風のブックマーク2004
「物語」編

 

コルネーリア・フンケ『魔法の声』


2004.1.6

■コルネーリア・フンケ『魔法の声』
 (WAVE出版/2003.11.30発行)
 
ぼくと同い年生まれのドイツの作家。
これまでに『どろぼうの神さま』『竜の騎士』という作品がある。
どれもいわゆるファンタジー。
 
さいきんはとくにどうも「ファンタジー」ものは
あまり読む気がしなくなっているのだが、
「声」という言葉にひかれてしまい、
迷った結果、年末年始の時間のあるときにでもと思い、
読んでみることにした。
 
たしかに、お話しとしては、よくできていて、
筋立て、道具立てなど悪くないし、
面白く最後まで一気読みできはしたのだけれど、
どういえばいいのだろうか、
よくある「ファンタジー」ものにもいえるのだが、
そこに何かが足りない、というものが残ってしまう。
読んで損したとは思わないけれど、
たとえば、エンデの『モモ』や『はてしない物語』、
ベンマンの『石の笛』を読んだときに得られたような何かが感じられない。
 
もちろんそれは、ファンタジーにかぎらず、
さまざまな著作や音楽、絵画などにもいえることなのだけれど、
読むことや聞くこと、見ることが
創造であり得るための大事な場所というか
ある種の理念の輝きというか、そういうものがあるかないか、
(もちろんぼくがそう感じるかどうかということでしかないのだけれど)
それがとても大きなことだと思うのだ。
言葉をかえていえば、それにふれることで
ぼく自身を創造的なものへと誘ってくれるかどうか、ということ。
 
どうもハリーポッター以来、夥しくでてきている
ファンタジーものの多くは、
果たして「ファンタージエン」を豊かにしているのかどうか
疑問に思えてしまうところがある。
ひとつひとつの話はそれなりによくできていたとしても、
「ファンタジー」が流行るということそのものに陥穽があるのではないか。
 
こういうファンタジーに浸かってしまうよりも、
たとえば森でジョウビタキを見つけたり、
鉱山跡で晶洞鉱物などを見つけたりするほうが、
どれほど「ファンタージエン」を豊かにすることになるか。
そんなことをあれこれと考えてしまったりもする。
 
 

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