「武満徹を語る」レゾナンス

1 歌


2007.4.4

   小泉 武満さんの遺作が《エア》、つまり、「歌」。徹さんの作品は、
   全部、歌。さっき言ったようにハーモニーに、武満さんの特徴がある
   けれど、アンサンブルの曲はハーモニーを聴けば、すぐ武満作品とわ
   かります。メロディーは、歌。もっと歌いたい、もっと歌いたいとい
   っています。

  (『武満徹を語る15の証言』小学館/2007.4.2.発行
   「第2章 フルート奏者・小泉浩さんに聞く」より)

歌を忘れてしまった人は
世界の果てまで旅しなければなりません
そこで一本の樹に出会うでしょう
そこには一羽の鳥が巣をつくり
鉱物のような七色の声で
あなただけの歌を歌うでしょう

声に恋するあなたのために
媚薬をほんの少し用意して
夜の彼方に出かけましょう
そこには見えない声の人が腰掛けて
あなたに声を注ぐでしょう
決して忘れられない物語とともに

声と声が恋をして
その宇宙が生まれました
そこでは声はぜんぶ歌になり
世界はすべてがハーモニー
樹も海もその手もみんな
すべてが歌の織物になって踊るでしょう