■日本一多くの木を植えた男・宮脇昭 (NHK知るを楽しむ・月/この人この世界6−7月 NHK放送出版協会2005.6.1.発行) イオンショッピングセンターでの植樹祭というのは今や名物化しているが、 その陰には、この宮脇昭という人の働きがあった。 もちろんこの人は企業サイドの人ではないし、 ショッピングセンターでのこの仕事が主でももちろんない。 生物学・生態学のいわばタタキアゲである。 現在77歳。 日本全国で1220カ所、世界中で1500カ以上の森づくりを、 ドングリなどから苗をつくりその土地にあった樹種を混植・密植する 「宮脇メソッド」という植樹法で行ってきている。 この「宮脇メソッド」のもとになっている考え方は 「潜在自然植生」というものであり、 これは宮脇さんがドイツ国立植生図研究所所長のチュクセン教授のもとで まさに「現場」の積み重ねによって学んできたものだという。 日本でその「潜在自然植生」に近いのはいわゆる「鎮守の森」。 南方熊楠が守ろうとした神社の森である。 南方熊楠は鎮守の森を守ろうとしたが、 この宮脇昭という人は、その失われてきた植生を 復活させるためのエポックメーキングな活動を続けている。 宮脇昭ののこした大きな仕事のひとつに 『日本植生誌』全10巻という希有のものがあるが、 それによると、「今私たちの周りにある日本の照葉樹林は、 本来あるべき潜在自然植生域の、なんと0.06%にすぎない」という。 それが意味するものは、かぎりなく重い。 ぼく自身にもいえることだが、 森を歩いても、識別できる樹木はほんのわずかに限られている。 植生についてなどは推して知るべしである。 知らない、気づかないということは悲しいことである。 環境問題云々を語る以前に必要なのは、 身近にあるそうした植生などについても 意識的になるということなのだということもよくわかる。 |