「武満徹を語る」レゾナンス

2 自由


2007.4.4

   今井 私が武満さんの曲を弾き、楽譜を見ていつも思うのは、自由で
   あるということです。いちばん彼の望んでいたものは秩序ある自由さ
   ではなかったでしょうか。世界が自由であること、そうおっしゃって
   いたことがいちばん心に残っています。自由っていえば、やはりトリ
   オを演奏して本番の時のことなんですけど、西洋音楽というのは縦の
   線が揃っていなければいけないですね。武満さんは「その時の内容で
   ずれていい、無理して揃う必要はない」って言われたんです。その時、
   ああ、これだな武満さんの求めるものは、と思いました。

  (『武満徹を語る15の証言』小学館/2007.4.2.発行
   「第3章 ヴィオラ奏者・今井信子さんに聞く」より)

時間が空間に閉じこめられると
時計がいつも見回りにきて
ぼくたちみんなを整列させる
そしてみんないっしょじゃなきゃいけないという

ほら遅れているぞ
ほら進みすぎだ
はみだしたら切り捨てちゃうぞ
遅れたらもう脱落だ

時間が涙を流すのを
聞いたことがありますか
その涙は空間の裏側で
声をひそめて待っているのです
恋するひとのそのやわらかな指を