風のメモワール53

モンキービジネス


2008.4.25

「モンキービジネス」というのは、
「悪ふざけ」という意味に近い英語らしい。
柴田元幸の責任編集で創刊された「文芸誌」のタイトルである。
柴田元幸は、ポール・オースターの作品などを訳している翻訳家。
いいタイトルかどうかはよくわからないが、
「悪ふざけ」くらいの軽くてしゃれたタイトルは悪くない。

coyoteで「柴田元幸」そのものが特集になっていたように、
ずいぶん元気のいい人なので、
その勢いもあって、実現した企画なのだろう。
書店で雑誌のコーナーを探したら見つからず、
新刊書のコーナーに置かれてあったのが面白かった。
サイズが単行本のサイズだし、
文芸書(単行本)のノリでアピールしたほうが
売れるのではないかと判断されたようだ。

創刊号、2008 Spring vol.1は
「野球号」となっていて、
最初に、柴田元幸と小川洋子の対談や
柴田元幸がオースターと野球についてやりとりした
「Writers on Baseball」というエッセイなどが置かれている。
柴田元幸は横浜のファン、
小川洋子は言わずと知れた阪神ファンであり、
オースターは熱烈なメッツ・ファンらしい。

ぼくはもともとそんなに野球には興味がなく
それが続いていたとしたら
この「モンキービジネス」を通りすぎていたのかもしれないが、
ここ数年日本ハムを応援するようになったのもあって
「悪ふざけ」してみることにした。

  柴田 そこで思うのは、敗北に直面した時にファンはどう振る舞う
  のか。これは結構だいじな問題であろうと。
  ・・・
  小川 誰かを責めることによって、自分のモヤモヤを解消していた
  時期があったんですけれども……
  柴田 あ、それはもう乗り越えたんですか。
  小川 ええ、乗り越えました(笑)。やはり四〇を過ぎて、監督の
  年齢に近付いてきますと、だんだん自分の子どもみたいな世代の選
  手に変わっていきますのでね。むしろエラーをした選手にこそ声援
  を送る気持ちになってきます。あそこで監督がああいうふうに動い
  たのも、きっと何か理由があったに違いない、それがまた生きる時
  もーー
  柴田 あるだろうと。

ひいきのチームがあるということは
その勝敗に感情移入してしまうということでもあって
ずいぶん気をもんだり喜んだり、あ〜あ、とくさったりもするのだが、
たしかに、年を食ってからひいきのチームができると、
なんか選手ひとりひとりのいろんなことを考えるほうが多くて
それもなかなかいい感じなのかな、とか勝手に思っていたりする。

昨夜は、ダルビッシュが投げたにもかかわらず、
9回の表に2−1でオリックスに負けていて
やれやれという感じだったのだけれど、その裏で同点。
延長10回の裏、先頭打者の小田がホームラン!
ここ数年、いいところがあまりなかった小田のような
地味めの選手のこういうシーンには、静かな感動がある。

・・・とまあ、
グノーシス的なものにとらわれがちなぼくには、
こうしたモンキービジネスな日々というのもいいものだ、という話。