風のブックメモ

高島俊男『座右の名文』


2007.8.17

■高島俊男『座右の名文』 (2007.8.17 )

■高島俊男『座右の名文/ぼくの好きな十人の文章家』
 (文春新書/2007.5.20発行)

新井白石、本居宣長、森鴎外、内藤湖南、夏目漱石、
幸田露伴、津田左右吉、柳田國男、寺田寅彦、斎藤茂吉。
著者の好きな著作家ベストテンだという。

著者は、おしまいまで読み通すことはあまりないにせよ、
毎日十冊以上は本を読み、その種類も多種多様であるそうだが、
その「根拠地」となっているのがこの十人の文章家。

寡聞にも、ぼくは本書をたまたま手に取ったのが著者との初邂逅となり、
挙げられている十人には少なからず興味をひかれているだけに
とても面白く読み進めることができ、
引き続き、その著書を渉猟する日々が続いている。

著者は、もともと中国語・中国文学が専攻だったというのもあるだろう、
その代表的な著書には、『漢字と日本人』、『李白と杜甫』、
『水滸伝と日本人』、『三国志人物縦横談』などがある。

読み進めながらつくづく思うのだが、
ぼくにはこうした中国関係の基本的な知識が欠けている。
著者が1937年生まれで、中国語にも親しんでいることを考えれば、
ある部分は仕方のない部分があると(勝手に思っているだけだが)しても
歳を経るにつれ、自らのいわゆる教養のなさを恥じ入ることが増えている。

恥じ入ってばかりでは情けなく、
しかもただ教養のために無理して読むというのも悔しいので、
読みやすくてさまざまなことを多方面から理解させてくれる
著書をものしている方を見つけると、
しめしめとばかりに、静かにそのお相伴に与ることができる。

さて、著者の挙げている十人のなかで、
ぼくがもっとも親しみを感じるのは、
なんといっても寺田寅彦である。
オールタイムベストテンかどうかは微妙だが、
ぼくにとっては高校の頃からの付き合いが続いている。
逆にもっともなじみがないのは津田左右吉と新井白石あたりだろうか。
まだその著書に目を通したことがない。

ついでに、ぼくのオールタイムベストテンを挙げてみることにしたい。
と思ったが、「オールタイム」となると、
シュタイナー以外に挙げられる人がなかなか思い当たらない。
長い間読み続けている人というのは思いの外少ないものである。

シュタイナーの次に影響を受けているといえば、松岡正剛。
保留付きではあるけれども、中沢新一。
それから、ほとんど最初期から読み続けている作家といえば、村上春樹。
あと、哲学者だと西田幾多郎。
詩人でいえば、入沢康夫と宮沢賢治。
音楽家では、武満徹。
そうそう、白川静という重要な方もいました。
そして最後にやはり、寺田寅彦も挙げておくことにする。
どこか偏っている感じもしないではないが、こんなところか、な。