風のメモワール32

方言・目の演技


2007.12.23

長瀬智也主演のテレビドラマ「歌姫」が昨夜終わる。
けっこう泣ける話だった。
感情がストレートに表現されるこういうドラマは嫌いじゃない。

ぼくが生まれたのが、このドラマの舞台となっている
土佐清水市のとなりの中村市(いまは四万十市)なので、
なつかしい感じで毎回楽しみにしていた。
わが家でも、このドラマがはじまって、
「グッときたぜよ!」というフレーズが飛び交うようになってしまった。
中村市には小学校の3年生までいた。
四万十川で遊び放題の少年時代。

ぼくは、この地方のことばだけではなく、
宇和島地方の言葉も
ぼくのネイティブのベースにあるので
完全な中村弁(土佐弁とはちょっとちがう)ではないのだけれど
ある種、あの言葉がつくりだすシンプルな感情表現が
じぶんのなかにもあることをあらためて感じた。
はじめてことばを覚えたところの言葉からは
ずいぶん影響を受けているのだろうなと思う。

今ぼくの話していることばは、
その後影響を受けた方言に
メディアから流れる「標準語」とされたりもしている言葉が合わさって
たぶんなんだか妙なものになっているのかもしれない。
しかし、いろんな地方の言葉を
その言葉がつくりだす感覚や感情とともに吸収するというのは
それなりの豊かさをもたらしてくれているように思う。
まったく言葉が異なるというのではなく、
微妙な表現が異なったものがブレンドしている感覚。

ところで、おなじく今週終わった「医龍2」も
それなりに楽しむことができたが、
あのきわめてアーリマン的なところはちょっとシンドかった。
やはり、心臓移植などのテーマを疑いもなく肯定するのは問題かと思う。

面白かったのは、ストーリー全体よりも、
それぞれが抱えているトラウマを前向きに克服していくシーン。
とくに第7話の「スーパードクター」は泣けた。
松平幸太朗訳の佐藤二朗という役者をはじめてしったが、とても味がある。
手術中の会話「金髪、奇跡ってあると思うか?」「ああ、あるよ」
という目と目のやりとりが印象に残った。
このドラマは手術中は目しかでていないので、
目だけで演技するシーンが多いのだけれど、なかなかのものだ。
ぼくも、目だけで演技できるようになれたらとちょっと本気で思ったりした。
とてもむりだけれど。