ロビン・ウォール・キマラー『コケの自然誌』

2012.11.8

ロビン・ウォール・キマラー『コケの自然誌』
(三木直子・訳/築地書館/2012.11.5)

米国自然史博物館のジョン・バロウズ賞なるものを
受賞したという「ネイチャー・ノンフィクション」、
ロビン・ウォール・キマラー『コケの自然誌』
(三木直子・訳/築地書館/2012.11.5)が
予想をはるかにうわまわるほど面白い。

著者は、ネイティブアメリカン、ポタワトミ族の出身だという。
小さな小さな世界で生きるコケの驚くべき生態が描かれているだけではなく、
同時にそれがコケと森と人間の物語になっているところが
読んでいて飽きないところだろうが、
それ以上に、著者のとっている視線というか世界観には深く共感を覚えるところが多い。
たとえば、こういうところ。

「物質と精神は仲良く肩を並べて歩く。ときには踊ったりもしながら。」

「高度なテクノロジーを駆使して自分の手の届かないものを懸命に見ようとしながら、
すぐ身近にあるものが持つ、数えきれないほどのキラキラした様相は、
私たちの目には入らないことが多い。
・・・このうえなく強力な拡大鏡の向こうを張れるのは、
見ようとする意識だけなのに。」

「知り合いのシャイアン族の長老に、
何かを見つける最良の方法はそれを探しに行かないことだ、と言われたことがある。
・・・必要なのはただ、私たちが注意深くあることだけ。
見方次第でまったく新しい世界が現れる。」

「コケを観ることを学ぶのは、観るというよりも聴くことに近い。」

ここしばらく、この本は手元から離せそうもない。それほど魅力的な一冊。