風の竪琴

21-30

(1998.11.19-1999.7.3)


風の竪琴21●神秘の文字

風の竪琴22●光のたべもの

風の竪琴23●胸の洞窟から

風の竪琴24●だ・あ・れ

風の竪琴25●虹伝説

風の竪琴26●竪琴宇宙

風の竪琴27●心の行方

風の竪琴28●あい

風の竪琴29●バード

風の竪琴30●水の洗礼

 

 

風の竪琴21

神秘の文字


1998.11.19

 

あなたの輝く瞳のなかに

クレーの絵のように描かれる光よ

無邪気な笑いとそしてひそやかな知性が

どこまでも神秘的で透明な色となって

私のなかを流れてゆく

 

光は神秘の文字となり

それがやがて私になる

 

あなたの語る言葉のなかに

ヘンデルのアリアのように紡がれる歌よ

閉じこめられた記憶が解き放たれるように

はるか響きわたる甘い旋律となって

私のなかで奏でられる

 

歌は神秘の文字となり

それがやがて私になる

 

 

風の竪琴22

光のたべもの


1998.11.19

 

おなかがすいたら

光をいっぱいたべましょう

 

ちかごろ光がめっきり少なくなって

いきのいい光はなかなかみつからないけど

 

むなしくなったら

光をいっぱいたべましょう

 

こころがからっぽになったひとをみつけたら

じぶんの光をわけてあげましょう

 

わけてあげればあげるほど

ふえてくる光のふしぎもたべましょう

 

つかれたときには

ひかりをいっぱいたべましょう

 

光をいっぱいたくわえた

元気いっぱいのたべものをみつけましょう

 

光をいっぱいたくわえた

元気いっぱいの自分をつくりましょう

 

 

風の竪琴23

胸の洞窟から


1999.2.9

 

胸の奥の洞窟に棲むという獣

その獣は深い嘆息にも似た声で吠え

わたしはどこかでかすかに

それを聞き取っているような気がする

 

獣は悲しみを喰らって生きているという

悲しみは血にまみれている

その血を獣は啜る

 

自分がそれら悲しみそのものとなっていることに

気づいてのことなのか

自分が自分であることに耐えきれないのか

獣の声はときおり祈りのような響きを帯びる

 

獣には遠い記憶がある

記憶とはいえないほどの遠い景色

そこに咲き乱れていた黄色い花と

そこに突然襲いかかってきた黒い雲

獣はひたすら歩き続けた

なにかから逃げようとするように

ひょとしたらなにかを探しているかのように

 

胸の奥にはぽっかり深い穴が空いている

その穴を喘息のような風吹き渡る

獣は耳をそばだてそれを聞く

誰かの声を待っているのか

それを音楽だと思っているのか

じっと蹲りながらそれを聞く

 

なぜ自分はここにいるのだろう

なぜ悲しみをそしてその血を啜っているのだろう

そんな考えが獣をさらに慟哭させるときがある

そしてそんなとき獣は洞窟をでようかとも考える

どこに行くのかはわからないのだが

なにかを探しているという感覚を失いたくない

そんなことを思ってもみるのだ

 

 

風の竪琴24

だ・あ・れ


1999.2.10

 

からだの深い

ところで

なにかが

拒まれている

 

わたしという

謎が

迷路の奥で

顔を背けている

 

わたしの声

わたしの声

でない

 

叫んでみようか

踊ってみようか

恋してみようか

 

どこにもさわれない指

どこにもとどかない声

 

拒まれたものの

蹲る

闇のはてない

孤独

 

夜明けの

晩に

すべった

後ろの正面

 

だ・あ・れ

 

 

風の竪琴25

虹伝説


1999.2.21

 

虹の鱗粉が虚空を散乱し乱舞する

翡翠碼碯琥珀玉髄孔雀石黄水晶

サファイアオパールルビームーンストーン

色の生命がうねり光となり音となり

やがて私を産卵しようとしている

 

そうぼくはこの星で何度も生きた

星の血はぼくのからだになり

花はぼくの心臓になった

ぼくは風のなかを駆けた

 

微分され積分されてゆく意識

無限空間のなかを無限時間が浮遊する

燦爛と煌めく虹の四次元時空が展開し

自由と愛の謎を生みだしながら

刹那滅の物語が語られてゆく

 

かつてぼくは戦士であり

詩人でありまた娼婦だった

聡明であり愚鈍であり

恋し憎み悲しみ歓喜絶望した

 

無限と瞬間が分離また邂逅し

私という意識の無限螺旋となる

数限りない私がさらに数限りない私となり

無数の私の螺旋が虹のように乱舞し飛翔する

そして汝という謎がそこに現われる

 

君に出会ったのは偶然じゃない

偶然なんてないんだから

君を恋してるのは

自分を恋しているということなのさ

 

壮大なシンフォニーが響きわたる

虹の喇叭が吹き鳴らされ愛の弦が奏でられる

無数の虹と化した私の螺旋が旋回しながら

大きな螺旋を創りさらに大きな螺旋となる

そうして時は満ち無限と瞬間が結ばれてゆく

 

ぼくは無数のぼくに出会い響き合う

そうしてずっとぼくでありながら

ぼくでなかったものがそこに生まれ

また虹の鱗粉となり散乱し乱舞する

 

 

風の竪琴26

竪琴宇宙


1999.2.25

 

私という不可思議を洞察せよ!

汝という謎へ跳躍せよ!

 

花は語る

樹は語る

言葉が私へと流入する

 

ワタシハコトバ

コトバハワタシ

ヒミツノコトバ

ホラウタッテル

 

やがて動物や昆虫が語り

鉱物たちそしてあらゆる物たちさえも語る

その言葉の秘密のなかへ

 

ワタシハアナタ

アナタハワタシ

ウタッテアゲヨ

ヒミツノウタヲ

 

空の彼方から声が降る

大地の底から声が湧く

星が奏で山が轟き海が歌う

 

ヒミツハワタシ

ヒミツハアナタ

セカイノヒミツ

ウタッテアゲヨ

 

宇宙という謎

私という謎

汝という謎が

歌になる!

 

竪琴宇宙の秘密へ!

 

 

風の竪琴27

心の行方


1999.3.2

 

いつからだろう

心が心の臓から

脳へと移り住んだのは

 

胸が熱くなったり

胸がときめいたり

胸をひらいたり

 

そんな胸が

心ではなくなってしまって

頭のほうへとのぼっていってしまった

とうとう頭にきたのだ

 

人の心があまりにも移り気になったしまったからか

神の心である精神がなくなってしまったからか

人は自分の心の臓をあげる約束をするようにすらなった

 

それは愛だろうか

愛とはカードに○をつけるようなものなのだろうか

それを愛と呼ぶには

あまりに安っぽい

 

メイク・ラブのように

愛は性でしかなくなった時代だから

愛もそれだけのものになったということか

 

頭にきた心は

恋することができるのだろうか

ときめくことができるのだろうか

ひらくことができるのだろうか

 

頭にきた心が

心の臓を移植する

頭にきた心が

愛を語る

 

新しい愛の時代の到来である・・・

 

 

風の竪琴28

あい


1999.3.18

 

きみではないぼくだから

きみにあいたい

 

ぼくではないきみだから

きみはぼくのまえにいる

 

そのおどろきを

どうやってつたえようか

 

きみではないぼくが

きみのことをかんがえる

 

ぼくではないきみが

ぼくをよぶ

 

そのときめきを

どうやってうたおうか

 

きみではないぼくのために

ぼくではないきみのために

うちゅうがまばたきをしている

 

そのはてしなさとせつなさのまえで

ぼくときみがてをつなぐ

 

 

風の竪琴29

バード


1999.6.29

 

おお、バード

私のなかのバード

はるかな次元の声に

耳をすませ

風のなかを歌う

 

おお、バード

力なく地を歩む私に

その声が呼び覚ます

それははるかな幻

それとも魔の誘い

 

おお、バード

言葉の無力を知る君よ

だからこそ託すのだ

新しい言葉を君に

声をかぎりに叫びながら

 

おお、バード

魂の深みの迷路に

声の糸で示せよ

輝ける自由の道

長くはてない道を

 

おお、バード

私とともにバード

果てない時をバード

歌い過ごせよバード

風のなかをバード

 

 

風の竪琴30

水の洗礼


1999.7.3

 

 

水の洗礼は続く

白夜のような光のなかで

ヨハネ、あなたの顔がエリアと重なり

ラファエロ、そしてノヴァーリスと重なる

 

水の洗礼は続き

雨は絶え間なく降り注ぐ

その水はなにを浄めようというのか

なにを導こうというのか

 

水の洗礼が私にも及び

私は足場のない深い水のなかで

息をすることさえできず

ヨハネ、あなたのことを考える

 

水の洗礼が洪水となり

まるで四十日四十夜にも及ぶかのように

人のいのちを押し流す

山を街を押し流す

 

水の洗礼のなかで

光を求める声を聞く

光とは何かを

知ることのない声が呻く

 

水の洗礼はいまもなお

雨の降りしきる音とともに

人に光とはなにかを指し示す

ヨハネ、あなたは何を語るのか

 

水の洗礼は続く

私のなかの水があふれでるまで

あなたに光を求めるのではなく

私のなかに光を見出せるときまで

 


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