風のメモワール12

イフ


2007.7.31.

12■イフ (2007.7.31)

元ル・クプルの藤田恵美のアルバム“camomile classics”をきく。
その手話コンサートの企画が決まったのがきっかけである。
ゆったりとしたテンポでじっくりときかせるスタンダードナンバー集。
香港、台湾、マレーシア、韓国などでロングセラーになっているという。

そのアルバムのなかに、ブレッドの名曲“If”が収められている。
i-Podのなかに、My favorite POPS&ROCKのファイルをつくっていて、
(思いのままにその都度曲目や順番が変わっていく)
最近その1曲目に入れているのが、ちょうどブレッドの“If”で、
その35年ほども前の曲が、まだこうしてカヴァーされているのがうれしい。
藤田恵美はその曲をほんとうにゆっくりと歌詞を味わい尽くすように歌っている。
歌詞カードがついているので、あらためてたどってみることもできた。

  If a picture paints a thousand words
Then why can't I paint you
The words will never show
The you I've come to know

こうしたシンプルなラブソングは、
心が少しばかり乾いてしまったときなどに
感情をほぐすのにいい。

この“camomile classics”の1曲目は、“Over The Rainbow”で、
先日からきいている、これもスタンダード集の
英珠“Cinema”というアルバムの1曲目も“Over The Rainbow”。
だれでも知っているメロディーと歌詞が、
まるではじめてぼくに挨拶しているように響いてくる。

  Somewhere over the rainbow
  Way up high
  There's a land that I heard of
  Once in a lullaby

思い返してみれば、これまでどれだけの曲を耳にしてきたことだろう。
夥しいまでの数の曲を耳にしてきたなかで、
記憶に残るわずかな曲だけをひろいあげてみても数千曲にはなる。
今でも、毎週、新しいCDを聞かないときはないほどなので
1週間に10曲と計算しても、1年で3600曲にもなる。
10年では、36000曲、30年では1万曲を超える。
おそらく実際に聞くのはそれよりもはるかに多い。
しかも、聞くのは新しい曲だけではなく、繰り返し聞き直す曲もあって、
そう考えてみれば、そうしたPOPS&ROCK系だけをとってみても
ずいぶんとたくさんの曲に親しんできたことになる。
そうしてそのなかから、ときおり思い出されてくる名曲の数々。

もし“If”、こうした数々の曲にふれることがなかったら、
いまのぼくは、ずいぶん違った感情や感覚をもつようになったかもしれない。
あまりにたくさんの曲をシャワーのように聞くのもどうかとは思うけれど、
こうしてMy favorite POPS&ROCKとして、
素敵なラブソングをときおり聞きなおすことで得られるやすらぎというのは
かけがえのない魂の贈り物のように思える。

そういえば、最近、スタンダードナンバーのカバーアルバムというのが
多くなっているような気がする。
少し前に出た、Art Garfunkelの“Some Enchanted Evening”も
名曲のとても素敵なカヴァーアルバムだった。
時代が殺伐としているからこそ、
「素敵なラブソング」で魂を癒しているということなのかもしれない。
もちろんそういうのばかり聞いて夢の中にばかりいるのもどうかと思うが、
夢の中でしか癒されない渇きもあって、
そういうときには素直に涙など流してみるのもいいものだ。