《仮面舞踏会》
2014.7.15

私の顔は仮面であるか
ああそうだ
外すことのできない仮面だ
二つの穴から世界を見ているのだ
世界でないものとなって
混沌に穴は開けられ
仮面をつけて身を躍らせる

かつて世界は私だったか
ああそうだ
おのずからを捨て
みずからになった私は
地を歩み血を流し
世界に向かって立っている
空に向かって叫びながら

あなたの顔も仮面であるか
ああそうだ
その仮面も外すことはできない
二つの穴から私を見ているのだ
世界から遠く離れて
私の両手をとって踊るのだ
らったらった狂ったように躍るのだ

☆風遊戯《仮面舞踏会》ノート

◎夏なのでちょっとホラー気味、怪談風の風遊戯にしてみました。のっぺらぼうが、「こんな顔かい」とふりかえるように。ちょっと不気味な私とあなたの仮面舞踏会。どちらの顔もわからない。互いを知らずに、両手をとりあって躍る。今回は、ちょっとダークでニヒリスティックな感じでいってみました。

◎わたしたちは世界のなかで、ある意味ひとつの視線でしかない。そこから世界を見ている。世界は広がっているように見えるが、世界は私たちの視線の「点」に折りたたまれている。逆に言えば、その「点」が展開している。

◎仮面はペルソナ。ペルソナは人格でもある。人格は仮面のように私たちを躍らせている。ときにそれを外したくなるが、その仮面の下にはなにもない。仮面の二つの穴の中にあるのは闇ばかり。

◎混沌の話は、荘子から。混沌に穴を開けると死んでしまったという話から。ある意味で、わたしたちは穴をあけられた混沌のような存在だ。死者が踊っている。落語に「らくだ」という噺がある。死体をかかえて踊らせる噺。私たちはひとりひとりが自分の死体(もちろん生体でもあるのだけれど、ある意味同じこと)を抱えて踊っている存在だともいえるわけである。