《記憶の彼方》 |
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2014.4.27 |
忘れてゆく
そして忘れてしまったことさえ
忘れてしまったとき
私にはなにが残されているのだろう
私という現象は偏屈な記憶の集合体で
そのジグソーパズルのピースを
ひとつひとつなくしていくならば
やがて私は私でさえなくなっていくのか
それまで使っていた文字が
一文字ずつ使えなくなっていくように
言葉で組み立てられていた世界が次第に蝕まれ
やがて私という現象が灯らなくなるのだろうか
私であったもの
私であると思っていたもの
それがひとつひとつ失われ
中心に残される最後のピースさえも
なくなってしまうと想像せよ!
そこからしか
はじまらないものがある
なくなるはずのないものが
なくなってしまったときにこそ
うしなわれないなにか
私という現象の奥で
ピースを並べまた解体しているもの
光から閉ざされたとしても
光の不在をさえあらしめているもの
すべての拠り所をなくしてしまったときにこそ
その見えないものの源が顕れる
記憶と忘却の果てのカーテンコールで