風のトポスノート493

 

The Line


2003.8.6

 

沢知恵の曲に「The Line」というのがある。
とてもシンプルな英語の歌でなかなかの名曲である。
「一期一会」というライブ録音を収めたアルバムのなかに
収められているのをきいた。
 
愛と憎しみ、
北と南、
男と女、
あなたと私の間には
見えないところに線が引かれてあって、
世界のいたるところ、私たちの生活のいたるところに
その線はあるのだけれど、
その線というのは実はあなたのなかにあって、
それを乗り越えようとすれば簡単に越えられる。
 
戦争と平和、
大人と子供、
黒と白、
生と死の間には
線があるけれど、
その線は私であって、
そしてあなたであって、
ほんとうは線なんかないんだ。
 
・・・といった内容。
 
この歌は最初ラブソングとしてつくられたのだけれど、
歌ううちにだんだん広がりがでてきたのだそうだ。
 
ぼくはこう考えてみた。
 
人間はおそらくこの地上に線を引くために生まれてきて
なぜこうして数限りなく線を引き続けているのかといえば、
その線を越えるためにこそ生きている。
 
その矛盾そのもの、
線を自分で引いてそれに悩み
今度は自分でそれを越えようとするのが
人間なのかもしれないと。
 
自分のなかにもあるその運動を
自分で追ってみることでこそ
見えてくるものがあるのかもしれない。
 
人間は自分を不自由にしておくことで
自由に向かう衝動を得、その運動によって
新たなものを自分のなかに育てていくことができる。


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