《煩悩》 |
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2014.4.26 |
ひとりでいるにせよ
ふたりでいるにせよ
煩悩の花は乱れ咲く
煩悩はまるで
それと知らぬうちに血肉になった母語のように
避けようもなく
それとさえ知られぬままに
私たちの深みから立ち上がってくる
煩悩は私であるのか
その自問こそが
謎への道しるべとなる
どう転ぶか
そしてどう立ち上がるか
生きているということは
煩悩との遊戯から学ぶということだ
見えない戦場があり
私たちは結合双生児のような両義性の煩悩を
わが盟友として地を彷徨う
剣を振る私たちは
それがいったい何を斬つのかを自問し
戦うべきか戦いをさけるべきか
そのべきの往還を繰り返す
戦うことで得られる勝利も敗北も
戦わない迂遠のなかでの逡巡も
それらを真に生かすためには
あらゆる魔物と対峙しなければならない
自由と不自由に焼かれ
放縦と戒とに裂かれながら
肉を切らせて骨を斬とうとさえするが
その炎は魔物をますます巨大なものに変える
聖なるものにさえ姿を変幻する魔物に
やがて私たちは気づくのだ
その魔物は私たちそのものであることに
私たちの投げる光と影が
物語をスクリーンに映じていることに
ときに軽快に
ときに荘重に
静かな笑みで
あるいは狂騒のような高笑いで
私たちの前に現れる魔物とともに踊りながら
踊ることで私たちは導かれてゆく
戦いながら戦わない場所へ
光と影を映ずる源へと