風のメモワール134
谷川俊太郎×蒼井優
2009.4.15

『ダ・ヴィンチ』が15周年だということで
特別付録のDVDがついている。
『ダ・ヴィンチ』は、立ち読みすることが多いけれど、
(情報が多すぎてシンドくなるのもあって)
今回はその付録ほしさにゲット。

最近、付録としてCDやDVDがついているものが多く、
たとえば、『サライ』に『平家物語』の名場面を
元NHKアナの松平定知が朗読したものとか
なかなか見過ごせないものがあったりするが、
(以前『奥の細道』の朗読CD付のものもあった)
このDVDはちょっと特別で、
なかにいろんなコンテンツが入っているけれど、なかでも
谷川俊太郎の書き下ろしの11編の詩を蒼井優が朗読をするという、
「スペシャル・ポエトリー・コラボレーション」が素晴らしい。

映画『鉄コン筋クリート』や今度公開の『いけちゃんとぼく』などでも
声だけの出演もあったりする蒼井優の声がなかなかだし、
書き下ろしの谷川俊太郎の詩もまたいい。

蒼井優をはじめて知ったのは、2005年のテレビドラマの『タイガー&ドラゴン』。
その後、初出演たという映画『リリィ・シュシュのすべて』(2001年)などをみたり、
不思議な雰囲気があるなと思っていたら、
その後、あれよあれよという間に有名になって、
(それまでも有名だったんだろうけれど、知らなかった)
昨年のテレビドラマ『おせん』なんかもなかなか良かったけれど、
今回のような、ただイスに座ったり寝そべったりして詩を読むだけの役だと、
蒼井優という役者がむしろ素としてクローズアップされるところがあるように思う。
このDVDはちょっとした保存版になりそうである。

詩の朗読を詩人本人がするというのも、それはそれでいいけれど、
こういうさりげない(けれどほんとうはすごく考えられている)朗読も好きだ。

谷川俊太郎から蒼井優へのリクエストは
「淡々と読んでください」というものだったそうである。
蒼井優がDVDのなかで語っている言葉にもこんなところがある。
「以前、大学の入試で詩を朗読するという試験があったんですけど、
その時に演劇の先生にどうすればいいですかと訊きに行ったら、
感情をこめないで読みなさいと言われたのを思い出しました」。

「淡々と」「感情をこめないで」読むこと。
そういえば、あまりに感情たっぷりに読まれる詩には
詩に必要な「間」というか「空白」の部分がなくなってしまう。
詩というのは、おそらく、容れ物のようなところがあって、
その容れ物のなかに、すでにいろんなものが放り込まれていると
せっかく読む/聞くことでそこに入れることのできる空間が
なくなってしまうのだろうと思う。
たしかに、とても重要なところである。