《羽化》
2014.2.16


鳥のようにわたしは鳴く
空へ空へ空へ

地を歩き続けることに飽きて
羽ばたこうとするのか
空から大地に降り立ったことを思い出して
空が恋しいと思い鳴くのか

羽を育てるために
待ち続けた時が満ちる
羽化しようとするわたしの背中に
深い亀裂が入っていく

飛び立つ力をください!
わたしという器に
静かに注がれつづけた
いのちの水があふれ出すように
額の中にあったわたしという絵が
枠を取り払われて生きようとするように

けれどその祈りは
大地を歩くことで紡がれた歌
大地を歩くことでしか
歌えない歌だということを知らねばならない
そして飛び立つことは
わたしがわたしでないものに変わっていく
深い悲しみをともなうことを
知らなければならない

わたしに告げる声がする
みずからの真実の顔を見よ
隠されていた真実の顔を
それは怖気立つような醜い顔

声は告げる
おまえはみずからの叡智を研き
そのお前の醜い姿を
輝く光へと変えなければならない
これまでおまえを守ってきた大地は
もうおまえを守ってくれはしないのだから
そのかぎりない歩みとともに
おまえは羽ばたかねばならないのだ

鳥のようにわたしは鳴く
空へ空へ空へ
その声は喜びなのか
それとも深い悲しみの叫びなのか
わたしは両腕を大きく空に広げて
大空に向かって飛び立とうとする

 

☆風遊戯 《羽化》ノート

◎実は、今日はぼくの誕生日で、「今日の音楽」もこの日からということで、ビオラ・ダ・ガンバ演奏からチェロ演奏へ。その最初ということで、カザルスを紹介することにしました。

◎それで、今回のテーマは「羽化」ということで、シュタイナーが『いかにして超感覚的世界の認識を獲得するか』のなかで示唆している「境域の守護霊」のことを盛り込んでみました。

◎「境域の守護霊」に対するとき、秘儀参入者はそれまで知らずに自分を導いてきた叡智が、それまでのように自分を守ってくれはしないことを知らされます。そしてみずからの良き面、悪しき面それらすべてが現れてくるといいます。それまでは自分の内に担っていたものが、外からみずからに現れてくるというわけです。内なる隠された叡智が離れていく。

◎そして「境域の守護霊」は言う。「今、私がおまえの外に出てきたことによって、この隠された叡智もまたおまえから離れる。それはもはやおまえのことなど構おうとしないだろう。そして仕事をおまえ自身の手に委ねるだろう。しかしこれからも私が堕落することは許されない。私はますます完全な、偉大な存在にならなければならない。もし私が堕落するようなことにでもなれば、おまえも私と一緒に暗い奈落に引きずり込まれるだろう。ーーそうされたくないのなら、おまえ自身の叡智を研き、おまえから去っていったあの隠された叡智の課題を引き継がねばならない。」