風日誌


心理学化する社会

デヴィッド・ボウイ『リアリティ』


2003.10.18

 

斎藤環『心理学化する社会』(PHP/2003.10.16発行)を読む。
副題にあるように「なぜ、トラウマと癒やしが求められるのか」がテーマ。
 
著者は精神医学を専門としている。
「心理学者」ではない。
「精神分析家」でもない。
その違いが理解されていないと著者はいう。
 
そして、なぜ「心理学化」が急速に進んだのかを問う。
本書の主なテーマは、その「なぜ」を追いかけながら、
その潮流がいったいどこに向かうのか、が検討されている。
 
ちなみに、斎藤環にはこれまで、『文脈病』、『社会的ひきこもり』、
『若者のすべて』などの著者があって、
ラカンなどを機軸としながら、
「ひきこもり」をただ否定的にとらえる傾向などとは
一線を画した視点を与えてくれている。
 
ほんとうに、昨今のトラウマやらPTSDやら
カウンセリングやら癒やしやらのブームには
正直うんざり、というところだけれど、
うんざりばかりしてはいられないようだ。
やはり、昨今の『心理学化する社会』の現状のことを
しっかり観察しておく必要がありそうである。
 
シュタイナーには、精神分析批判の講義集である
『魂の隠れた深み/精神分析を超えて』(河出書房新社)や、
『心理学講義』(『精神科学と心理学』『サイコソフィー』など所収)などの
邦訳があるが、こうしたものを読み進めていくと、
昨今の『心理学化する社会』のようないわば集団幻想のような在り方とは
まったく異なった視点にふれて、正直ほっとさせられるところがある。
 
今日のBGMは、デヴィッド・ボウイの新譜『リアリティ』。
 
昨年の『ヒーザン』で復活をアピールしたデヴィッド・ボウイだが、
今回の『リアリティ』は、スコーンと抜けていて素晴らしい。
ぼくがデヴィッド・ボウイをはじめてきいた70年代初頭の
「スターマン」の頃のような輝きを感じる。
 
ライナーノートにボウイの今作についての
こんな言葉が紹介されているが、言い得ているかもしれないと思う。
 
        ジョン・レノンのロックン・ロールに対する言葉があるんだ。
        「言いたいことははっきり言え、そして韻を踏ませてバック
        ビートに乗せろ」これが今回のアルバムのすべてだね。
 
「リアリティ」あるな、
「心理学化する社会」とは違って。
 

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