風のメモランダム

 

もののはずみ/シュタイナーの翻訳新刊など


2005.12.28.Wed.

■堀江敏幸『もののはずみ』(角川書店)
 
夏頃でていたものだけれど、年末年始の遊びに読んでいる。
「もののはずみ」で集めてしまうものなどの話だけれど、
本書のテーマとしては、「もの」の「はずみ」らしい。
 
集めてしまうものというのは…
 
	こんながらくたばかり集めていったい何の役に立つのか?社会的には、
	もちろんなんの役にも立ちはしない。手に入れた「もの」をなにかに
	用立てようなどと考えた時点で、真の「物心」を失ったも同然だから
	である。ただし、買った当人には精神衛生上のうえでたいへんよい効
	果があるにはちがいなくて…
 
だけれど、そういう「もの」たちを愛でるというのは、
「もの」をたんなる「物質」として規定することをさせない。
つまり、「もの」を「はずませる」で、
ある意味、「物の怪」にしてしまうことにもなりえるだろう。
それはともかく、
 
	ひとつひとつの「もの」が、思いがけない言葉と隣り合って、子どもたちの
	胸ではずむ。もののはずみとは、そんなふうに世界をひろげていくための、
	大切な力でもあるのだ。
 
なんか、世の中「役に立つ」ものばかりだと息が詰まってしまう。
子どものころは、というのは大人が使う逃げ口上のひとで、
ぼくなどはいまになってもおなじように、無駄に見えるものが大好きなのだ。
 
とくに、こうした仕事のことを短い間でも忘れることのできる時期には、
しこたま無駄を重ねようと言う衝動に身を震わせることになる。
 
■シュタイナー『エーテル界へのキリストの出現』(アルテ/西川隆範訳)
 
シュタイナーのキリスト論での必読書がようやく訳出された。
内容は、yuccaからいろいろきいていたが、
実際に内容を確認できるのはうれしい。
 
しかし、西川隆範氏の訳は(最近のほかの訳書もそうだが)、
なんだかピンとこないところがあったりして残念。
自我を個我と訳したり、Geistをほとんど精神と訳すのはあきらめるにしても、
おそらくsollen(英語でいうshould)の訳だと思うのだけれど、
「〜べきです」という訳などに機械的に訳されているものがあるようで、
なんだか日本語として違和感のあるところがあって読みにくい。
 
■シュタイナー『色彩の本質』(イザラ書房)
 
これまででていた『色彩の本質』と『色彩の秘密』をあわせて一冊にしたもの。
まだ未読の方は必読書だと思われる。
すでにもっている方は(ぼくのばあいもそうだが)
若干訳の修正はあるものの、買わなくてもいいかもしれないけれど。
 
 

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