シュタイナーノート174
シュタイナー医学に関する参照文献等概観
2013.4.27

シュタイナーの医学に関するイタ・ヴェークマンとの共著『アントロポゾフィー医学の本質』(GA27)が、翻訳刊行された。原題は「霊学(精神科学)的認識による医術拡充の基礎」。ようやくという感じである。これをきっかけに、シュタイナー関係でも、日本ではまだ認知度の極端に低いであろう医学関連に目が向いていけばいいと思っている。

◎シュタイナー&イタ・ヴェークマン
 『アントロポゾフィー医学の本質』(水声社/2013.4.25)

シュタイナーの霊学(精神科学)のなかでもっとも重要なものだといえるのは、この医学とそして農学に関するものではないかと考えている。この両者は、宇宙の中での人間と自然に関してほかではまったく得ることのできない認識を示唆するものである。
そのもっとも総合的な示唆としては、上記の共著とそれよりもトータルな宇宙観のなかでの連続講義としての『精神科学と医学』(GA312)が最重要であるといっていいのではないだろうか。
その『精神科学と医学』をyuccaが翻訳してトポスのサイトに掲載したのは、もう15年ほど前のことになる。シュタイナーの霊学(精神科学)のなかではおそらくもっとも理解の難しい、つまりはシュタイナーをかなり理解していないとほとんどとりつく島がないような講義で、yuccaが毎月1講ずつ、まさに骨身を削るようにして訳していたことを今もよく覚えている。翻訳ができてきてそれを読むぼくのほうも、読みながら体がよじれるほどのむずかしさを感じるばかりだった。体がよじれるというのは、まさにそのとおりで、霊学のなかでもっとも秘儀的なのは、自然や物質に関する内容だといえるわけで、ある意味、通常の魂的な示唆と比べても、まさに全身で理解しようとする姿勢が求められるのだと思う。農学に関しても同様であるが(内容はかなり共通性がある)、人体に関することとなるとなおのことさまざまな要素が加わってきてなまじな難しさではない。いわば、精神と物質の統一理論のようなものなのだ。
これまでに何度も読み返してきているが、ようやく最近になって腑に落ちるようになった内容もずいぶんある。もちろん、まだぜんぜんわからないところもたくさんある。
サイトにpdfとしては縦書きの二段組みの翻訳を掲載していたが、最近、もう少し読みやすくしようと思い、横書きのファイルにして掲載し、その際に目を通してみたが、あいかわらず腰を入れて読まないとなかなか思考がついていかない。

さて、そうしたシュタイナーの医学に関するその他の基本資料(講義)としては、全集のなかで以下のGA312~319であるので、ご紹介しておきたい。

・『精神科学と医学』(GA312)*トポスのHPに全20講を掲載(yucca訳)
・『治療法の精神科学的観点』(GA313)
・『精神科学を土台とした生理学と治療法』(GA314)
・『治療オイリュトミー』(GA315)
・『医学の深化のための瞑想的考察と指導』(GA316)
・『治療教育講義』(GA317)*「ちくま学芸文庫」(高橋巌訳)
・『医師と牧師の協力/牧師-医学者講座』(GA318)
・『人智学的人間認識と医学』(GA319)

その他にも医学そのものに関する連続講義ではないものの、医学に関連した講義で日本語で読めるものもある。

・『オカルト生理学』(GA128)*「ちくま学芸文庫」(高橋巌訳)
・「創造し、造形し、形成する宇宙言語の協和音としての人間」*トポスのHPに掲載(yucca訳) (『シュタイナー宇宙的人間論』春秋社/高橋巌訳もあり)
 *この連続講義「宇宙言語の協和音としての人間」は、『精神科学と医学』に続いて読むことで理解を深めることができる。

このほかに、シュタイナーの医学関連の基本資料として日本語で読めるもの(手元にあるもののみ)もいろいろあるので、ご紹介しておきたい。

・シュタイナー『医学は霊学から何を得ることができるか』(中村正明訳/水声社2006.11.20)
・シュタイナー『シュタイナー<からだの不思議>を語る』(イザラ書房/西川隆範訳・中谷美恵子監修 2010.6.5)
・シュタイナー『病気と治療』(西川隆範訳/イザラ書房 1992.5.25)
・シュタイナー『人智学から見た家庭の医学』(西川隆範訳/風濤社 2003.9.30)
・L.F.C.メース『シュタイナー医学原論』(平凡社/佐藤公俊訳 2000.6.21)
・マイケル・エバンズ/イアン・ロッジャー『シュタイナー医学入門』(塚田幸三訳/群青社 2005.5.10)
・ミヒャエラ・グレックラー『医療と教育を結ぶシュタイナー教育』(塚田幸三訳/群青社 2006.10.20)
・大住祐子『シュタイナーに<看護>を学ぶ/世界観とその実践』(春秋社/2000.7.31)
・リタ・ルロア『時代病としての癌の克服』(高橋弘子+高橋明男訳/水声社 2006.11.20)

トポスのサイトで読める医学関係の翻訳文献をご紹介しておきます。
・『精神科学と医学』(GA312)(yucca訳)

◎pdfファイル
http://steiner.3zoku.com/~steiner/novalisnova/steiner/pdf/medizin.pdf

◎目次
http://steiner.3zoku.com/~steiner/novalisnova/steiner/medizin/Medizin.html

さらに、『精神科学と医学』の後に読むことをおすすめしたい連続講義。

・「創造し、造形し、形成する宇宙言語の協和音としての人間」(yucca訳)

◎pdfファイル
http://steiner.3zoku.com/~steiner/novalisnova/steiner/pdf/zusammenklang.pdf

◎目次
http://steiner.3zoku.com/~steiner/novalisnova/steiner/zusammenklang/klang.html