■鈴木雅明『バッハからの贈りもの』 聞き手:加藤浩子 (春秋社/2002.8.5発行) バッハ・コレギウム・ジャパン(BCJ)の指揮者、鈴木雅明が語るバッハ。 聞き手は、『バッハへの旅』(東京書籍)などの著者もある音楽評論家の加藤浩子。 「バッハの魅力」について、 バッハの生涯について、 カンタータ及び受難曲などのバッハの声楽曲について、 平均律クラヴィーア曲集やオルガン曲などのバッハの器楽曲について、 またBCJの音づくりについて、 そして、「バッハをめぐる世界観」について、 まるでそばで楽しくお話をうかがっているような気分で読むことができた。 バッハ没後250周年の2000年をきっかけに発売された廉価版の全集などを まだこれ聴いてなかったな、という感じで少しずつ買い足してきていて、 おおよそバッハの音楽を参照できるようになっているので、 話のながれのなかででてくる実際の曲を その都度CDを聴きながら辿っていき、 な〜るほど、という感じで読んだりした。 「この本は、間違ってもバッハ研究の足しにはならない。 そうではなくて、むしろバッハを心底楽しむための一助として、 そして自由奔放なバッハ論に火がつけば、と願いつつしゃべったことなのである」 と鈴木雅明が「序」で述べてあるが、 研究書を読んでもよくわからないぼくのようなただのバッハファンにとっても、 バッハを聴くことを楽しみながら深めていくことができるような楽しい内容になっている。 ところで、現在18巻まで出ているBCJのバッハ・カンタータ全集の 第1集「ミュールハウゼン時代(1)」のCDが発売されたのが1996年。 ぼくがそれを最初に聴いたのが1997年の最初の頃のことで、 それ以来5年以上の間、そのシリーズを心待ちにしている。 バッハの音楽はどれもとても好きなのだけれど、 このカンタータや受難曲を聴き始める前と後とでは ぼくのなかで確かに何かが変わってきた印象がある。 カンタータは200曲あるので、完結までまだ半分以上ある。 お楽しみはまだまだこれから。 最後に、「バッハの魅力」について、本書から。 バッハの音楽というのは、乾いているものに染みこんでいくというか、うまく 言えないんですが、そういう力があるんだと思います。だから、バッハの場合、 それこそジャズやなんかにアレンジもできる。そういった旋律の豊かさや和声 の面白さ、リズムの交錯などがふんだんにある。いっぽうで、知的好奇心を鼓 舞する対象でもあり、いくらでも研究テーマがでてくる。(…) <フーガの技法>みたいに謎に満ちた世界へと誘ってくれるいっぽうで、<マ タイ受難曲>のように、瞑想的で悲劇に満ちたドラマティークがある。はたま た、バロック音楽が本来もっているスポルティーフというか、運動感という面 も。そういう意味で、バッハは本当に包括的で多用な存在なんですね。(…) まあ、いってみれば、総合レジャーランドみたいな、こんなふうな形容をする と怒られるかもしれませんが(笑)、非常に大きな可能性を秘めた世界である、 ということが言えると思うんです。ところが、それだけではなくて、その背後 に人々が何が非常な大きな力を感じている。求心力というのでしょうか。レジ ャーランドついでに喩えてみれば、遊園地に入って向こうに出口が見えていて、 もうこれは通過したら終わりですね。そうではなく、入園してみると、どこま で行ってもどんどんどんどん新しい世界が見えてくる。そういう面白みが尽き ない。そういう魅力なんですね。(P42-43) このバッハについての話は、シュタイナーにもあてはまるようで、 バッハとシュタイナー、どちらも一生つきあえる巨大なテーマですね(^^)。 |
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