11〜20


風遊戯11●かなしみのはて

 

   いのち うまれ しに

   ときのなかを ながれ

   われは みる

   かなしみの はて

   

   くもは ながれ

   ほしは ひかり

   こいびとは うたい

   たびびとは みちをゆく

 

   ああ あおき こころのこえよ

   われは いくど こうして

   めにみえぬ きみに かたりかけたことか

     

   いのち うまれ しに

   ときのなかを ながれ

   われは いのる

   かなしみの はて

 


風遊戯12●純粋

 

子供の純粋さよりも

私は汚れのなかのひとにぎりの純粋さを

かぎりなくいとおしく思う

苦しみの果ての真珠の輝きを美しいと思う

 

年老いてなお持ちつづける透明さは

子供のそれと似ているようにみえるが

実のところまったく異なったものである

そこには真の自由の選びとったものがあるからだ

 

子供のようであるのと子供であるのとは違う

私は子供のようでありたいとは思うが

子供でありたいとは決して思わない

私は何よりも自由を選びたいからだ

 

自由が選びとった透明さこそが宝石である

その宝石を勲章としよう

その宝石を銀河にむけて誇ろう

そこに時間のなかに生まれた私の証しがあるから

 


風遊戯13●わたしを奏でる

 

わたしは音楽

からだは楽器

そして宇宙がわたしを奏でる

 

わたしはからっぽにならなければならない

からっぽがいちばんの充実になるから

からっぽに宇宙が流れ込んでくるから

 

みみをひらいてごらん

目も鼻も口もそんなみんな

どこまでもひらいてゆくんだ

 

すべてをひらいてゆくんだ

ひらくだけでいい

それ以外はなにもいらない

 

すべてひらいたときに

わたしは楽器そのものになり

宇宙がわたしを奏ではじめる

 


風遊戯14●自由のために

 

わたしがわたしであること

ほんとうのわたしであること

それを求めることを自由と呼ぼう

 

自由はエゴではない

それは自由の反対のものだ

わたしがほんとうに

わたしになろうとするのでなければ

自由はどこにも姿を現さないことを知れ

 

花が咲く

自由とはけんめいに花咲こうとすることだ

花が咲くのをやめようとするのは自由ではない

風は吹き

鳥は空をゆく

それこそが自由の姿なのだ

 

自由を投げ棄てた人の群れがゆく

その顔は歓楽に酔いしれ

ときには怒りにふるえる

その者らは自らを自由と呼ぶ

だがそれは自由の反対のものだ

おまえたちは自由を投げ棄てる自由だけを選んだのだ

 

自由のために

わたしは声を限りに叫ぼう

あなたはもっともあなたらしくあれ

そうすることを選びとるあなたであれと


風遊戯15●脱牢獄

 

肉体は牢獄か

はたまた愛の表現か

 

叡智は惜しみなく降り注ぎ

愛は限りなく人を貫く

 

だが牢獄は牢獄という者あり

肉体を憎みそれを拒む

 

快楽の泉という者あり

肉体を歓びはかなく燃やす

 

ああ叡智と愛を遠ざけて苦しむ者よ

その牢獄から脱出せよ

 

肉体は大いなる試練であり

それこそが大いなる愛の表現でもあるのだ

 


風遊戯16●遊戯唄「る・ら・り」

 

ああ いちめんのおんがく るる

ゆびとゆび たわむれ つむぐうた らら

くちぶえ そらのほしに からみ りり

 

こいしてるかい こころをもやし

うたってるかい こえをがぎりに

さわってるかい やわらかないのち

 

わすれないで ぼくのこと

かぜのようにはしる ぼくのこと

ほしのようにうたう ぼくのこと

 

ああ いちめんのおんがく るる

みずがながれ ほしがひかり らら

きみの ひとみ そらのかなた りり

 


風遊戯17●スサノオ、山を降りる。

 

  スサノオ、鞍馬山を降りて、

  笑いながら言うことには、

 

  「俺は、配管工のようなもんだな。

   最も高次のものを最も低次のものと

   結びつけなきゃならない。

   その管から水のもれるのを

   次々に塞いでいかなくちゃならないわけだ。」

 

  おお、スサノオ、

  錬金術の王よ。

  傷つきながらも、

  その身をメタモルフォーゼさせる者よ。

  おまえの魂の結婚は迫っている。

 

  月の杯はその準備を終えぬまま

  蟹はスサノオに脅え、また激しく求め、

  低きものへの愛をはかりかねている。

  

  ああ、スサノオはようやく山に登り

  そうして山を降りた。

  高きものと低きものが

  愛のもとに結びつかねばならぬのを知った。

  それこそが真の悲しみの果てにあるもの、

  真の錬金術の営み。

  やがてそのときのために

  その衣をひるがえすときがくる。

 

  スサノオは大きくため息をつき、

  少し悲しそうに笑う。

 

  「配管はきわめてむずかしい。

   だが、創造のための結びが必要だ。

   神近きものを流れ下らせるものが必要だ。

   俺は、忍耐強い配管工であるとしよう。

   今こそ、そのときなのだから。」

 


風遊戯18●魂の変容/パラケルススの解放

 

  呪縛された者よ、みずからを解放せよ!

  世界がおまえにとって大きな縛りであるのは、

  それが変容の鍵であるからなのだ。

 

  植物が発芽し葉をつけ花を咲かせるように、

  おまえは内に秘められた力を解放するのだ。

  内なる天は外なる天のあらわれであり、

  それが世界の縛りを解く鍵となるからだ。 

 

  おまえは医師として、すべての魂のために、

  みずからの魂を解放しなければならない。

  それこそが、愛の錬金術、変容の魔術。

  そうでない医術は、天に対する詐術でしかない。

 

  おお、おまえは言った。

  「己の主人公たりうる者は、何人にも従属することなし」

  そう、医師は天以外のいかなる権威からも

  限りなく自由でなければならない。

  「慈悲こそ、医師の教師なのだ!」

  そう、天とは愛の表現であるからだ。

 

  魂よ、透明であれ。

  天の働きを映す鏡であれ。

  内なる天と外なる天を共鳴させる器であれ。

  解放とは天に向かう自由であるのだから。

 

 

  *「」内は、C.G.ユング「パラケルスス論」(みずず書房)より引用。

 


風遊戯19●祈り

 

話して きみのこと

心から伝えて このぼくに

恐れちゃいけないよ

恐れは真実を隠してしまうから

 

逃げないで みつめて

きみがいちばんきみらしく生きるために

しっかりとこの地を踏みしめていくんだ

それがきみのきみ自身との戦いなのだから

 

誇りをなくしちゃいけないよ

だれにもわかってもらえなくても

たとえもう一歩も踏み出せないと思っても

真実は誇りを選ぶことを忘れないで

 

めざめるんだ

すべての悲しみをこえて歩め

きみがきみであるための戦いに勝利せよ

きみがきみであるための自由を守れ

 

  恐れに打ち勝てますように

  悲しみをこえてゆけますように

  めざめが訪れますように

 

大いなる道はそこにあり

かぎりない未来がそこにある

ああ だからこそ

深く祈らざるをえないのだ

 


風遊戯20●叡智と愛

 

あるものがない ないものがある

求めればそこに求めるものはなく

ときはなたれてはじめて得られるものがある

大いなる矛盾にみえるものは矛盾ではなく

わたしゆえの矛盾なのだ

 

叡智を求める者よ

求めてはならない

しかしだからこそ得られるものがある

真の叡智は創造されるものである

求められたものは幻影でしかないのだ

 

創造される叡智を愛という

愛のなかにこそ叡智は生きる

叡智は過去にはない

未来への道のなかにあるのだ

その道を歩むことこそが愛

 

間違えてはいけないよ

運命はないのだ

それは創造するもの

それを充実した空と呼ぼう

運命はないからあるのだ

 

いま わたしは ない

だから わたしは ある

そこでわたしは自由になる

空がわたしを満たす

ああ わたしの生が真にはじまる

 

 


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