小林 ベルグソンは若いころにこういうことを言ってます。問題を出すと いうことが一番大事なことだ。うまく出す。問題をうまく出せば即ちそれ が答えだと。この考え方は大変おもしろいと思いましたね。いま文化の問 題でも、何の問題でもいいが、物を考えている人がうまく問題を出そうと しませんね。答えばかり出そうとあせっている。 岡 問題を出さないで答えだけを出そうというのは不可能ですね。 小林 ほんとうにうまい質問をすればですよ、それが答えだということで すが。 (岡潔・小林秀雄『対話 人間の建設』 新潮社/昭和40年10月20日発行/P76-77) 問いには答えがすでにふくまれている。 ことのことをわからないままに、 ただ答えを要求する問いは 実りをもたらすにはあまりに貧しい問いでしかないのだろう。 子供の素朴な問いが 大人を戸惑わせ、ときに関心させるのは、 大人が信じ込んでいる問いと答えの一対位置対応を 崩してくれるからだろうし、 また子供にしてみれば、 自分のなかにあるカオス状態の想像力の種を 「問う」ということでそこに植えようとしているのだろう。 自分が何を問うているのかさえあまり気にしないままに。 問いに答えがすでにふくまれているということは、 まるで蛇が尻尾を呑み込んだような感じになるが、 実のところそういう円相のような在り方が 問うこということでもあるのだろう。 そこでは円から出てさまざまな円を描いていく ダイナミクスが作用している。 それに対して、ただ答えを要求する問いは 一方的な直線になって自分に返ってくることがない。 |
■「風のトポスノート401-500」に戻る ■「思想・哲学・宗教」メニューに戻る ■神秘学遊戯団ホームページに戻る |