デヴィッド・ボウイ『リアリティ』
斎藤環『心理学化する社会』(PHP/2003.10.16発行)を読む。 副題にあるように「なぜ、トラウマと癒やしが求められるのか」がテーマ。 著者は精神医学を専門としている。 「心理学者」ではない。 「精神分析家」でもない。 その違いが理解されていないと著者はいう。 そして、なぜ「心理学化」が急速に進んだのかを問う。 本書の主なテーマは、その「なぜ」を追いかけながら、 その潮流がいったいどこに向かうのか、が検討されている。 ちなみに、斎藤環にはこれまで、『文脈病』、『社会的ひきこもり』、 『若者のすべて』などの著者があって、 ラカンなどを機軸としながら、 「ひきこもり」をただ否定的にとらえる傾向などとは 一線を画した視点を与えてくれている。 ほんとうに、昨今のトラウマやらPTSDやら カウンセリングやら癒やしやらのブームには 正直うんざり、というところだけれど、 うんざりばかりしてはいられないようだ。 やはり、昨今の『心理学化する社会』の現状のことを しっかり観察しておく必要がありそうである。 シュタイナーには、精神分析批判の講義集である 『魂の隠れた深み/精神分析を超えて』(河出書房新社)や、 『心理学講義』(『精神科学と心理学』『サイコソフィー』など所収)などの 邦訳があるが、こうしたものを読み進めていくと、 昨今の『心理学化する社会』のようないわば集団幻想のような在り方とは まったく異なった視点にふれて、正直ほっとさせられるところがある。 今日のBGMは、デヴィッド・ボウイの新譜『リアリティ』。 昨年の『ヒーザン』で復活をアピールしたデヴィッド・ボウイだが、 今回の『リアリティ』は、スコーンと抜けていて素晴らしい。 ぼくがデヴィッド・ボウイをはじめてきいた70年代初頭の 「スターマン」の頃のような輝きを感じる。 ライナーノートにボウイの今作についての こんな言葉が紹介されているが、言い得ているかもしれないと思う。 ジョン・レノンのロックン・ロールに対する言葉があるんだ。 「言いたいことははっきり言え、そして韻を踏ませてバック ビートに乗せろ」これが今回のアルバムのすべてだね。 「リアリティ」あるな、 「心理学化する社会」とは違って。 |
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