《壁》 |
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2014.5.16 |
見えない壁の向こうで
見えないきみが
見つめているのは
見えないぼく
見えない壁に向かって
ぼくはパントマイムのように
おどけて踊ってみせる
そしてときおり
見えないきみにむかって
ひとさし指を向けたりもする
そして見えないきみも
ぼくにひとさし指を向ける
見えないぼくと
見えないきみが
見えないところで見つめ合う
見えない壁がある
超えることはできるのだろうか
記憶の壁
死の壁
宇宙の壁
そしてぼくときみの壁
ふと孫悟空の話を思い出す
この世の果てまで辿り着いたと思い
そこで見つけた大きな石に印をつける話
けれどそれは釈迦の手にすぎなかったという
釈迦の手は壁だったのだろうか
それとも悟空自身の壁だったのだろうか
壁はどこにあるのだろう
見えない壁がぼくの世界の壁をつくる
壁であるとさえ気づかないまま
気づいていても
超えられないという諦めで
壁がぼくを囲んでいるのか
それともぼくが壁をつくりだしているのか
ぼくは見えない壁に耳をあてて
見えないきみの声に耳をすませる
青空の向こうの
見えない星たちの物語を観ようとするように