風のブックマーク2004
「漫画」編

 

浦沢直樹「20世紀少年」


2005.3.12.

□浦沢直樹『20世紀少年』(小学館)
 
今さらこの作品を取りあげるまでもないほど
ノッテいる浦沢直樹である。
 
この作品はすでに十分に話題になっているのだけれど、
ほぼ日刊イトイ新聞プレゼンツ「ザ・チャノミバ」という
TBSの糸井重里が茶飲み相手としてゲストを招き語り合う
面白いラジオ番組に、先日、この浦沢直樹がゲストとして出演。
*この番組はHPからその記録を聴くことができます。
http://www.tbs.co.jp/radio/tea/
ほぼ日のページは、
http://www.1101.com/teaforus/index.html
 
ぼくは熱烈な浦沢直樹ファンというわけではないのだけれど、
この『20世紀少年』、そして昨年暮れに第1巻目が発売された
『PLUTO』にとても魅力を感じている。
ちょうど、先日『20世紀少年』の第18巻目が発売されたところで、
こうしてタイムリーに浦沢直樹の実際の声がきけるというので、
興味津々の「ザ・チャノミバ」となった。
 
創作の秘密・・・というほどでもないのだろうけど、
作品ができてくるプロセスについて興味深い話。
物語が向こうの地平線が見えるように見えてきて、
その向こうに見えているものに近づくと
そのディテイルが整合性をもったものとして
著者に開示されていく、というような、
ある意味では、すぐれた作品の多くはそうであるだろう
というような内容だけれども、
やはりそういう話がされているものを聞くというのは
ちょっと刺激的なところがある。
まして、今ノッテいる最中の『20世紀少年』や『PLUTO』である。
とてもライブ感がある。
 
やはり、好き嫌いはあるものの、
ある種のすぐれた作品というのは、ジャンルを問わず、
その折りたたまれた理念というか原形とかいうのは、
いわば「理念界」のなかに存在しているように思える。
しかしそれを取り出してくるためには、
地上に生きる人間のある種の能力が必要になってくる。
理念界においては、おそらくその塊というのは時空を超えている。
だから物語も直線的にではなくひとつの「モナド」としてそこにあるのだろう。
音楽もおそらくそう。
その「モナド」であるものをいかに地上の表現形態に合わせて
開示させていくかということが作家の能力であるということなのだろう。
もちろんそれは完全な開示であるとかかぎらず、
さまざまなノイズをともなったりもするのだろうけれど。
しかし、そのノイズのあり方というのが、
とてもその人間の魅力そのものなのかもしれないとも思う。
 
そういえば、このところ漫画を久しぶりに
まとまった読むようになっている。
二十歳過ぎ頃までのように雑誌の連載を読むようなことは
ちょっと面倒でできないけれども、
あらためて、この日本の漫画表現の豊かさというのは
ある意味で江戸時代の浮世絵以上のものになろうとしているのかもしれない。
 
 

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