いわゆる《労働者(アルバイター)講義集》は、シュタイナーの講義集のなかでも特殊な位置を占め、特定のテーマのための完結した連続講義でもなければ、特定の聴衆のための講義でもない。これらの百以上の講義は、ゲーテアヌム建築に携わった労働者たちから午前の休憩時に出された質問に基づいている。シュタイナーは、参加者グループからその都度自由に寄せられた質問とテーマを引き受けた。これらがいかに多岐にわたるものであったか、以下に挙げられた8巻の内容項目の抜粋を見るだけでもあきらかであろう。とりわけ特徴的なのは、これらの講義が発する新鮮さと直裁さである。これによってこれらの講義は、日々の人生問題と純粋に霊的な内容とをつなぐ橋でもあることが示される。これは人智学の研究成果へのーー言葉の真の意味でのーー《ポピュラーな》導入とみなされてよい。
■GA347 体、魂、霊による人間の本質の認識/以前の地球の状態について
■GA348 健康と病気について/精神科学的感覚論の基礎
■GA349 人間と地球の生命/キリスト教の本質について
■GA350 宇宙と人間存在のなかのリズム/いかにして霊的世界の観照に至るか
■GA351 人間と宇宙/自然のなかの霊の働き/蜜蜂の本性について
■GA352 精神科学的に考察した自然と人間
■GA353 人類の歴史と諸文化民族の世界観
■GA354 宇宙と人間の創造/地上生活と星々の働き
■GA347
体、魂、霊による人間の本質の認識
以前の地球の状態について
Die Erkenntnis des Menschenwesens nach Leib, Seele
nud Geist. Ueber fruehe Erdzustaende
第1巻 10回の講義 1922年8月2日〜9月30日 ドルナハ
●内容(抜粋)
・言語の発生について。
・人間の生命体。
・宇宙との関係における人間。形成と解体。
・体、魂、霊による人間の本質の認識。
脳と思考。感覚器官としての肝臓。
・内部器官の知覚と思考。
・物理的ー物質的、および霊的ー魂的に見た栄養摂取経過。
・以前の地球の状態について:
I. (レムリア):
泥と火の大気/竜鳥、イクチオサウルス、プレシオサウルス/
鳥、草食動物とメガテリウム(ナマケモノ)
II. :
カメ、ワニ、動物の治癒本能/酸素と炭素/植物と森/卵状態における地球/
ファンタジーと成長力を活発にする月/最も初期の地球。月の放出以前の地球/
レムリアにおけるアダム・カドモン
■GA348
健康と病気について
精神科学的感覚論の基礎
Ueber Gesundheit und Krankheit
Grundlagen einer geisteswissenschaftlichen Sinneslehre
第2巻 18回の講義 1922年10月19日〜1923年2月10日 ドルナハ
●内容(抜粋)
・いろいろな年代における病気。
・人間の耳の形成。鷲、獅子、雄牛、人。
・甲状腺とホルモンについて。
・眼。髪の色。
・鼻。臭覚と味覚。
・呼吸プロセスにおける魂の生活。
・私たちはどうやって病気にかかるか。
流感。枯草熱。精神病。
・熱。衰弱。妊娠。
・脳と思考。
・アルコールの人間への作用。
・太陽作用としての知力。
ビーバーとスズメバチの建造物について。
・ニコチンの作用。菜食と動物性の食物。アブサンの嗜好。
双子の誕生。
・呼吸と血液循環の関係。
・惑星と人間の関係と治癒作用。
*イザラ書房の『健康と病気』のなかの「酒とタバコ」、
『病気と治療』のなかの「病気の原因」(いずれも西川隆範訳)は、
この巻から訳出されています。
■GA349
人間と地球の生命
キリスト教の本質について
Vom Leben des Menschen und der Erde
Ueber das Wesen des Christentums
第3巻 13回の講義 1923年2月17日〜5月9日 ドルナハ
●内容(抜粋)
・過去と未来の地球の生命について。
人間の本性における治癒力について。
・夕焼けと朝焼け、そして空の青における色彩論の二つの基本法則。
・コペルニクス、ラヴォワジェ。
・眠りと死における人間の生命。
・物質体、エーテル体、アストラル体、自我への人間の本質の分化。
・夢、死と再生。
・なぜ以前の地上生活を思い出せないのか。
・眠りと目覚め。死後の生活。キリスト存在。ふたりの少年イエス。
・精神科学的天文学の基礎。
・人間との関係におけるキリスト、アーリマン、ルツィファーの本質
について。
・キリストの死、復活、昇天について。
*この巻の講義のうち、1923年5月7日の講義「人間との関係における
キリスト、アーリマン、ルツィファーの本質」の邦訳は、
『悪の秘儀』(イザラ書房、松浦賢訳)の第1章です。
■GA350
宇宙と人間存在のなかのリズム
いかにして霊的世界の観照に至るか
Rhythmen im Kosmos und im Menschenwesen
Wie kommt man zum Schauen der geistigen Welt?
第4巻 16回の講義 1923年5月30日〜9月22日 ドルナハ
●内容(抜粋)
□人間と地球におけるエーテル的なものとアストラル的なものの作用について:
・人間の再来について。
・血液循環と心臓の動き。
・地球素材と宇宙体における光と色彩の作用。
・守護天使の働きについて。
・地球と人間に対する星位の影響。
□いかにして霊的世界の観照に至るか:
・独立した思考と逆向きの思考の養成。
・意図的に退屈を作り出すこと。
・物質界の判断の霊界での逆転。
・内的な誠実さの開発。
□宇宙と人間存在のなかのリズム:
・人間の呼吸と宇宙の呼吸。
・良心の成立。生まれないことと不死性。
□祭礼の起源と意味:
・ドルイドの叡智。ミトラ祭祀。カトリックの祭礼。
フリーメイソンの儀式。キリスト者共同体の儀式。
*『健康と食事』(西川隆範訳 イザラ書房)のなかの
「蛋白質・脂肪・炭水化物・塩(一、二)」は、このGA350から
訳出されています。
■GA351
人間と宇宙
自然のなかの霊の働き
蜜蜂の本性について
Mensch und Welt. Das Wirken des Geistes in der Natur.
Uebr das Wesen der Bienen
第5巻 15回の講義 1923年10月8日〜12月22日 ドルナハ
●内容
□人間と宇宙、自然のなかの霊の働き:
・蝶の本性。
・青酸と窒素、炭酸と酸素。
・北方と南方の人間と地球。
・水素の本質について。
・彗星の性質について。
・宇宙と人体内の物質の働き。鉄とナトリウム。
・小児麻痺の原因について。植物の成長について。
□蜜蜂の本性について:
・蜜蜂と人間。
・蜜蜂の知覚について。
・蜂蜜と水晶。
・蜂蜜について。
・タマバチ(モッショクシバチ)(*)について。
・蜜蜂の毒と蟻について。
・蟻酸の意味。
・蓚酸、蟻酸、炭酸と自然のなかでのこれらの意味。
*モッショクシバチ(没食子蜂)[Gallwespe]:ブナ科植物の若芽を刺傷して
球状の虫瘤を生じさせる。生じた虫瘤が没食子でタンニンを多く含む。
■GA352
精神科学的に考察した自然と人間
Natur und Mensch in geisteswissenschaftlicher Betrachtung
第6巻 10回の講義 1924年1月7日〜2月27日 ドルナハ
●内容
・厚皮動物について。皮形成と骨格形成の本質。
・毒と人間における毒の作用。
・栄養について。
・人間の眼。色素欠乏症。
・宇宙との関係における地球の液体循環。
・人間の衣服について。
・体内での砒素とアルコールの作用について。
・高次の構成部分と物質体との結びつきについて。
阿片とアルコールの作用について。
・人体組織における構築と解体。
・アインシュタインの相対性理論についてー現実とは無縁の思考。
■GA353
人類の歴史と諸文化民族の世界観
Die Geschichte der Menschheit und die Weltanschauungen
der Kulturvoelker
第7巻 17回の講義 1924年3月1日〜6月25日 ドルナハ
●内容
・墓地の雰囲気の人間への影響。
古代インド人、エジプト人、バビロニア人、ユダヤ人の人生観。
・人生における物質を超えた関係。ギリシア精神とキリスト教。
・古代世界へのキリスト教の登場。
・星の叡智、月および太陽の宗教。
・キリスト教の広まる時代にヨーロッパはどのように見えたか。
・三位一体。キリスト教の三つの形式とイスラム教。十字軍。
・古代と近代のキリスト観。
・復活祭について。
・はん痕形成について。ミイラ。
・精神科学的天文学の基礎付けのために。
・ユダヤ教の本質について。
・セフィロトの樹について。
・カント、ショーペンハウアー、エドゥアルト・フォン・ハルトマンについて。
・彗星と太陽系、獣帯とその他の恒星について。
・モーゼ。チベットにおける頽廃したアトランティス文化。ダライ・ラマ。
いかにしてヨーロッパはその精神文化をアジアに広めうるか。
植民者としてのイギリス人とドイツ人。
・太陽の性質。フリーメイソンの起源。暗号、手の握りかた、合い言葉。
クー・クラックス・クラン(*)。
・人間とヒエラルキア。古代の智慧の喪失。「自由の哲学」へ。
*クー・クラックス・クラン[Ku-Klux-Klun]:KKK団、黒人などの排斥運動を行なう米国 の秘密結社。
■GA354
宇宙と人間の創造
地上生活と星々の働き
Die Schoepfung der Welt und des Menschen
Erdenleben und Sternenwirken
第8巻 14回の講義 1924年6月30日〜9月24日 ドルナハ
●内容
・宇宙創造と人間創造。地球進化の土星ー、太陽ー、月状態。
・地球創造、人間の誕生。
・地層と化石について人智学と自然科学は何を語るか。
・宇宙と人間の誕生について。レムリアとアトランティス。
・中国文化とインド文化の起源と特性。
・食物と人間の関係について。なまの食べ物と菜食主義。
・栄養問題。子どもの栄養。鍛錬。施肥。
・人類の文化の発展について。
・匂いについて。
・動物、植物、岩石への諸惑星の影響について。
・天候とその原因について。
・地球と月の形態と誕生。火山活動の原因。
・人智学の意図は何か。
・人間はどこから来たか。地上生活と星の叡智。
『健康と食事』(西川隆範訳 イザラ書房)のなかの「根・葉・実」(一、二)
は、この巻の講義から訳出されています。