風のブックマーク2004
「音楽」編

 

村上春樹・和田誠『ポートレイト・イン・ジャズ』


2004.2.9

■村上春樹・和田誠『ポートレイト・イン・ジャズ』
 (新潮文庫/平成16年2月1日発行)
 
風の音楽メモで寺井尚子『ジャズ・ワルツ』をとりあげたとき、
この本はすでに紹介してあるのだけれど、あらためて。
 
ジャズをききはじめたのは、大学に入ってからで、
それまではロックを中心にきいていたのが、
なぜかジャズのほうがしっくりくるようになり、
その頃はまだ存在していたジャズ喫茶に入り浸って
マンガや本などを読みながら、いろんなジャズをきいていた。
 
とはいえ、ジャズについての蘊蓄をそこで得たわけではなく、
ただひたすらきいていただけのことで、
ジャズの歴史も個々のミュージシャンたちについても
あまり記憶に残っていなかったりする。
ジャズのレコードもそんなに購入したりはしなかった。
 
セロニアスモンクやマイルスデイヴィス、コルトレーン、
チックコリア、MJQ、スタンゲッツ、ソニークラークなどなど、
ただただひたすらそうしたレコードをききながら、
時間を過ごしていたのだ。
いったいぼくは何を考えていたのだろう。
卒論のかなりの部分もそこで書いた記憶もあったりする。
デリダとかもそこで難しい顔をして読んでいたはずだ。
 
よく通っていたのは、ブルーノート、モッキンバードというジャズ喫茶で、
モッキンバードの隣にはゲットというロック喫茶なるものもあった。
そういえば、そこで大音量でディープパープルやクイーンなどをきいて
トリップ感を楽しんでいたりしたこともあった。
 
さて、『ポートレイト・イン・ジャズ』だけれど、
正直言って、個々のジャズミュージシャンとその具体的な演奏曲などについて
まとまった読んだのはこれがはじめてのことになる。
で、ここに載っている50人以上のミュージシャンのなかには
この本ではじめて知った人もいれば、これを読んで、
そうそう、ぼくがきいたのはそれだったんだ、というのもあって、
(ジャズ喫茶で見て記憶に残っているジャケットもあった)
なんだか、ようやくジャズというものがあらためて
ぼくのなかでちゃんとした場所を与えられたような感じがしている。
 
これを読んであらためて、デュークエリントンって
ものすごく偉大な人だったんだということとか
スタンゲッツの演奏ってとても輝くようだったけれど
実は「スチームローラーのような巨大なエゴを抱え、
大量のヘロインとアルコールに魂を蝕まれ・・」
という人だったことだとか、
ビリーホリデイの若い頃のみずみずしい時代の声のことだとか
(村上春樹はこの時代の「君微笑めば」を挙げている。
「「あなたが微笑めば 世界そのものが微笑む」
 When you are smiling,the whole world smiles with you
そして世界は微笑む。信じてもらえないかもしれないけれど、
ほんとうににっこりと微笑むのだ。」)
いろんなことを知っていろんなことを考え、
またあらためてそうした演奏などに
以前とはおそらく少し違った意識で
ふれてみたいと思っている。
 

 ■風の本棚メニューに戻る

 ■神秘学遊戯団ホームページに戻る