風のメモワール129
和幸:ひっぴーえんど
(2009.3.14)

和幸(かずこう)というのは、とんかつやさんではなくて、
加藤「和」彦×坂崎「幸」之助。
すでに2007年の9月に「デビューアルバム」である
「ゴールデン・ヒッツ」がでていて、今度の「ひっぴーえんど」が
2枚目。
2枚目がでているということは、プロジェクト失敗でもなかったの
だろう。

「ザ・フォーク・クルセダーズ」のときには早めに気づけたのだけれど、
その路線が展開しているとは思わず、気づいたのはつい先日。
久しぶりにぶらりと寄ってみたCDショップで
「なぜ、とんかつ屋がはっぴーえんどなんだ?」と思いきや
とんかつ屋ではなく、加藤「和」彦×坂崎「幸」之助であり、
はっぴーえんどではなく、「ひっぴーえんど」。
収録曲名をみても、
「タイからパクチ」←「はいからはくち」
「ナスなんです」←「夏なんです」
「あたし元気になれ」←「あしたてんきになあれ」
「池にゃ鯉」←「春よ来い」
と、あまりにほとんど「はっぴーえんど」のパロディぽい感じなので、
二の足を踏んだのだけれど、洒落づくしにしてあ、
DVDとかもついているし、あまりにもいい雰囲気がでている。
まあ、騙されたと思ってつきあってみることにした。

*↓が特設サイト
http://columbia.jp/kazukoh/

ところが、騙されたどころか、これは名盤!!ではないか。
ギターがいい、コーラス・アンサンブルもいい、絶妙。
「70年代ロック台頭期へのオマージュ」とあるが、
パロディとはいっても、ほとんどがオリジナルで、
「はっぴーえんど」から受け継いでいるのはマインドの部分のほう。
しかもそのほかの収録曲も聴かせる。
全体をつらぬくテーマは「自由」だろうか。
最初の「ひっぴーえんど」“ひっぴいえんど宣言”と
実質的な最終曲が岡林信康の「自由への長い旅」。
ちなみに、なかでいちばん何度も聞き直したのが
かまやつひろしの「ゴロワーズを吸ったことがあるかい」
メインボーカルは坂崎幸之助。
この人、こんなにいい声をしていたのか!と驚く。
しかも、かまやつひろしのスキャットまでがはいっていていい感じ。
アルバムは「ひっぴー」の「エンド」だけれど、
まさに「はっぴー」に「エンド」まで十二分に楽しませてくれる。

DVDでも二人による曲解説などがあって楽しいが、
特設サイトには小倉エージによる「インタビュー解説文」があって
CDを聴きながらこれをよむと2倍楽しめる。
そこから「最大の聞き所」などについて少しメモ。

  作風といい、歌、コーラス、演奏、サウンドといい、それは
  「新古今和歌集」さながらに“本歌取り”の技巧を凝らし、そ
  の真髄、醍醐味を随所に散りばめた極上のアルバムであります。
  (中略)
  あの頃、手に入れた噂のアルバムの数々。それらを手に入れ
  られただけでも一日が、一週間がシアワセだったアナログの
  ブラック・ディスクを、“裏面 ”が聞こえてきそうなぐらい何
  回も何回も耳にした覚えのある“OYAJI”にとっちゃ、“ワ
  オ! これ、あれじゃん。ムフフ!”とほくそまずにはいられ
  ない、はず!
  そうです、「はっぴいえんど」やCS&N、CSN&Yをは
  じめ、60年代末から70年代はじめ、日本のフォーク、ロッ
  クの黎明期、アメリカのウエスト・コーストから届いたアル
  バムの数々のあれこれが、ここにはそこかしこ。“トリビア
  ごっこ”にはうってつけ。“オタク度”を試されるアルバムで
  でもあります。
  ネタがあります。だからこその“本歌取り”。ですが、“本歌”、
  ネタもとを知らなくっても、ざらっとした“生”な音は、その
  へんの、ほら、携帯でダウンロードした今ドキの“音”とは違
  うでしょ?きっちり、しっかり、凝ってますから。それぐら
  いは、誰にだって、わかるはず。それに、カバー曲の選曲、
  アレンジ、演奏、コーラスが巧みで面白い。
  (中略)
  ざらっとした“生”な音、演奏、サウンドもさることながら、
  歌、“緻密”で“濃密”なコーラスが素晴らしくって、素敵です。
  “マジ、やばい!”。
  それより、加藤“和”彦と坂崎“幸”之助の“歌声”は“一卵性双生
  児”みたいに同じです。どっちが歌ってんだか、わけわかんな
  いなんてこともしばしばです。おまけに二人の声が重なれば、
  まるで目くらまし、いや、耳くらまし。
  声がそっくり、“似てる!”ってだけじゃなくて、コーラスの
  アンサンブルに“工夫”を凝らしての物種。“技”がなけりゃ、
  そんなこと到底できません。というあたりが、凄いです。
  『ひっぴいえんど』の最大の聞き所のひとつです。