岡野玲子(原案:夢枕獏)『陰陽師 玉手匣 2』

2012.11.1

岡野玲子(原案:夢枕獏)『陰陽師 玉手匣 2』
(白泉社/ジェッツコミックス)。

『陰陽師』全13巻の後の新シリーズとして、
昨年2011年から刊行され始めた『陰陽師 玉手匣』の2巻目。
安倍晴明の妻・真葛が小箱に収められた書物を読み上げる形で物語が展開していく。
ちなみに、表紙に描かれているのは、源博雅が篳篥を奏しているところ。

今回の話のなかで、面白かったのは2つ。
日本書紀にでている「菊理媛」の話と源博雅の篳篥の話。

「菊理媛」の話は、
日本書紀には黄泉比良坂で千曳の岩を挟んで伊弉冉尊と伊奘諾尊が口論になったとき、
菊理媛が何か言って仲直りさせたということがでているが、
菊理媛が言った内容も菊理媛の出自も書かれていないという。
その話が描かれている。

ぼくはこの菊理媛というのが以前から気になっているので、大変面白かった。
その菊理媛の部分を(読みにくいですが)少し。

「そこに・・・現れたのは 青衣の白山比咩に お仕えする女神 菊理媛」、
ここで菊理媛が語る。
「私は 終わりと始まりの 間にあるもの/
私はすべての 相対するものの 右旋と左旋 光と闇 陰と陽/
表と裏 肉と魂を 結ぶもの/
すべての男女を 結び合わせ すべての男女の間を 裂くのは 私の役目/
なのに 何故 御身らは諍い合うのです」

そして伊奘諾尊を叱る。
「本を正せば 愛しき妻を追って 黄泉国に行った 命の心に免じての 
黄泉神の計らいを待ちきれずに 見てはならぬ 妻の姿を見てしまった 
命に過ちがある 命の行いに死者のすべてが 怒ろうとも 仕方のないことです」

その言葉に千曳の岩が鏡になって伊弉冉尊のやつれた姿を写す出すと、
伊奘諾尊は「確かに 私に 過ちがあった よくぞ私を叱られた」といい 
清き浜で禊ぎを行う。

ここからも面白いのだけれど、
その後、伊奘諾尊が
「自らは 天空へと昇り 遠き空で 愛しき妻を想い 再び結ばれる 
時に向かい 左に廻り続け」、
伊弉冉尊は黄泉に戻り「大地は女神の帰還を待ち 西から東に廻り続けた」。
そして菊理媛は「その二つの神の中に 自らの姿を 消した」とある。

長くなってしまったので、源博雅の篳篥の話は、省略。