風のトポスノート421 

 

問題をうまく出すということ


2002.8.10

 

        小林 ベルグソンは若いころにこういうことを言ってます。問題を出すと
        いうことが一番大事なことだ。うまく出す。問題をうまく出せば即ちそれ
        が答えだと。この考え方は大変おもしろいと思いましたね。いま文化の問
        題でも、何の問題でもいいが、物を考えている人がうまく問題を出そうと
        しませんね。答えばかり出そうとあせっている。
        岡 問題を出さないで答えだけを出そうというのは不可能ですね。
        小林 ほんとうにうまい質問をすればですよ、それが答えだということで
        すが。
        (岡潔・小林秀雄『対話 人間の建設』
         新潮社/昭和40年10月20日発行/P76-77)
 
問いには答えがすでにふくまれている。
 
ことのことをわからないままに、
ただ答えを要求する問いは
実りをもたらすにはあまりに貧しい問いでしかないのだろう。
 
子供の素朴な問いが
大人を戸惑わせ、ときに関心させるのは、
大人が信じ込んでいる問いと答えの一対位置対応を
崩してくれるからだろうし、
また子供にしてみれば、
自分のなかにあるカオス状態の想像力の種を
「問う」ということでそこに植えようとしているのだろう。
自分が何を問うているのかさえあまり気にしないままに。
 
問いに答えがすでにふくまれているということは、
まるで蛇が尻尾を呑み込んだような感じになるが、
実のところそういう円相のような在り方が
問うこということでもあるのだろう。
そこでは円から出てさまざまな円を描いていく
ダイナミクスが作用している。
それに対して、ただ答えを要求する問いは
一方的な直線になって自分に返ってくることがない。


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