風日誌


ドイツ・ルネッサンス/高橋巌/坂崎乙郎

ベートーヴェン「エロイカ」


2003.12.18

 

ルドルフ・シュタイナーの『内的霊的衝動の写しとしての美術史』第3講を昨日HPに登録。
yuccaの訳している途中でいろいろその内容についてきいていたのだけれど
第3講を読み通してみると、第1講、第2講にもまして興味深い。
また、「デューラー及びホルバインに至るドイツの彫刻と絵画」について
自分がほとんど知らないでいたのにあらためてのように気づく。
デューラーを中心としたドイツ・ルネッサンスについて
しばらくは自分なりの「エポック授業」をしてみることになると思う。
 
書店等を探してみても、イタリア・ルネサンスに比して
ドイツ・ルネッサンスについての資料はかなり少なく
あってもとても高価なものになるので
「エポック授業」のための資料としていつくか古書店をまわり
ちょっと古めではあるが、かつて開催された美術展のカタログなどを物色。
そうしたなかで、あらためて高橋巌さんの名前を見つけて、
たとえば高橋巌さんには『ヨーロッパの闇と光』などの著書があるように
その専門が美学だったのに思い至る。
 
たとえば、「ファブリ 世界名画集76 グリューネヴァルト(平凡社版)」(1972)の
解説は高橋巌さんが書かれている。
それから、同じく平凡社からでている
「世界名画全集7 ドイツ オランダ ルネサンスとその展開」(昭和35年刊)の
執筆者の中にも高橋巌さんの名前が見え、
グリューネヴァルトの「キリスト降誕」やデューラーの「キリストへの哀悼」、
アルトドルファーの「アレクサンドロス大王のイッソスの戦い」の
解説を書かれてる。
 
その「世界名画全集7」の執筆者には
坂崎乙郎さんの名前があってとても懐かしくなる。
坂崎乙郎さんは講談社現代新書にある
「ロマン派芸術の世界」「幻想芸術の世界」「夜の画家たち」など
大学に入学した頃読んでその世界にとても惹かれたのを思い出す。
yuccaといちばん最初に話すようになったきっかけになったのも
その「ロマン派芸術の世界」だった。
 
ところで先日来、ずっとベートーヴェンを集中的にきいている。
ぼくは以前なぜかこのベートーベンがどこか苦手だったのだけれど
このところそれがどんどん胸の奥にまで浸みてくるようになっている。
これもドイツならではの光と闇の世界の陰影への親近感と関連しているのかもしれない。
バッハの深みもそうした光と闇の陰影が深く影響しているのだろうという気がしている。
 
先日、第九についてこの日誌でふれたあと、
その合唱がEUの国歌に、というニュースを見た。
その歌詞はシラーの「歓喜によせる>の頌から
気に入ったところを選び出して使ったようだけれど
その内容はちょっとメーソン的なところがあったりする。
ちょっとばかりジョン・レノンの「イマジン」に近かったりもする。
 
調べてみると、このシラーの頌はフランス革命直前の1785年にドレスデンで
当時26歳のシラーが「自由によす」という題をつけようとしたものの
当時の官憲のきびしさもあって「自由」を「歓喜」にあらためたのだったとか。
 
今、ベートーヴェン・エポックのガイドとしているのは
吉田秀和の『覚書ベートーヴェン』と音楽之友社からでている
「作曲家別名曲解説ライブラリー3ベートーヴェン」だが、
主にきいているのはピアノ・ソナタ、交響曲、そして弦楽四重奏。
もともとクラシックファンとはほどとおかったぼくには
どれをきいても新鮮でときめいてしまう。
できればいろんな演奏で幅広くみいてみることのしたい。
 
交響曲はおりよく今年のベストアルバムになっていた
サイモン・ラトル&ウィーンフィルの全集の廉価版がでていたので
手元にあったフルトヴェングラーのものなどとくらべながらきいている。
ちょうど「合唱」のシラーの頌に影響したフランス革命の話などもでていたが、
今日はナポレオンに献呈しようとしたのがきっかけともいわれる
第3番<英雄>をきいてみることにする。
 
ベートーヴェンの弟子のフェルディナント・リースの手記が
「作曲家別名曲解説ライブラリー3ベートーヴェン」で紹介されている。
おもしろいので少し引いてみることにする。
けっこう有名な話なのだそうだが。
 
        ナポレオンが自分から皇帝に即位するという宣言を最初にベートーヴェンに
        知らせたのは私だった。ベートーヴェンは、これをきいて大変に怒り、「あ
        の男もまた平凡な人間に変わりはなかった。いまや全人類の権利を踏みにじ
        り、自分の野望を満足させようというのだろう。彼も自分以外すべての人間
        の上に立って専制者になりたいのだ」と叫んで、机のところにいそいでゆき、
        総譜の表紙をとると、上から下に半分に破き、机の上に投げつけた。こうし
        て表紙はもう一度書き直され、そこであらためて<シンフォニア・エロイカ>
        という題がつけられた。
 
それはともかく、とても意志と諦念のようなものが
烈しく伝わってくるような名曲である。
あまりにも有名すきるのかもしれないが、
ようやくぼくの胸のところにまでdurchdringenしてくるような
感動をもってきくことができるようになった。
ぼくにはとても新鮮で鮮烈に響いてくる。
 
 

 ■「風日誌」メニューに戻る
 ■「風遊戯」メニューに戻る
 ■神秘学遊戯団ホームページに戻る