■シューベルト:アルベジオーネソナタ イ短調D.821(5弦のピッコロチェロで演奏)
ルートヴィヒ・ファン・ベートーヴェン:チェロ・ソナタ第3番イ長調Op.69
鈴木秀美(チェロ・ピッコロ)
小島芳子(ハンマーフリューゲル)
BVCD-1516
これは、昨年の12月に発売されたもので、以前から気になってはいたのですが、ふと聴いてみたくなったので買い求めたものです。シューベルトのアルベジオーネソナタは、あまりにポピュラーで、相棒に言わせると昔聴いた演奏の記憶では、眠かったということなので、どうかと思いはしたのですが、これが、もう絶品で、相棒ともども、聴きながら体がはりついて動けなくなってしまうほど感動させられました。
シューベルトのアルベジオーネソナタは、普通はピアノとチェロによる演奏ですが、あえて古楽器を使ったのもよかったのかもしれませんが、もちろんそれだけではなく、演奏そのものの姿勢というか、もっといえば音楽そのもののとらえかたが画期的なもの、それでいて、極めて音楽の理念とでもいうものに忠実だといえるような気がします。
鈴木秀美といえば、鈴木雅明ひきいるバッハ・コレギウム・ジャパンのバッハのカンタータの全曲録音シリーズの演奏の要でもあるわけなのですが、あらためてその演奏のすぐれているのには驚かされました。
ちなみに、今回はじめて知ったのですが、「アルベジオーネソナタ」の「アルベジオーネ」とは、「ギター・ヴィオロンチェロ」も言われるように、ギターとチェロの中間のような楽器なのだそうです。
とにかく、聴いて絶対損をしない一枚です。
■イリーナ・メジューエワ「メンデルスゾーンピアノ作品集」
COCO-80567 DENON
・ロンド・カプリチオーソ作品14
・幻想曲嬰ヘ短調作品28
・スケルツォ・カプリッチオ嬰ヘ短調
・前奏曲とフーガ ホ短調 作品35の1
・無言歌ホ長調 作品19の1「甘い思い出」
・無言歌ロ短調 作品67の5「羊飼いの訴え」
・無言歌嬰ヘ短調 作品30の6「ヴェネチアの舟歌」
・厳格な変奏曲 作品54
今年は、シューベルト生誕200年ということで、内田光子のシューベルト演奏をはじめとしたシューベルトがクローズアップされていますが、今年はメンデルスゾーンの死後150年でもあります。生誕○○年とか死後○○年ということに拘る気はないけれど、なぜかそういうときには、すぐれた演奏などを知る機会も増えるので、やはり、それなりの磁場ができるというか、旬の時期にあたるようです。内田光子の演奏するシューベルトもまるでその音楽の理念をどこかからとりだしてきたかのような見事なものですが、このメジューエワの弾くメンデルスゾーンも同じです。
メンデルスゾーンは比較的地味な存在ではあるのですが、先日から少し気になっていたもので、CDショップで何かいい演奏がないかと探していたところ、まったく知らない演奏家ではあったのですが、少しばかり気を引かれた新譜があったので、買って聴いてみたのですが、これが、すぐれものだったわけです。
イリーナ・メジューエワは、1975年、ロシアのニージニー・ノブゴロド生まれの22歳という若いピアニストなのですが、その演奏は、若いきらめきを含みながら、まるで巨匠の演奏する祈りのような響きを持った驚くべきものです。ひとつひとつの音をなおざりにすることなく、確実なテクニックをもちながら、それに溺れることのない表現力をもっています。ロシア的霊性というか、ロシア聖教的な祈りのようなものが背景にあって、こうした響きが生まれてくるのかもしれないとも感じました。
実は、これまでメンデルスゾーンの音楽はあまり知らなかったのですが、これを機に、他のものも聴いてみようと思っているところです。
劇場用アニメーション映画「もののけ姫」主題歌
「もののけ姫」 歌●米良美一 作詞●宮崎駿 作編曲●久石譲
7月12日から公開の宮崎駿の映画「もののけ姫」の主題歌をぼくの大のお気に入りのカウンターテナー、米良美一が歌っている。今日26日は、そのシングルCDの待ちに待った発売日ということで、早速、購入して何度も聴いてしまいました。
米良美一は、鈴木雅明によるバッハコレギウムジャパンに参加し、バッハのカンタータ、ヨハネ受難曲、ヘンデルのメサイアなどのCDを出しているし、日本歌曲集のCDもだしているが、どれも絶品で、毎回新しくでるCDが楽しみになっています。7月16日にも、新しい日本歌曲のCDが発売されるということで、先日は、ぼくにはとってもめずらしいことなのだけれど、予約してしまったくらいです。
しかし、この米良美一のカウンターテナーの素晴らしさはどうだろう。これだけの歌手が日本に存在しているということに驚かずにはいられない。バッハなどの渋い曲を歌っても、日本歌曲を歌っても、またこうしたアニメの主題歌を歌っても、それがすべて自分の世界になっていながら、しかもそれぞれの歌の理念そのものの体現者になっているともいえる不思議。
ぼくは、生まれてずっと、こういう歌、こういう声を聴きたいとどこかで切望しつづけてきたのかもしれない。この米良美一の声を最初に聴いたときから思い続けて、今ももちろんその気持ちに変化はない。変化はないどころか、それは深まるばかり。
中学生の頃、ポップスやロックを浴びるほど聴いていたころ、もう新譜がでるのが待ち遠しくてならなかったものですが、そのうち、そういう気持ちがだんだんに薄れ、次第に、音楽に対する新鮮な感受性が鈍化してきた部分があります。その後、ジャズを聞きはじめた頃、また、クラシックを聞きはじめた頃、そういう感受性が高まってきたことがあり、そしてまた薄れてゆきました。そうして、また数年前、ぼくにとっては、音楽そのものの聴き方そのものが友人の声楽家やシュタイナーや、それにゴルノスターエヴァなどの影響でかなり変わってきたところがあるのですがそれに合わせるように、こうした米良美一のような方が登場してくるに至って、音楽そのものに対する祝祭的な歓喜を味わっている今日この頃です。
・・・とまあ、結局何が言いたいかというと、米良美一の大ファンだということです、はい(^^)。
■鈴木雅明指揮 バッハ・コレギウム・ジャパン、コンチェルト・パラティーノ
アーレ:新たに植え込まれたチューリンゲンの遊歩庭園
KKCC-2241
鈴木雅明のバッハ・コレギウム・ジャパンの新譜です。今回は、5月に発売されたヘンデルのメサイアに続き、バッハのカンタータではなく、バッハより一世代前のドイツの作曲家、ヨハン・ルードルフ・アーレ(1625-1673)の曲集です。ぼくは、このCDを見て始めてこの作曲家を知ったのですけど、モンテヴェルディのドイツ版とでもいった感じの音楽で、バッハやヘンデルとはまた違った新鮮な魅力をもっています。
今回も、カウンターテナーの米良美一、ソプラノの鈴木美登里、テノールのゲルト・テュルクといった方々が美しい声を聴かせてくれます。バスのシュレッケン・ベルガーもぼくとしてはあまり好みではないのですが、これはまずますといったところでしょうか。
また、今回もヴァイオリンの寺神戸亮、チェロの鈴木秀美といったもう、これは絶品といっていいほどの演奏に加え、コンチェルト・パラティーノも金管で参加し、演奏に壮麗さを加えています。
ほんとうに、この鈴木雅明のバッハ・コレギウム・ジャパンが次々に出しているCDは毎回楽しみで、今回はぼくとしては思っても見なかった新譜だけに喜びも大きいものでした。
さて、今月の16日には、米良美一の日本歌曲の新譜がでます。中学生や高校生のころ、ポップスやロックに熱中して、新しい曲がでるのが楽しみでならなかったのを思い出しますが、最近もまたその頃のような楽しみを持てるのはとてもうれしいことだなあと思います。なにについても、新鮮な気持ちでどきどきしながら接することを忘れてしまったときに、その人の魂はしなびていくのではないかと思いますから。
■C.P.E.バッハ:チェロ協奏曲(全3曲)
鈴木秀美(チェロと指揮) バッハ・コレギウム・ジャパン
KKCC-2243(BIS-CD-807) 1979.7.24発売
バッハ・コレギウム・ジャパンの新しいCDが出ました。今回は、鈴木雅明指揮ではなく、チェロの鈴木秀美指揮によるC.P.E.バッハのチェロ協奏曲(全3曲)です。帯に「いつものバッハ・コレギウム・ジャパンとは別の団体かと見まがうほどテンションの高い音楽が続きます」とあるように、演奏のクオリティはそのままに、情熱あふれる演奏になっています。
チェロ協奏曲イ短調 Wq.170/H.432
チェロ協奏曲変ロ長調 Wq.172/H.436
チェロ協奏曲イ長調 Wq.172/H.439
C.P.E.バッハは、一見クールな印象の音楽の多いJ.S.バッハとはまたひと味ちがった情感的な曲を残しているようですが、鈴木秀美の解説によると「18世紀に書かれたチェロ協奏曲はそう多くない」「そのような中で、18世紀のちょうど中頃に作曲され、作曲者の知名度や音楽の質の高さは第一流と言えるはずのC.P.E.バッハの協奏曲があまり演奏されないのは不思議なことである」ということですが、そういう意味でも、この素晴らしい演奏がCD化されているのはとても貴重なことなのではないかと思います。今回は、バッハ・コレギウム・ジャパンの名物の声楽家たちは参加していませんが、また別の魅力を発見させてくれるお買い得の一枚です。
ちなみに、9月15日に、神戸でバッハ・コレギウム・ジャパンのバッハ・カンタータの演奏があるということで、夏休みのなかったぼくも、その演奏を聴きに行こうかと計画しているところです。
■鳥が道に降りてきた〜オリジナル・ヴィオラ曲集〜
今井信子(ヴィオラ) ローランド・ペンティネン(ピアノ)
KKCC-2242(BIS-CD-829) 1979.7.24発売
バッハ・コレギウム・ジャパンのバッハ・カンタータなどのCDを出しているBISレーベルからまた素晴らしいCDが出ました。ヴィオラの今井信子による、オリジナル・ヴィオラ曲集で、世界初録音というものが多く収録されています。武満徹がその晩年(1995)に今井信子のために書いた「鳥が道に降りてきた」という素晴らしい曲も収録されていますし、ロミオとジュリエットやゴッドファーザーなどの映画音楽で有名なニーノ・ロータの「間奏曲」などもあって、とても楽しめる構成になっています。
1.ジョルジュ・ユネスコ(1881-1955):演奏会用小品(1906)
2.ジャン・シベリウス(1865-1957):ロンド(1893)
3.ベンジャミン・ブリテン(1913-1976):反映(1930)
4.同:エレジー(ヴィオラ独奏のための)(1893)
5.武満徹(1930-7996):鳥が道に降りてきた(1995)
6.ニーノ・ロータ(1911-1979):間奏曲
7.ダリウス・ミヨー(1892-1974):4つの顔 作品238(1943)
I.カリフォルニア娘
II.ウィスコンシン娘
III.ブリュッセル娘
IV.パリ娘
8.ヴィンセント・パーシケッティ(1915-1987):マリーナ姫 作品83(1960)
9.ヘンリク・ヴィニャエフスキ(1835-1880):夢(1880)
10.フランク・ブリッジ(1879-1941)/ブリテン編曲
小川を斜めに横切って生えている柳の木がある
11.フランツ・リスト(1811-1886):忘れられたロマンス(1880)
ヴィオラはオリジナル作品に恵まれないと言われているそうですが、
この曲集は、ヴィオラのための作品を集めたものだけに、
ヴィオラの魅力を存分に楽しませてくれます。
今井信子のヴィオラだけでなく、ローランド・ペンティネンのピアノも
また素晴らしい演奏を聴かせてくれる、お勧めCDです。
先日の連休を利用して、9月15日に神戸・松蔭女子学院大学チャペルで行なわれた鈴木雅明指揮、バッハ・コレギウム・ジャパンの第32回定期演奏会に出かけてきました。
演奏されたのは、J.S.バッハ/教会カンタータ全曲シリーズの1923年からはじまるライプツィヒ時代の最初を飾る以下の三曲でした。
Jesus nahm zu sich Zwoelfe BWV22
「イエス十二弟子を呼び寄せて」
Du wahrer Gott und Davids Sohn BWV23
「汝まことの神にしてダビデの子よ」
Die Elenden sollen essen BWV75
「貧しい者たちは食べて」
ソリストは、鈴木美登里(ソプラノ)、米良美一(アルト)、ゲルト・テュルク(テノール)、ペーター・コーイ(バス)で、桜田亮(テノール)がでていないのは残念でしたが、鈴木秀美(チェロ)をはじめとした演奏も素晴らしく、やはり生演奏でなくては味わえない部分を改めて感じました。本来ならば、バッハ・コレギウム・ジャパンの定期演奏会すべてを聴きたいものだと思うのですが、なにせ遠隔地にいるぼくには、それが難しくてとても残念に思っています。しかし、12月には四国の高松でもクリスマス・オラトリオが演奏されるとのことで、できれば聴きたいものだと思っています。
なんといっても今回一番注目していたのが、カウンターテナーの米良美一ですが、予想通りのすごさでしたが、ちょうど演奏会のあった時間(15日の13:00〜)に放送されたNHK-FMのクラシックサロンのゲストも米良美一でした。
なんだか、なかばミーハー気分で出かけた演奏会でしたが、とても充実した演奏が聴けました。しかし、実は、そのとき台風19号が接近していたときで、昨夜四国のほうに帰ってきたのですが、帰る道筋と台風のやってくる道筋とがとても似たコースで、強風にあおられる瀬戸大橋や途中で通行止めになった高速道路など「行きはよいよい帰りは恐い」の小旅行になりました^^;。
さて、今回素晴らしい演奏を聴かせてくれたバッハ・コレギウム・ジャパンですが関連ホームページが開かれたということですので、ご紹介しておきます。アドレスは、 http://www2s.biglobe.ne.jp/~bcj/ です。
「うぐいす〜米良美一日本を歌う」に続いて、米良美一の新譜が発売になりました。
■米良美一・ロマンス
KICC230 97.9.26
現田茂夫(指揮)、日本フィルハーモニー交響楽団
木野雅之(ソロヴァイオリン)、松井久子(ハープ)
編曲:一ノ瀬トニカ
1.メンデルスゾーン:歌の翼に
2.ヘンデル:わたしを泣かせて〜オペラ「リナルド」
3.ヘンデル:オンブラ・マイ・フ〜オペラ「セルセ」
4.R.シュトラウス:明日
5.R.シュトラウス:万霊節
6.グノー:ロマンス〜オペラ「ファウスト」
7.グノー:トロイの娘たちの踊り〜オペラ「ファウスト」
8.サティ:ジュ・トゥ・ヴ
9.イギリス民謡:グリーンスリーヴス
10.ドヴォルザーク:わが母の教え給いし歌
11.グリーグ:ソルヴェーグの歌
12.ラフマニノフ:ヴォカリーズ
13.バッハ/グノー:アヴェ・マリア
今回のアルバムは、これまでのピアノ伴奏という形ではなく、オーケストラをバックにしたものです。また、世界の名曲集のような構成になっていて、これまでとはまたひと味違った楽しみ方のできるものとなっています。
今回は、CDのノートにある米良美一の言葉をご紹介しておきます。
恋愛することは、歌うことより何倍もむずかしく思える。 歌の中で恋したり失恋したり、笑ったり涙したりと、いつもとっても忙しく多くのロマンスを経験しているのだけれど……
とても歌うようにはうまくいかない。いつも胸の中に湧き起こる“好き”という気持ち止まりで。人を好きになるとき、そこにはいろんな愛し方、愛のかたちがあると思う。
だからここにあつめた美しくもせつない歌の数々が、誰かの想いと重なって、共感のようなものが生まれる事を、そっと願っている。
こういう表現というのは、実はかつてのぼくであれば、絶対に恥ずかしくて引用できないようなものだったのですけど^^;、それはおそらく、ぼくのなかで感情の豊かさがまだまだ成長していなくて、そうしたことにある種の拒否反応ばかりをしていたからかもしれない。そんなことを最近はとくに感じるようになりました。
「愛」という言葉もかつては、気恥ずかしさばかりが先にたってしまって、その本当の素晴らしさに近づくことがまるでできなかったように思います。最近になってやっと、感情の機微や豊かさが高められながら芸術表現されるのを味わうこともできるようになったのかもしれません。「歌」の素晴らしさもようやくわかりはじめたところだといえましょうか。もちろん、それはカラオケのような歌ではなく、愛の一表現としての歌であり、音楽演奏において真の意味で「歌うこと」につながるものです。
さて、先日神戸であったバッハ・コレギウム・ジャパンの演奏会のときに、市販されていない米良美一の「アリアンナの嘆き」という古楽のイタリア歌曲集のすぐれもののCDを手に入れましたので、それも併せてご紹介しておきます。
■米良美一・IL BASSO CONCITATO 「アリアンナの嘆き」
CR SPS-01 CECILE
これは、東京古楽集団を代表している宇田川貞夫さんという方がつくっている「CECILE RECORD」というレーベルからでているCDで、入手されたい方は、以下に連絡されれば手に入るようです。
〒245 横浜市戸塚区原宿町1040-20(宇田川方)
TEL045-852-5537 FAX 045-852-4415
CDのタイトルになっている「アリアンナの嘆き」というのは、モンテヴェルディの曲で、その曲をはじめとして、全13曲がおさめられていて、この中の収録曲は、米良美一が各地で行なっているコンサートでもよくとりあげている曲のようです。
■内田光子(ピアノ)
シューベルト
ピアノソナタ第21番 変ロ長調 D.960
3つの小品(即興曲) D.943
PHCP-11046 97.9.26
シューベルト生誕200周年記念の年を飾る内田光子のシューベルトの第3弾が発売されました。第1弾、第2弾と同様、極めて素晴らしい演奏です。
今回は、シューベルトが最晩年に残した最後のソナタが収録されていて、内田光子がインタビューのなかで、「死ぬ時に弾いていたい」と語った曲でもあり、それだけに興味深い録音だといえます。
CDのノーツに内田光子のインタビューが紹介されていますが、そのなかからシューベルトの音楽についてのところをご紹介させていただきます。
音楽作品に何らかの心理学的説明を与えることはとても危険なことですが、シューベルトの音楽に起こっていることはいわば聴く者を突然まったく予想していなかったような所へ運ぶことです。聴く者がどこかに浮遊しているような自分を見いだす、といった感じです。もちろんある時点ではもとの場所 へと引き戻されますが、ひと時の間−−なんと言ったらよいか−−天上を垣 間見るような、永遠を見つめるような幻覚にとらわれるのです。彼の音楽はとても長くて−−短い作品でさえとてもとても長くて−−そこには永遠なるものがあるかのようです。
ほんとうに、シューベルトのこうしたソナタを聴いていると、確かにそこには永遠を垣間みさせてくれるような感じに襲われるというか、そうしたところにつれていかれるような感じになることがあります。それが、この内田光子の演奏を聴くととくに強く感じられます。(とはいっても、他の演奏をそうたくさん聴いているわけではないのですが)
ともあれ、内田光子のシューベルト演奏の3枚のCDは、今後長くぼくの愛聴版になることは確かです。
■ヴィヴァルディ:リコーダー協奏曲集
ラウリン&バッハ・コレギウム・ジャパン
BIS KKCC2245 1997.9.26
ダン・ラウリン(リコーダー)
バッハ・コレギウム・ジャパン
若松夏美、高田あずみ(ヴァイオリン)、森田芳子(ヴィオラ)
鈴木秀美(チェロ)、内藤謙一(コントラバス)、
鈴木雅明(チェンバロ、オルガン)
寡聞にして知らずにいたのですが、ダン・ラウリンという人は、百年に一度の天才リコーダー奏者といわれているのだそうです。そうした形容は聴いてみるとときとして外れることがあるので、必ずしもあまり期待しないほうがいいと思うほうなのですが、今回のバッハ・コレギウム・ジャパンとの競演でのダン・ラウリンはなかなかに素晴らしい演奏を聴かせてくれます。
リコーダーというと、学校でハーモニカとともにだれでもが音楽の時間に与えられて吹かされる楽器なので、個人的にいうとあまりプラスの印象は持っていなかったのですが、このアルバムでは、リコーダーの多彩な魅力を味わうことができ、これだったら、音楽の時間にもっとちゃんと練習しとくんだった、などと今更ながらに思ったりもしながら聴いていました。
アルバムについている解説に、「このディスクと演奏者について」というところがあって、それが少し面白いので、ご紹介させていただきます。
ステージで見る素顔のラウリンは、そう宣伝されてきたような“北欧の虚無僧”といったニヒルな存在ではまったくなく、英語が実に達者で舞台からも気軽に聴衆に語りかける気さくなオニイサンといった印象だった。ただし、その「無 伴奏リコーダー・リサイタル」での演奏の鮮やかな切れ味と音楽の深淵は、CDによる以前からの印象をさらに強化していたが−−−。
日本でのヴィヴァルディの協奏曲の演奏は、バッハ・コレギウム・ジャパンのクリスマス特別演奏会の中で行なわれた。この晩(12月13日)にはほかにも、ラウリンとカウンターテナーの米良美一さんの初めての共演という聴きものがあって、その2曲のうち、とりわけヘンデルの<私の胸はときめく>HWV132cが 胸がドキドキするほどの素晴らしい出来映えになった。
■CDに収録されている曲
・協奏曲ハ長調RV443
〜フラウティーノと弦楽、通奏低音
・協奏曲ニ長調RV428「ごしきひわ」
〜アルト・リコーダーと弦楽、通奏低音
・協奏曲イ短調RV108
〜アルト・リコーダー、2つのヴァイオリンと通奏低音
・協奏曲ハ長調RV444
〜フラウティーノと弦楽、通奏低音
・協奏曲ト長調RV435
〜アルト・リコーダーと弦楽、通奏低音
・協奏曲二長調RV92
〜アルト・リコーダー、バイオリンと通奏低音
・協奏曲イ短調RV445
〜フラウティーノと弦楽、通奏低音