風日誌


知ることの意味とカルマ的連関

clapton chronicles,the best of eric clapton


2003.08.02

 

昨日は仕事のつきあいで広島球場にいき、広島ー巨人戦を観戦。
広島球場は平和公園のすぐそば、
街から歩ける距離にあって会社からも歩いて15分ほどの距離。
とくにひいきの球団はないし
そもそも野球にそれほど興味も感じないのだけれど
とりあえず広島にいる関係で広島を応援することにする。
いっしょにいったうちの一人はばりばりの巨人ファンだけど
広島の応援席にいて松井のいない今年の巨人の
お金ばかりかかってまともなピッチャーの少ない惨状を嘆いていた。
もうひとりは前田をひいきにしているらしく
前田がホームランを打ったのをとてもよろこんでいた。
放送局のおさえていた席とあって一塁横のとてもいい席。
一塁を守る清原の太い姿などがかなりしっかりと見えていた。
そこそこ暑かったのでビールもとてもおいしかった。
 
保坂和志の『カンバセイション・ピース』のなかでも
横浜球場に横浜ベイスターズを応援に行くところを読み始めたところだった。
 
	野球はグラウンドにいる九人だけで戦っているわけではなくて、
	ファンも一緒に戦っていて、球場に集まったファンの意志を結集
	させて勝つと信じることができるのがファンで、私は関内駅で改
	札に向かう階段の途中から横浜ベイスターズの球団歌が構内放送
	で聞こえてくると心がときめきはじめ、早足で球場に向かって歩
	いているあいだにうれしさでいつもいつも顔がほころんでくるの
	だが…、
 
ここでも横浜は中日に勝ったことになっているが
昨日も広島は巨人に接戦で勝利。
日々それなりにシンクロするところがあっておもしろい。
 
とはいえやはりこうして球場で観戦するというのは
来てみればそれなりに楽しめはするのだけれど
やはりわざわざこういうところに来たいという気持ちにはならない。
保坂和志は横浜ベイスターズのファンで
村上春樹はヤクルトスワローズのファンだというが
ぼくにはそういう部分がなくて
そういうファンの意識についてはよくわからないのだけれど
どちらがどうということでもないのだろう。
 
保坂和志の第二エッセイ集『言葉の外へ』(河出書房新社)の
いちばんさいしょに、「知りたい欲求と知ることの意味」というのがあって
保坂和志は毎年プロ野球が始まる時期になると野球関連の本を買うという。
「選手名鑑」とか「プロ野球パーフェクトデータ選手名鑑」とか、
それから「プロ野球全記録」とか。
で、こう述べている。
 
	それを知ることにどういう意味があるのか?と問う人がいるだろう。
	それは私にもわからない。というか、たぶん意味なんかないだろう。
	しかし意味がすぐに説明できることなんてろくなものではない。
 
なるほど。
野球にかぎらずその点はとても大事なのかもしれない。
たしかに「意味がすぐに説明できることなんてろくなものではない」なあと思う。
答えがすぐにでてくるとか、すでに解答集が用意されていることなんかも、
たぶん「ろくなものではない」のかもしれないし。
 
なぜその人が好きなのか、とかいうことも
説明できることというのはたいしたことではない。
もちろんその人が嫌いだというのも同じで、
よくよく考えてみるとなぜなのだか
ほんとうのところはよくわからなかったりもする。
 
シュタイナーは「人間の外面は、その人物が前世でどのような道徳的態度、
どのような精神的態度を取っていたかのイメージを与えます」と述べているが
(「歴史のなかのカルマ的連関」イザラ書房)
人のちょっとした動作や癖のようなものというのはけっこう深いものがあって
ひょっとしたらそういうところで人と人との関係とかいうのも
好感が持てるとかそうでないとかでてくるのかもしれないとか思う。
 
保坂和志の小説を読んでいると
登場人物のそうした動作とか癖のようなものがよく描かれていて
それを包み込むようにいろんな風景がそこで描かれていることが多いように感じる。
人を描くというのはおそらくその人の思想がどうだこうだとかいうよりも
そうした側面のほうがなにか大事なところを伝えることができるのだろう。
もちろんその意味をあれこれ説明しないほうがいいということもいえるのかもしれない。
 
今日のBGMはエリック・クラプトンのベストアルバム
clapton chronicles,the best of eric clapton.
クラプトンのブルース系のアルバムがふだんはよかったりするけれど
やっと夏らしくなったところなので、
こういうポップで軽めの曲などがふんだんに入った
ヒット曲集的なもののほうが気分として近いような気がする。

 

 

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