《しらべ》
2014.5.30

いのちはしらべ
しらべのなかに
わたしはありて
あまねくみちて
いのちをつむぐ

はるははなのしらべ
なつはとりのしらべ
あきはつきのしらべ
ふゆはゆきのしらべ

きせつのしらべうたいつつ
わたしのしらべかきならし
いのちのめぐりくりかえし
ときのかなたにめぐりきて
せつなにうまれしにゆけば
ほしのひかりをみにうけて
しらべとともにそらにまう

しらべよしらべ
むねのおくから
ほとばしるもの
ときのかなたを
よびよせるもの
しらべとともに
わたしはいきる

☆風遊戯《しらべ》ノート

◎今回の《しらべ》の誘い水になったのは、岡潔のエッセイ「生命」。ちょうど文庫になった『春風夏雨』(角川ソフィア文庫)のなかにおさめられていたエッセイで、そのなかに「生命というのは、ひっきょうメロディーにほかならない。日本ふうにいえば、「しらべ」なのである」というところがありました。しかし、今回はとくに神秘学のエッセンスというほどでもなく、浮かんできたことばをつらつらと書きつけてみた感じ。たまには、こういうひらがな調も理屈っぽくなくていいかと。

◎あと、道元の和歌「春は花 夏ほととぎす 秋は月 冬雪さえて すずしかりけり」というのも季節のイメージの背景にあります。道元の和歌は49首伝わっていますが、これが最も有名な歌。「正法眼蔵」のイメージからすると、和歌の道元というのは意外な感じもするのですが、道元は、新古今集の歌人である九条家の慈円が大叔父ですし、後鳥羽院宮内卿らと親交を結んでいたというのもあって、歌を詠むことは近しかったようです。ちなみに、道元の和歌について関心をもったのは、松本章男『道元の和歌 - 春は花 夏ほととぎす 』(中公新書/2005)から。