風のメモランダム

 

漆原友紀『蟲師』のアニメ化/吉田篤弘『78』


2005.12.15.Thu.

■漆原友紀『蟲師』のアニメ化
 
漆原友紀の漫画『蟲師』がテレビアニメで放映されている。
残念ながら、リアルタイムでテレビを見ることはできないでいるのだけれど、
なんとかたぶん最新であろう第8話までの映像記録を入手することができた。
 
おもったよりも、暗い感じではなく、
テーマソングもある種の軽みがあって、
しかも原作の感じをよく演出できている。
 
アニメというと、
最近では、ディズニーなどが
CGアニメなどを手がけていたりするが、
どうもCGだけでつくられたものには
いまひとつどこか感情移入しきれないところがある。
あの3Dの動きや立体面に貼り付けられた模様のつるりとしか感じなどが
むしろ仇になっているような気もする。
ぼくはどうもゲームとかやる気にならないから
そういう感じに親和性がないということかもしれない。
 
比較的最近のアニメでいうと
「イノセンス」なんかよくできていて、
思わず息をのんでしまう映像がたくさんあって素晴らしかった。
やはり、「コドモダマシ」かそうでないか、の違いということかもしれない。
でも、だまされる「コドモ」ってどうなんだろ。
 
■吉田篤弘『78』
 
吉田篤弘の「お話」があいついて新刊ででている。
吉田篤弘の紡ぎ出すお話は、
ことさらなドラマチックさは皆無だけれど、
とても静かでやさしい語り口が
個人的にとっても気に入っている。
 
『78』は、かつてのSPレコードの回転数で、
いろんな物語がその「78」ということから
さまざまに不思議な響きあいをしていく長編。
 
ぼくがいちばん最初に手に入れたステレオセットには、
33回転と45回転のほかにも78回転がついていて、
そんなにかける機会はなかったものの、
古い古いレコードがくるくると高速で回って
そこから音がでてくるのを不思議に感じていたことを思い出す。
もちろん、33回転と45回転のくるくるから
音がたちのぼってくるのも不思議に思っていたのだけれど、
あの高速回転はめまいがするようだった。
高速回転であるにもかかわらず
そこからでてくる音が
その高速と矛盾するような古めかしさだったからでもある。
 
しかしあの、レコードをかけるという
時間のながれというのはよかったなと思う。
今の、データ化されたi-Podの世界も便利でいいのだけれど、
レコードをふき、その回転をながめながらきく音楽の時間は、
i-Podできく時間の流れとずいぶん違ってきているように感じる。
 
そういえば、先日新刊ででたスペンサーシリーズにも
yuccaの話では、i-Podがでていたらしい。
ハードボイルドの世界もデジタル化の波は無縁ではないらしい。
もちろん、携帯電話も必須アイテムだ。
 
だからこそ、こういう『78』の世界が、
物語として静かに成立することに
ノスタルジックな感情が刺激されるということでもあるのだろう。
 
 

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