風のメモランダム

はじめてのやのあきこ/梨木香歩『春になったら苺を摘みに』


2006.3.12.Sun.

■はじめてのやのあきこ

槇原敬之、小田和正、YUKI、井上陽水、忌野清志郎、上原ひろみを
ゲストに迎えたコラボレーションアルバムが発売された。
矢野顕子ファンにとってはやはり必聴盤だろう。

「そこのアイロンに告ぐ」で聴ける上原ひろみのピアノなど、
矢野顕子の声とキレのあるピアノのノリが絶妙である。
どのコラボも楽しいが、今回とくになんだかちょっと意外なところで
うれしい気持ちになったのは、YUKIとの「ごはんができたよ」だった。
この歌詞、なかなか泣かせる。
そういえばこういうところもあるんだ。
なかなか。

義なる者の上にも
不義なる者の上にも
静かに夜は来る みんなの上に来る
いい人の上にも
悪い人の上にも
静かに夜は来る みんなの上に来る

太陽があまねく照らすというのでなく、
夜が来る、というのだ。
静かに。

■梨木香歩『春になったら苺を摘みに』

梨木香歩の第一エッセイ集が新潮文庫になる。
そういえば、このエッセイ集だけはまだ目を通していなかった。

最近では、かならず読みたいという女性作家といえば、
詩人の小池昌代とこの梨木香歩だろうと思う。
男性だったら、いしいしんじと吉田篤弘。

この4人に共通するのは、決して声高ではないというところ。
太陽が燦々と照っているというのではなく、
静かに夜が降りてくるのをじっと見つめている感じのところ。
そしてそこにしっかりと流れている思考の輝きがありながら、
それが、抑えられてはいるがとても豊かな感情で満たされている。
もちろん、喧しく愚かな世論をまともに浴びないだけの知恵をしっかり内臓している。