風のDiary
2010.12.25.Sat.
ニルスのふしぎな旅

これまでアニメのタイトルくらいのことしか知らないでいたが、
いま、『ニルスのふしぎな旅』(偕成社文庫・全4巻)を読んでいる。
作者は、スウェーデン人のセルマ=ラーゲルレーヴ。
女性としてはじめてノーベル文学賞を授与されているそうだ。

原題は、「ニルス=ホルゲルソンのふしぎなスウェーデン旅行」。
たしかに「スウェーデン旅行」としたほうが、内容をよく表現している。
この作品は、スウェーデン教育会から、
スウェーデンの地理や歴史を十歳前後の子供たちに
わかりやすく知ってもらうための読み物を書いてもらいたいという要望があり、
それにこたえて書かれたものだそうだ。

だから、さまざまな自然や動物たち、人々のくらし、
鉱山のことなどまでがしっかりと描かれていて、
読んでいると、ニルスの話なのかスウェーデン紀行なのか・・・
といった感じにさえなって、むしろそれがとても楽しく読めるところだともいえる。

これがニルスの旅のお話だけだったとすれば、
この全4巻というのはちょっと長すぎて途中で飽きてしまいかねないところだけれど、
スウェーデン紀行になっているために、すらすらと興味深く読めてしまう。
鳥たちの話もたくさんでてくるので、そこらへんも大変うれしい。

テレビアニメのほうもまったく見たことがなかったので、
レンタルビデオで観てみることにしたが、
悪くはないけれど、「スウェーデン紀行」としてのの広がりのほうが少なく、
原作を読んだあと観ると少しがっかりしてしまう。
(アニメとして悪くはないと思うのだけれど)

ところで、テレビアニメの「いつまでも友だち」という主題歌は、
なつかしい声だと思ったら、
ザ・タイガースのメンバーだった加橋かつみ(とっぽ)が歌っている。

それがきっかけでネットで調べてみたところ、
ザ・タイガースの解散をめぐるいざこざ(ナベプロ)などのことを知った。
解散後、メンバーの「瞳みのる」(ピー)は、芸能界を完全に引退し、
定時制を経て慶応大学文学部で中国文学を学び、
中国語の研究を続け、中国語関係の参考書なども書いていたりもする。
どんな環境にいても、ぶれないで自分を見失わないでいられる人がいる。

そういえば、ザ・フォーク・クルセダーズだった北山修も、
精神分析家・心理療法家でもあり、この3月定年退職とかいうことで
『最後の授業』とかいう著書を出していたりもする。
しかし皮肉なことに、加藤和彦は鬱病で自殺してしまうことに。

「正気」で生き続けるためには、
おそらく、みずからの「狂気」に向き合うことのできるだけの
平静な「観」というのが必要なのだろう。
みずからの「狂気」から目をそらせてしまったときに、
それは容赦なくひとを錯乱させてしまうのかもしれない。
その「狂気」は「悪」にも似ていたりする。