■堀江敏幸『もののはずみ』(角川書店) 夏頃でていたものだけれど、年末年始の遊びに読んでいる。 「もののはずみ」で集めてしまうものなどの話だけれど、 本書のテーマとしては、「もの」の「はずみ」らしい。 集めてしまうものというのは… こんながらくたばかり集めていったい何の役に立つのか?社会的には、 もちろんなんの役にも立ちはしない。手に入れた「もの」をなにかに 用立てようなどと考えた時点で、真の「物心」を失ったも同然だから である。ただし、買った当人には精神衛生上のうえでたいへんよい効 果があるにはちがいなくて… だけれど、そういう「もの」たちを愛でるというのは、 「もの」をたんなる「物質」として規定することをさせない。 つまり、「もの」を「はずませる」で、 ある意味、「物の怪」にしてしまうことにもなりえるだろう。 それはともかく、 ひとつひとつの「もの」が、思いがけない言葉と隣り合って、子どもたちの 胸ではずむ。もののはずみとは、そんなふうに世界をひろげていくための、 大切な力でもあるのだ。 なんか、世の中「役に立つ」ものばかりだと息が詰まってしまう。 子どものころは、というのは大人が使う逃げ口上のひとで、 ぼくなどはいまになってもおなじように、無駄に見えるものが大好きなのだ。 とくに、こうした仕事のことを短い間でも忘れることのできる時期には、 しこたま無駄を重ねようと言う衝動に身を震わせることになる。 ■シュタイナー『エーテル界へのキリストの出現』(アルテ/西川隆範訳) シュタイナーのキリスト論での必読書がようやく訳出された。 内容は、yuccaからいろいろきいていたが、 実際に内容を確認できるのはうれしい。 しかし、西川隆範氏の訳は(最近のほかの訳書もそうだが)、 なんだかピンとこないところがあったりして残念。 自我を個我と訳したり、Geistをほとんど精神と訳すのはあきらめるにしても、 おそらくsollen(英語でいうshould)の訳だと思うのだけれど、 「〜べきです」という訳などに機械的に訳されているものがあるようで、 なんだか日本語として違和感のあるところがあって読みにくい。 ■シュタイナー『色彩の本質』(イザラ書房) これまででていた『色彩の本質』と『色彩の秘密』をあわせて一冊にしたもの。 まだ未読の方は必読書だと思われる。 すでにもっている方は(ぼくのばあいもそうだが) 若干訳の修正はあるものの、買わなくてもいいかもしれないけれど。 |
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