風のメモワール99

六角紫水展


2008.11.23

先週、11月18日から広島県立美術館ではじまっている
「六角紫水展」に出かける。

知人のプロダクションの方が
かなりがんばって企画されたもので、
「こんなおもしろいチラシができましたよ〜」とかいうことで
できたばかりのラフデザインのpdfデータをかなり前に
送っていただいたりもしていた。
ちょうど仕事で広島に出かけることになったので
ついでにその方の話を聞いてみようというのもあった。

実際に見てみると、思っていた以上に、充実した内容で
展示物も多く、気がつくとずいぶん時間が経っていたのに気づいたほど。
と同時に、自分がいかに、たとえば漆工芸などについて
ほとんど何も知らないかということに気づかされることにもなった。
展示会を見た後、あわてて、「漆」についての本を物色したりもすることに。
(岩波文庫にちょうど松田権六『うるしの話』というのがあった)

正直、知人から聞くまで
「六角紫水」という人のことはまるで知らずにいた。
展示会のキャプションに「国宝を創った男」とあるように、
「六角紫水」という人は、岡倉天心などとも深く関係していた方で、
中尊寺金色堂の調査・保存・修復などにも関わっていたりする。

  明治維新後の廃仏毀釈や欧化政策により日本の伝統的文化財は存亡の
  危機に瀕しました。これらの文化財を調査・保存し、国宝指定するた
  め、明治30年制定の古社寺保存法のもと、中尊寺金色堂(岩手県)を
  皮切りに、厳島神社(広島県)や三徳山三仏寺(鳥取県)など、岡倉
  天心らとともに全国を奔走した一群の人々の中に、若き日の漆芸家・
  六角紫水がいました。
  六角紫水(慶応3・1867年〜昭和25・1950年)は瀬戸内海に浮かぶ能
  美島の大原村(現在の広島県江田島市大柿町)に生まれ、東京美術学
  校美術工芸科漆工部を第1期生として卒業して以来、東京美術学校教授、
  帝国芸術院会員などを歴任し、わが国の近代漆芸史に大きな足跡を残し
  ました。
  その業績は、わが国漆芸の、伝統技法の研究と継承、芸術性の向上や近
  代化、応用範囲の拡大と普及、文化財保護や学術研究など多岐にわたり
  ます。なかでも、日本の伝統文化が存亡の危機にあった激動の近代にお
  いて、古社寺保存法による国宝指定やそれらの研究模写を積極的に推進
  したことは、わが国特有の伝統文化である漆芸を保存し、継承する上で、
  紫水の幅広い活動の中でも特筆すべき功績といえます。
  http://www.nhk.or.jp/hiroshima/event/2008/11rokkaku/index.html
  (プロフィールのほか、展示会の内容について)

さすがにぼくもかなり年をとってきたせいか、
こういうモノたちの魅力というのが
ほんの少しだけれど感じられるようになってきているように思える。

モノは物質でありながら霊でもあるように
そのモノのもつ世界を感じ取るためには
ずいぶんといろんな目や耳やそのほかの感覚まで
動員する必要があるのだろう。

たんに古いモノや権威あるモノだからという理由で
後生大事にする必要はないけれど、
やはりわけあってそこにあるモノたちのことを
それがどんなに些細なものであるとしても
受容できる目や耳やを持ちたいものだと切に思う。

そして矛盾するようだけれど、その上で、
そうしたモノたちにとらわれない自由さも失わないでいたい。
でなければモノをモノノケにしてしまうことにもなるだろうから。
モノノケにとらわれてしまうと
自分もまたモノノケになってしまいかねないだろうし。