音は消える。ちょうどインドの砂絵のように。風が跡形もなく
痕跡を消し去る。だが、その不可視の痕跡は、何も無かった前と
同じではない。音もそうだ。聴かれ、発音され、そして消える。
しかし消えることで、音は、より確かな実在として、再び、聴き
出されるのだ。
(ーー「「消える音」を聴く」『遠い呼び声の彼方へ』)
音を聴くということ
それはすでにそこから消え去っている音を
召還するということである
語るということが
すでにそこから消え去り続ける言葉を
私とあなたのあいだで
リ・プレゼントすることであるように
そして私という存在が
つねに因果交流電燈のように刹那滅しながら
たしかに灯りつづけているように
私は召還する
音を
言葉を
私を
そして世界を
世界よあれ!
すると
世界がそこにある |