25●ひふみをきららにせよ

 

ひふみをきららにせよ

神より放たれた言葉を

もう一度神に返すのだ

しかもきららに変容させて

 

ひとは宇宙の合わせ鏡

しかも悪への可能性さえ許された自由な鏡

だからこそ言葉を自由なシンフォニーにして

神への捧げものにするのだ

 

ひとは生命のなかで母音を七重に反射し

この肉体のなかで子音を十二重に反射する

音楽はその反射のなかで歪み撓み澱むが

それらのなかでしか結晶しないものがある

 

その結晶こそがきらら

自由でしか創造できないきらら

それは純粋でも透明でもないかもしれないが

無限の愛の深みをそこにたたえるものである

 

神からのひふみ

ひふみを悲しみのなかで変容させるのだ

深淵のなかでこそ創造されるものがあり

そこに宇宙の限りない芸術があるから

 


風遊戯26●空の青に永遠を見た日

 

空の青に永遠を見た日*1

花の色は惑星の音に染められ

人の言葉は銀河の舟に乗る

 

光あれ

するとそこに永遠の絵画が現れ

響け言霊

するとそこに永遠の声が流れ出す

 

「色は花の咲く前でなければ、此岸には留まらない」*2

そして染織家は花に移る前の色を取り出し

「声はみずからを空にしなければ、この世には届かない」

そして声楽家は自我の器に色鮮やかな音を盛る

 

ああ 幾たびも夢見た空の青

ああ 幾たびも待ちわびた声の永遠

 

わたしは冬の午後

みずからの内なる弦を試みに弾いてみる

するとどこからか魂のかたちがころがりだし

それがみるみるひろがり空の青に融けだす

 

*1友人の画家「白石裕三 油彩展」の「鏡の中の如く」へのイメージ

*2志村ふくみ「語りかける花」(人文書院)より

 


風遊戯27●めぐる年のために ’93

 

さて 色はめぐり音はめぐる

過ぎ去る年に大きく手を振り

ありがとうを繰り返しながら

わたしはめぐりくる年にむかい襟を正す

 

天上からめぐりくる波が

わたしのなかで大きく輪を描きながら

さまざまな色と音の波を創り出し

そうしてもう一度

天上へとめぐってゆこうとする刹那

ほんのひとすじ残される

ほんのかすかなためらいのような軌跡

 

わたしはその軌跡に限りないいとおしさを感じる

空の青にゆれている花のせいではあるまいし

その輪郭のあたりで恥ずかしげにゆれている

記憶のさまざまな断片のせいでもあるまいが

この言葉にならぬためらいを

わたしは大切に大切にしたいと思う

 

さて 色よめぐれ 音よめぐれ

過ぎ去る年もめぐりくる年も

すべてを包み込むだけの思いを

このちっぽけな身体のすべてをかけて

この空に映し出してみせよう

ああ 結構なドラマではないか

そんなことを思わせる年の暮れである

 


風遊戯28●初夢/年始挨拶に代えて

 

夢を見られない時代がくる

そう言う賢者がいる

しかし私はあえて言おう

それだから夢が必要だと

 

もちろんその夢は単に美しいものでもなければ

無邪気に喜ばしいものでもないだろうが

だからこそ美しい夢であれ

喜ばしい夢であれと言うのだ

 

美しい年にしたい

それはすべての汚れまでも変容させた美しさ

喜ばしい年にしたい

それは悲しみや苦しみを通して得られた喜び

 

人類という胎児よ

大いに夢を見ようではないか

星の妙なる響きを聴きながら

地の揺籃に揺られながら

 

目覚めの時は近い

美しいものが美しく見えず

喜びが喜びに感じられないこともあるだろうが

泣いてばかりはいられないよ

目覚めの後にこそ真実があるのだから

 

おお 夢よ

幻の夢はいらない

真実の夢に変容せよ

それこそ宇宙が夢見ている私なのだ

 


風遊戯29●メランコリック

 

ら ら ら ら

時間 が 渦巻く

メランコリック 夜の息

祈り とどかない まま

 

ら ら ら ら

わたしの 裏側 から

言葉のない言葉が とどく

遊びにしては つらい

 

ら ら ら ら

光 が 反転して

わたしの逆物語 映す

告白にしては 笑える

 

ら ら ら ら

未来から わたしがくる

過去から わたしがくる

美しすぎる と 涙が苦い

 

ら ら ら ら

時間 が 渦巻く

メランコリック 夜の息

祈り いつか とどく か

 

 


風遊戯30●愛すること

 

愛されたいひとが地上に満ちて

愛したいひとが地上にいなくなったとき

この地上から愛は消える

 

自分だけは愛されたいという思い

それはいろんな衣装を着て現れる

そしてそれはあまりにも同情しやすい物語だ

 

単純な真実はひとにきびしいことが多い

しかもなぜかそれはむずかしいことのようにされる

真実は同情しがたいからかもしれない

 

子どものような心を失ってはならない

だがすべてのひとが子どもになってしまったらどうだろう

庇護すべき大人はどこにも見あたらないことになる

 

大人になること

真に大人になること

それこそが子どものような心を失わないことなのだ

 

それを誤解するのはたやすい

甘えるのをはばからないことはたやすい

子どものままでいるのはたやすいことなのだ

 

大人であることは愛すること

子どもであることは愛されたいこと

世界は大人を探している

 

だれでも子どもだったのは事実

自分を子どもとみなすのは簡単

だが世界は大人を捜している

 

愛されたい人は理論家だ

理論ほど簡単なことはない

けれど必要なのは愛するというその行為なのだ

 

愛よこの地に満てよ

不毛の大地に満てよ

そこに叡智の花が咲く

 

 


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