風のメモランダム

ヘッセ/ダ・ヴィンチ・コード/19才/ハナダイロ/BCJ/蟲師


2006.5.25.Thu

■ヘッセ『シッダールタ』『ガラス玉演戯』

ヘッセの『シッダールタ』『ガラス玉演戯』を読む。
きっかけは、『シッダールタ』が単行本として再訳されたのがきっかけ。
学生時代は、ヘッセとかいうのはどうも敬遠していたところがあったが、
初期はともかく後期のヘッセはいちど目を通しておきたいと思っていた。
最近になってようやく、いろんな古典のようになっているものを
素直に読んでみようと思うようになった。
歳はとってみるものである。
『シッダールタ』も『ガラス玉演戯』も学生の頃購入していた文庫本。
すでに黄ばんで読みにくくなっている。

『シッダールタ』も『ガラス玉演戯』も、
ある意味では、聖と俗とを切り離さないで
なんとかその「不二」を達成することができないだろうか、
というテーマとしてとらえることもできるかもしれない。

シュタイナーはその『第五福音書』のなかで、
グノーシス的な傾向をもっていたエッセネ派について
ルシファー的なもの、アーリマン的なものを排除することで
その排除されたものがその「門」の外で跳梁するという内容のことを述べていた。

もちろん悪を肯定するというのでは元も子もないのだけれど、
それを排除してしまうと、善はまさに独善化し、悪は救済されなくなる。
それをみずからの内的な問題としてもしっかり世界観としてもっておく必要が あるだろう。

さて、『ガラス玉演戯』にもつながっている作品である
『光のふるさとへ/東方への旅』も手元にあるので読んでみようと思っている。
(そういえば、ずっと以前、舟沢さんが書かれてましたね)
『ガラス玉演戯』そうだが、どうもこういうとっつきにくい作品は
文庫が増刷されなくなったりそもそも刊行されなかったりするので残念。

■ダ・ヴィンチ・コード

映画『ダ・ヴィンチ・コード』が話題になっているが、
キリスト教批判としてはある部分こうしたダ・ヴィンチ・コード的なものも
それなりに意味はあるような気もするが、
気をつけなければならないのは、神秘学的にみて、
いまさらイエスの血統云々という議論はナンセンスだし、
問題をすり替えてしまう危険性もあるように思う。
多くの読者は問題がどこにあるのかを理解できないだろうから。
中途半端な正しさについてはシュタイナーも再三示唆していたが
ある意味その典型となっているところもあるだろう。

■スガシカオ『19才』

そういえば、手もとにあるヘッセの『ガラス玉演戯』の発行年をみると
そのころぼくは19才だったようである。
で、スガシカオの『19才』という新譜をきく。

たしかに、19才というのは十分クサイ歳であって、
そのころのことを思うと恥ずかしさばかりが思い出されてしまう。
とはいえ、それからどれほど歩を進めることができているか疑問。
それから数十年ぼくはいったい何をしていたのか、
そのころが芋虫だったとしたらその後ぼくは蛹になって、
ひょっとしたらまだ蛹のままで羽化できないままでいるのかもしれない。
とかいろんなことを考えてしまう。

■元ちとせ『ハナダイロ』

音楽の話題ついでに、先日発売されたばかりの元ちとせ『ハナダイロ』をきいてみる。
そういえば、元ちとせや平原綾香などけっこう面白いボーカリストが
マイペース風に活躍しているのはなんだかいい感じがする。

ぼくは70年代を音楽漬けで過ごした後、ジャズを通過し、
その後90年代にはそういえばクラシックを中心にして
POP系をあまり聞きたくなくなった蛹の時期があり、
2000年を過ぎた頃からまたぼちぼちいろいろ物色しはじめるようになった。
たしかに酷いのも夥しいのだけれど、なかにはイケルのもあって少しだけ楽しみ。
しかし90年代は聞くもの聞くもの酷かったなあという印象があまりにも強かった。
ぼく自身がその方面ではとくにある種の蛹状態が強かったのもあるかもしれないが。

■BCJ・バッハカンタータ全曲集第31巻

これもついでだけれど、バッハコレギウムジャパンの
バッハカンタータ全曲シリーズの第31巻が出た。
いつもながら、輸入盤でCDショップに事前に予約しておくことにしている。
このシリーズもようやく半分くらいらしいが、
毎回とてもうれしく刺激的に聞くことができる。
ぼくの90年代は、POP系などに関してはきわめて蛹状態だったけれど、
別の側面では、ぼくのきわめて粗雑な耳をじっくり育ててくれた時期でもあっ たようだ。
そのひとつがこのバッハのカンターターでもあった。
このシリーズが完結するのはまだ10年ほどかかりそうだが、
こういう息の長い楽しみを味わえるというのはとてもうれしい。

■『蟲師』BSフジで放送再開

ついでの情報。
フジ系の深夜/早朝で第20話まで放送され3月頃終了していた『蟲師』が
BSフジで再開され、続編の第21話、第22話がすでに放送(深夜で)されている。
残念ながら家では視聴できないので、放送データを入手して見ている。
お好きな方は、ぜひ。