2013.8.26のmemo

☆アカタテハ

ルリタテハが「青い提督」なら、こちらは「インドの赤い提督」(英名 Indian Red Admiral)、アカタテハ(Vanessa indica)。どちらも珍しい種類ではないけれど、きのうはルリタテハに続いて出現・・。夕陽を浴びてオレンジ色が鮮やか、裏面のほんの少しの青も印象深い(撮影:KAZE)。ヨーロッパ、北米などで見られるよく似た種類は、Vanessa atalanta、ドイツ語でも提督(Admiral)。このヨーロッパ産アカタテハは、蝶を愛したヘルマン・ヘッセの作品にも登場しているようで、とくに、『晩夏の蝶』("Schmetterlinge im Spaetsommer")という詩では、列挙される蝶たちの最初を飾っています(ヘルマン・ヘッセ/V.ミヒェルス編 岡田朝雄訳『蝶』岩波書店 訳ではオオアカタテハ)。ちょうど季節もぴったりなので少し引用(74−75頁)。赤〜橙〜黄系列の色合いの蝶たちが歌われています。

       晩夏の蝶
    
    たくさんの蝶たちが飛びかう季節がやってきた
    遅咲きのフロックスの香りに酔って蝶はゆるやかに舞っている
    蝶たちは音もなく青い空から浮かんでくる
    オオアカタテハ コヒオドシ キアゲハ
    ミドリヒョウモンに ギンボシヒョウモン
    臆病なホウジャク 赤いヒトリガ   
    キベリタテハに ヒメアカタテハ
    色も豪華に 毛皮やビロードの衣装を着て  
    宝石のように幻光を放ちながら悠然と滑空する
    はなやかに 悲しげに 黙々として 酔いしれて
    滅びてしまったお伽の国からやってきた

    ここではよそ者だが まだ蜜の露にぬれて
    楽園のようなアルカディアの牧場から
    東の国からやってきた いのち短い客
    その国はわたしたちが夢に見た 失われた故郷
    その国の霊の使者をわたしたちは信ずる
    より高貴な存在の愛らしいあかしとして

    すべての美しいもの 亡びゆくものの象徴
    あまりにもか弱いもの 感じやすいものの象徴
    年老いた夏の王の祝宴に招かれた
    憂鬱な 黄金に飾られた客!