赤木明登『名前のない道』

2012.10.18

赤木明登『名前のない道』(新潮社/2012.6.20発行)

「これから僕が語ろうとしていることには、まだ名前がつけられていない」。
まえがきのこんな言葉から始まるエッセイ集、
輪島在住の漆作家の赤木明登『名前のない道』(新潮社/2012.6.20発行)。

27歳から職人として修業をはじめた塗師・赤木明登が
その修行などについて語った『漆塗師物語』以来、
折にふれその言葉を読むようになった。

『美しいもの』『美しいこと』といったエッセイ集も、
その表題のとおり、率直にとても美しい。

赤木さんの言葉を読みながらふと思うのは、
赤木さんが一心に器を塗るときに降りていく場所のこと。
そして、そんな場所をぼくも持ち得ているかどうかということ。
もちろんその場所に、その道に、「名前」をつけることはできないのだけれど。