《翻訳》
2014.1.23


空をどう訳せばいいのだろう
星は
樹は
海は
そしてあなたは

世界という書物を読むには
そこに書かれてある言葉を
自分の言葉に翻訳しなければならない

世界はどんな言葉で書かれているのだろう
それさえ知らないままに
ぼくは世界を翻訳しながら生きている
ときには世界に書かれていないかもしれないものさえ
翻訳したのだと信じこみながら

ぼくはどんな言葉で書かれているのだろう
問われないとき
ぼくはそれを知っているが
問われたとき
ぼくはそれを知らないで途方に暮れる
まるで時間のように

あなたはどんな言葉で書かれているのだろう
ぼくの言葉
あなたの言葉
それはどこまで訳すことができるのだろう
ぼくはあなたの言葉を追いかけ
乏しい自分の辞書を調べ続けるのだけれど
互いの辞書の言葉がかみあわないまま
空回りし捻れて行方を失ったりもする

天上に大きく広がる星空を見上げながら
足下で静かに息づいている大地をたしかめながら
それをあなたにどのように伝えたらいいだろう
そう問い続け
ぼくは言葉の迷路のなかを空しく歩く
沈黙よりも深くあなたに届く言葉を探して